ウォークマン A100 / ZX500シリーズがDSEE Ultimateに新たに対応
ソニーのウォークマン「ZX500/A100シリーズ」がアップデートで「DSEE Ultimate」に新たに対応しました。
「DSEE Ultimate」が含まれる「DSEE」技術とは
「DSEE Ultimate」は、MP3・ATRAC3・AAC・WMAなどの非可逆圧縮音楽ファイルのデジタル信号に信号補完を行うことで、音質を向上させるソニー独自の「DSEE」技術の一種。
CDをも超えるハイレゾ音源相当の情報量にサンプリング周波数を拡張するとともに、圧縮で原音から失われた高音域を補完するのが「DSEE」技術の基本です。
「DSEE HX」の内容
従来までの「ZX500/A100シリーズ」には、「DSEE」技術の一種であり、オリジナルの「DSEE」から向上を図った「DSEE HX」が搭載されていました(2013年に開発)。
「DSEE HX」では、「DSEE」での高音域の補完に加え、最大192kHz/32bitまでサンプリング周波数とビット深度を拡大できるようになりました。信号のスペックだけならハイレゾ音源と同等レベルとなっています。
また、「ZX500/A100シリーズ」では、処理をしている楽曲のタイプをAIが自動で判別し、高音域の補正性能を向上させています。
自然の音に近い高音倍音の付加により、再生音はキレがありつつも、滑らかで聴きやすい音になると言われています。
また、信号補完を伴うビット深度の拡大は、微細な音の再現性の向上につながります。
「DSEE Ultimate」では微細な音の再現性がさらに向上
そして、「DSEE Ultimate」です。
これは、「DSEE HX」でのAIによる再生楽曲ごとに最適な高音域の付加に加え、さらに、AIによる再生楽曲ごとに最適なビット深度の拡張に対応。
「DSEE Ultimate」では、楽曲分析によって、その曲や音に含まれていたであろう16bit以下の微小な音を高精度に類推補完するものです。これにより、従来よりも演奏のニュアンス感や楽器に質感の向上、ホールエコーの消え際の表現などの向上などが期待できます。
似たような機能はかなり前から他社では使われてきました。代表的なのはデノンの「アルファプロセッサー」(1993年に開発)で、ビット方向の類推補完により、CD全盛時代の1998年から現在のハイレゾに相当する24bitでの再現を行っており(現在は32bitに拡大)、現在では高域信号の補完も行っています。
この機能が非常に有効なためにデノンのCDプレーヤーが今に至るまでオーディオ業界の揺るぎない定番になっているのです。
なぜかソニーはデノンのような「微小音の補完再生」には早くからは積極的ではなかったわけですが、2013年の「DSEE HX」に続き、2020年2月24日に発表されたスマートフォンの「Xperia 1 II」にはじめて搭載された「DSEE Ultimate」によって、さらに打ち破ったわけです。
おそらく、はじめからハイレゾの音源を聴くという前提であれば、あまりこうした補完再生系に力は入れないという方向性もわかります。しかし、実際のユーザーの多くがハイレゾどころか、CD品位かそれ以下の音源を聴くことが多いのが実態であり、現実的な高音質再生という面で補完再生の重要性が浮上したのでしょう。
「ZX500/A100シリーズ」においての「DSEE Ultimate」動作条件
なお、「ZX500/A100シリーズ」においての「DSEE Ultimate」はヘッドホン/イヤホンを有線接続し、かつ標準搭載の再生アプリ「W.ミュージック」で再生する場合のみ使用可能という条件があります。また、W.ミュージック以外でのアプリでは従来のDSEE HXが動作し、Bluetooth接続では無効となるという制約があります。
「Xperia 1 II」の「DSEE Ultimate」はBluetooth接続のLDACコーデック時にも有効という違いがあることは申し添えておきます。
「DSEE Ultimate」のデメリット
「DSEE Ultimate」には実使用上のデメリットもあります。「ZX500/A100シリーズ」で「DSEE Ultimate」を使用すると、「DSEE HX」使用時と比べて最大30%ほどバッテリーの持続時間が短くなるとなっています。音源や音楽ジャンル、周囲が騒々しい場所での再生など、状況によっては、「DSEE HX」と「DSEE Ultimate」の音質差をあまり感じない場合もあるので、バッテリーを節約したい場合は、あえて「DSEE HX」使用に留めるという聴き方もあるでしょう。
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