オーディオテクニカは、同社初のノイズキャンセリング機能付き完全ワイヤレスイヤホン「ATH-ANC300TW」を2020年5月29日に発売しました。オープン価格で税抜きの実売価格25,000円程度です。
ノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホンはすでにアップルとソニーからも出ており、いずれも人気があります。
一方、アップルとソニーに対抗すべく、各社からノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホンが出てくるようになりました。なかでもこの春は、ゼンハイザーの「MOMENTUM True Wireless 2」と、パナソニック(テクニクスブランド)の「EAH-AZ70W」に注目が集まっています。
そして、国内イヤホンメーカーの雄であるオーディオテクニカもついにノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホン「ATH-ANC300TW」を発売。発売のタイミングや内容、価格面から、「ATH-ANC300TW」はテクニクス「EAH-AZ70W」との比較や違いに注目が集まっているようです。
価格面では「EAH-AZ70W」のほうが6千円ほども高く、「ATH-ANC300TW」よりもやや上のグレードとなりそうですが、「ATH-ANC300TW」発売時点で「EAH-AZ70W」の供給体制が一時的に滞っているようで、早くノイズキャンセリング完全ワイヤレスイヤホンを買いたい人が、「ATH-ANC300TW」でもよいのなら、こちらにしてみよう、という背景もあるようです。
それぞれの詳しい内容については以下でご紹介しています。
おおざっぱにいうと、ノイズキャンセリング性能は「EAH-AZ70W」が優れている印象。どちらも、イヤホンの外側と内側に配置したマイクを使用するハイブリッド方式のノイズキャンセリングを採用していますが、「EAH-AZ70W」ではそこに、ノイズキャンセリング処理の方法としてデジタル制御とアナログ制御を組み合わせているという説明が加わっており、その成果なのか、騒音低減性能は高いと評価されています。
ノイズキャンセリングの設定は「ATH-ANC300TW」では「Airplane(航空機内のエンジン音などのノイズや騒音に)」「On The Go(外出時、車の走行音などの騒音や環境ノイズに)」「Office/Study(静かな場所で気になる室内ノイズなどの雑音に)」のおおまかに3つ。
一方、「EAH-AZ70W」では100段階に調節できるので、騒音に対するカスタマイズ性は「EAH-AZ70W」が上です。ただ、操作や調整が面倒な人にとっては「ATH-ANC300TW」のおおまかな設定のほうが実用的な場合もあるでしょう。
接続安定性も送信機器を選ばない「EAH-AZ70W」が有利、防水性も「EAH-AZ70W」が上。
単なる長時間再生の面ではたしかに「EAH-AZ70W」が上ですが、約1時間の再生が可能な急速充電時間は「EAH-AZ70W」の約15分に対して「ATH-ANC300TW」は約10分。朝の時間のない時などに重宝な機能なだけに、数分の違いでも大きな違いです。急速充電を重視するなら「ATH-ANC300TW」でしょう。
一方、対応コーデックはaptXにも対応する「ATH-ANC300TW」が上で、通話品位はどちらもマイク性能や回路にはそれなりに注力していますが、本来的に通話用のヘッドセットがメインとして設計されていないことには留意しましょう。
いずれも各種設定や操作のカスタマイズが可能な専用アプリを用意しています。
音質についてはどちらも設計・チューニングともかなり凝っており、好みの範囲と言えそうです。どちらもいわゆる重低音タイプではなく、高音質志向のイヤホンに見られるワイドレンジさを背景にした、フラット志向を重視していると思われます。
音質調整の自由度については、専用アプリでの細かなイコライザーが可能な「EAH-AZ70W」に軍配があがります。どちらも、ソニーのようなあらゆる音源をハイレゾ相当に変換再生する機能は搭載していません。
サイズや装着性については、どちらも小型・軽量化よりも、音質を重視することによる容積確保の面があることも考慮しましょう。どちらかが一方的に装着性がよいということもなく、個人に合ったモデルを選ぶことが大切でしょう。
装着性や遮音性に関わるイヤーピースについては、どちらも通常タイプは4サイズ付属。加えて、「ATH-ANC300TW」では耳への密着度が高く遮音性も高いCOMPLY製フォームタイプも付属しています。このため、ノイズキャンセリングに関わらず、遮音性の高い装着性を容易に実現できる点では「ATH-ANC300TW」が有利です。
イヤーピースなど簡単に交換できるのでは、と思うかもしれませんが、完全ワイヤレスイヤホンは、汎用品のイヤーピースがうまくはまらないことも多く、付属の専用イヤーピースが充実していることに越したことはありません。
本体重量は7gと互角。専用充電ケースは「ATH-ANC300TW」が50g、「EAH-AZ70W」は65g。携帯性のよさは「ATH-ANC300TW」となりそうです。
デザインや素材感についてはこれも個人の好みの範疇でしょう。「ATH-ANC300TW」はブラックのみ、「EAH-AZ70W」はブラックとシルバーの2色展開となっています。
「ATH-ANC300TW」は、急速充電性能、携帯性のよさの点から、毎日の通勤や通学の乗り物内で使うような用途には適している印象です。
また、フォームタイプイヤーピースを装着することで、電源を入れなくても、あるいはノイズキャンセリングをオンにしなくても高い遮音性が得られる点にも注目できます。ノイズキャンセリングを長時間オンにし続けると違和感を感じる人にとっては、イヤホンを気軽に耳栓代わりにできるのでよいのではないでしょうか。
コーデックとしてaptXを重視するのであれば、この2つでの選択は「ATH-ANC300TW」となるでしょう。
ATH-ANC300TW | EAH-AZ70W | |
ノイズキャンセリング(NC)方式 | ハイブリッド方式(QUIETPOINTと呼称) | ハイブリッド方式(デジタル制御とアナログ制御を個別に実行) |
NC調整の細かさ | 3つのモード | 100段階にマニュアル調整可能 |
Bluetoothチップ | Qualcomm製 | Airoha社の”MCSync テクノロジー”搭載タイプ |
対応コーデック | SBC/AAC/aptX | SBC/AAC |
ハイレゾ化などの補完処理 | なし | なし |
左右独立伝送 | Qualcomm TrueWireless Stereo Plus(TWS+) (送信機側も対応必要) | MCSync テクノロジー(送信側不問) |
操作方式 | 物理ボタン | タッチ式 |
専用アプリ | 「Connect」 | 「Technics Audio Connect」 |
使用ユニット | 5.8mm径DLCコーティング振動板 | 10mm径グラフェンコートPEEK振動板 |
マイク | MENSマイク+Qualcomm cVcテクノロジー | MENSマイク、ビームフォーミング技術 |
バッテリー持続時間 (単体/ケース込み) | 約4.5時間/約18時間 | 約7.5時間/約22.5時間 |
急速充電時間 | 約10分 | 約15分 |
防水性能 | IPX2 | IPX4 |
重量(本体/ケース) | 7g/50g | 7g/65g |
イヤーピース | 4サイズ+COMPLY製フォームタイプ | 4サイズ |
実売価格(税抜き) | 約25,000円 | 約31,000円 |