ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が毎年開催している「ヨーロッパ・コンサート」が、新型コロナウイルスの影響を受け、5月1日にベルリン・フィルハーモニーで無観客で開催されることが決定しました。
演奏プログラム自体も、感染が防げる距離の衛生上の条件を守るために、室内アンサンブルによる作品に変更されます。
【演奏曲目】
ペルト:フラトレス
リゲティ:ラミフィカシオン
バーバー:弦楽器のためのアダージョ
マーラー:交響曲第4番(エルヴィン・シュタインによる室内アンサンブル版)
【演奏】
キリル・ペトレンコ(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
クリスティアーネ・カルク(ソプラノ)
また、ベルリン・フィルの映像配信サービス“デジタル・コンサートホール”でも同日の日本時間18:00に無料配信されることも発表されました。
「ヨーロッパ・コンサート」は、1991年より毎年、欧州の歴史的なロケーションにおいて開催されてきた恒例のコンサート。
今年は、イスラエルのテルアビブで、ドイツ大統領のフランク・ヴァルター・シュタインマイヤーも隣席して行われる予定でした。映像配信において、シュタインマイヤー大統領も冒頭で短い挨拶を行うとしています。
コロナウイルスの状況から、予想された事態ではあります。これを前向きにとらえて、ベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートの存在を世界により広く知ってもらうチャンスにすべきでしょう。
ベルリン・フィルは、今も昔もウィーン・フィルと並んで世界トップのオーケストラ、という音楽業界内での位置づけは変わりませんが、カラヤン時代の圧倒的な知名度に比べたら、一般層への浸透という意味では雲泥の差があると言わざるを得ません。
正直、カラヤン以降のベルリン・フィルの芸術監督・首席指揮者を知っている一般人はどれだけいるでしょうか?
そして、現在の首席指揮者であるキリル・ペトレンコについては、クラシック音楽愛好家にとっても、かなり意外な人選でした。なにしろ、就任が決まった時点で、彼が指揮したCD録音がほんのわずかしかなかったのですから。
キリル・ペトレンコの実力自体については、これまでに発売された音源や、デジタル・コンサートホールの映像から、確かなものであることはクラシック音楽愛好家にも知れ渡りました。
しかし、クラシック音楽愛好家に知られているだけで、クラシック音楽業界を引っ張っていけるわけでもなさそうなところが難しいところです。
やはり、何らかの方法、理由で幅広く世間に知られることも重要でしょう。
今回の無料配信は、キリル・ペトレンコを広く世間に知らしめるチャンスとしてもとらえることができるでしょう。
さて、クラシック音楽愛好家やオーディオ・ビジュアル愛好家の目線から見ると、プログラムはコロナウイルスの影響が原因とはいえ、室内合奏版のマーラーの交響曲第4番とは、かなり興味をそそられます。
一方、デジタル・コンサートホールの配信品位は、もう少し頑張って欲しい印象です。ライブストリーミングは仕方がないにしても、アーカイブでの配信品位は、映像は最大4K、音声は少なくとも24bit/96kHz以上のハイレゾに対応して欲しいところです。