DENON(デノン)がついに完全ワイヤレスイヤホンに参入。第1弾モデルとして、「AH-C830NCW」、および「AH-C630W」の2機種を10月15日に発売しました。オープン価格で税込みの実売価格はAH-C830NCWが19,800円前後、AH-C630Wが9,900円前後。2機種とも、ブラックとホワイトを用意。
ここでは上位モデルでノイズキャンセリングや装着検出、Google Fast Pair機能を搭載した多機能かつ高音質志向の「AH-C830NCW」をご紹介。
音質チューニングを同社サウンドマスターの山内慎一氏が担当しているのが大きな特徴
音質チューニングを、同社Hi-Fiコンポーネントも手がけるサウンドマスターの山内慎一氏が担当しているのが大きな特徴。
「Vivid&Spacious」な音作りを目指し、山内氏がイヤホンに抱いていた重層感の弱さ、開放感の乏しさの改善に焦点を当てて開発されたとしています。
単品コンポも発売している大手オーディオメーカーでも、単品コンポ担当の設計・開発者がイヤホンに携わる例は聞いたことがないほどで、デノンが「AH-C830NCW」にかける意気込みが伝わってきます。
ドライバーは11×10mmの大口径ダイナミックドライバーを搭載。振動板の素材はポリウレタンとポリエーテルエーテルケトンを組み合わせたもの。
ドライバーの形状は楕円状の筐体スペースを最大限に活用するため卵形となっており、低音の深みを感じさせ、音の輪郭やベースの弾力感などの表現力が向上しているとしています。6mm径程度の小型振動板が多い完全ワイヤレスイヤホン業界にあって、高音質化のために思い切った大口径・振動板面積の確保への意欲を見せているのも特徴です。
筐体は数多くの耳の形状データを基に24の形状サンプルを作成し、実際に多くの人に使ってもらった上で最も付け心地が良く、落ちにくいものを採用。また、一回でベストポジションに収まりやすいことや、落とした際も転がりづらいことからスティックタイプの形状を選択したとしています。イヤフォン本体は、IPX4の防滴性能を搭載。
Bluetooth 5.0準拠で、コーデックはAACとSBC、プロファイルはA2DP、AVRCP、HSP、HFP。
フィードバック&フィードフォワードの2マイクのアクティブノイズキャンセリング機能と外音取り込み機能を搭載しており、左側本体のタッチ操作でANC/外音取り込み/オフの3モードを切り替え可能。また3マイクによるビームフォーミング、エコーキャンセル技術によって、騒音の多い環境でも快適な通話を実現できるとしています。ハンズフリー通話や音声アシスタント操作にも対応。Androidスマートフォンと素早く簡単にペアリングができるGoogle Fast Pairにも対応。
本体の外形寸法は、22×23×35mm(幅×奥行き×高さ)。充電ケースは58×30×46mm(同)。
本体重量(片側)は、5.3g、充電ケースは43g。
イヤホン単体/ケース充電込みでの連続再生時間は、ANCオフ時が6時間/24時間で、ANCオン時が4.8時間/19時間。充電時間は2時間。10分の充電で50分の音楽再生も可能。
イヤーピースはS/M/Lサイズの3種類を付属。デュアルレイヤー・シリコン素材で耳に優しく、しっかりとフィットできるよう配慮。イヤーピースのほか、充電用USB-C to USB-Aケーブルを付属。
発売直後のタイミングでは、なかなか購入者、試聴者ともにあまりネット上でレビューを見かけません。一方、オーディオ系ニュースサイトでは、メーカー提供もあるのでしょうが、結構レビュー記事があります。
デノンはもともとイヤホン、ヘッドホン(とくにヘッドホン)にも以前から定評があるので、本機も明らかに失敗などはなさそうです。むしろ、メーカー第1弾とはいえ、デノン・サウンドマスターによる音質チューニングなど、他社にはないメリットで高い品位も期待できそうです。
AH-C830NCWの発売直後の購入者のレビュー・感想としては、2chのものがあり、おもにそれを参考にすると、音質については、ワイドレンジでフラットな傾向の高音質ではなく、ボーカルや低音がやや強調されたメリハリのあるサウンド傾向のようです。デノンの単品コンポやヘッドホンは以前は、低音が強めで、音像の存在感も強く、ワイドレンジ性よりも帯域内の音の密度を高めるような「デノンサウンド」と言われる傾向がありました。ただ、最近のコンポではそういった傾向は後退し、割と一般的なワイドレンジでフラット傾向に偏っていたので意外です。
ただ、完全ワイヤレスイヤホンは幅広いライトユーザーも多いですので、こうした人たちにもアピールしやすいサウンドということなのかもしれません。
ANCや外音取り込みに関してはとくに良くもなく悪くもないといったところのようです。
音以外では、ケースのサイズや使い勝手が悪いという意見が目につきます。これは改善の余地がありそうです。専用アプリがないのも気になるという人も。多機能ではなくともファームウェアアップデート用に欲しかったでしょうか。
接続安定性は良好との意見が多く、これはスティック部に配置するFPCアンテナで安定した通信に貢献しているというメーカーのアピールとも合致している点でしょう。
そのほか、最新の2万円前後の完全ワイヤレスイヤホン、しかも音質重視を謳っているモデルとして、LDACかaptX Adaptiveのいずれかのハイレゾコーデックに対応していないのを残念に思う向きもあります。この点については確かにそう思います。
もう少し高くはなるでしょうが、ハイレゾコーデックにも対応してこそ、高音質を謳う完全ワイヤレスイヤホンのライバル、ソニー WF-1000XM4やテクニクス EAH-AZ60、ゼンハイザー CX Plus True Wirelessあたり(いずれもハイレゾコーデック対応)に、真に対抗できるのではないでしょうか。