デノンは、創立110周年記念モデルとして、8K対応13ch AVアンプ「AVC-A110」を10月上旬に発売します。価格は680,000円。
従来モデルの「AVC-X8500H」(2018年2月発売。当初価格税別約48万円)をベースに、おもに音質面の向上を図った特別モデル。音質だけでなく、あらたに8K対応のHDMI入力を備えるなど、機能面でも一部ベースモデルを上回っています。
「AVC-A110」の内容・特徴を「AVC-X8500H」と比較しての違いを交えながらご紹介
します。
まず、音質面の違いとして、アンプとしての基本的な音質に関わる、回路(おもにアナログ)と部品、物量を大幅に改善、向上。加えて、同社AVアンプのサウンドマネージャーを務める高橋佑規氏による入念なサウンドチューニングが加わっています。
回路、物量面では、こうした特別モデルではよく行われますが、まず電源部に、AVC-A110専用のEIコアトランスに変更。さらに、純銅製のトランスベースを追加し、放熱性を向上させています。加えて、1.2mm厚のトランスプレート/ボトムプレートも追加。
また、電源部のブロックコンデンサーには、AVC-A110専用にチューニングされた大容量22,000uFのカスタムコンデンサーを2個使用。
上記に加え、パワーアンプ回路のフィルムコンデンサーやインダクターなど、新たに開発・採用されたパーツは実に数百点にも及ぶと言います。
基板パターンに用いられている銅箔にAVC-X8500Hの2倍の厚みをもたせることでインピーダンスの低減も実現しています。
これらの変更により、「AVC-X8500H」と比較してさらに低い重心と豊かなスケール感のあるサウンドになっているとしています。「深淵」というキーワードで低域解像度/ハイスピードサウンドを意識したサウンドマネージャー・高橋佑規氏による音質チューニングももちろん、見逃せないどころか、大きな要素です、
一法、デジタル回路のスイッチングトランス、および、電源回路全体をシールドプレートで覆い周辺アナログ回路へのデジタルノイズ干渉を防止しています。これも地味で物量がかかりますが、音質には効く手法です。
専用の鋳鉄製フットを新たに採用。インシュレーション性能が高まるので、これも音全体の品位を高められる変更です。
「AVC-X8500H」の本体サイズは434(幅)×195(高さ)×482(奥行)mm、重量は23.3kg。「AVC-A110」はサイズが同じで重量は25.4kgに増えています。
この違いはおもに、上記の物量投入の違いに起因するものです。
機能面での違いとしては、今年発表したAVアンプ「AVC-X6700H」「AVR-X4700H」「AVR-X2700H」と同様、「AVC-X8500H」では対応していなかった、HDMI関連の機能や規格の拡充が図られています。
(DENON AVR-X2700H 新AVアンプ AVR-X2600Hと比較しての違い
で触れられているAVR-X2700Hが備えるHDMI関連の機能や規格の拡充と同じ内容)
まず新たに、搭載しているHDMI端子8入力/3出力すべてが、現時点で最新の著作権保護技術「HDCP2.3」に対応。
うちHDMI入力1系統/出力2系統は8K/60p、4K/120pの映像信号にも対応しており、今後、衛星放送やインターネットなどを通して放送・配信される4K/8Kコンテンツの高精細映像を同時に2画面まで出力して楽しむことができるようになりました。「AVR-X8500H」では8K非対応、4Kも60pまでの対応でしたので、大幅な進化です。
また入力信号を8K/60pや4K/60pなどにアップスケーリングする機能も搭載。これも8K分については新機能です。ただし、フレームレート変換は行ないません。
HDR規格は従来のHDR10/ドルビービジョン /HLGに加え、新たにHDR10+およびDynamicHDRに対応。HDR新規格への対応が現時点で万全となっています。
HDMI出力1系統は従来どおりARC/eARCに対応。
さらに次世代HDMI規格「HDMI 2.1」で採用予定の技術「ALLM(Auto Low Latency Mode)」「VRR(Variable Refresh Rate)」「QFT(Quick Frame Transport)」「QMS(Quick Media Switching)」を搭載。
このうち、「ALLM」以外が新搭載。
「ALLM」ではコンテンツに応じて画質優先/低レイテンシー優先を自動的に切り替え、「VRR」は映像ソースとディスプレイのリフレッシュレートを同期しチラつき/カクつきを抑制。「QFT」は映像ソース機器からの伝送速度を上げることでレイテンシーを低減することが、「QMS」は画面のブラックアウトや表示の乱れを起こすことなくフレームレートや解像度を切り替えることが可能となる機能。
サラウンドやデジタル音声規格のデコードにおいては、新4K/8K衛星放送で採用されている「MPEG-4 AAC」(2chと5.1ch)のデコードに新たに対応。高画質な放送波でのサラウンドが楽しめます。
そのほか、AVアンプとしての内容・機能はベースモデルの「AVC-X8500H」と同様です。
13chパワーアンプを搭載した、13.2chAVサラウンドアンプ。大電流タイプのパワートランジスタ「Denon High Current Transistor(DHCT)」を採用し、最大260W、定格150W+150Wの大出力を実現。
サラウンドではHDオーディオ系に加え、イマーシブオーディオ「Dolby Atmos」「DTS:X」をサポート。「Auro-3D」対応。「Dolby Atmos」では豊富なパワーアンプ数を活かして、7.1.6、9.1.4、「DTS:X」では7.1.4、9.1.2、「Auro-3D」では13.1chのスピーカーレイアウトが可能。
HDMI端子は8入力/3出力を装備。HDMIで対応する入出力や規格については上記の通り。
ネットワークオーディオ機能にはデノンとマランツのコンポで実績のあるHEOSテクノロジーを採用。各種音楽ストリーミングサービスに対応。PCやNAS、USBメモリーからのファイル再生では、5.6MHz DSD、192kHz/24bit PCMに対応。インターネットラジオ、AirPlay、Bluetoothなどの利用も可能。
周波数特性が10Hz~100kHz、S/N比が102dB。基本的な物理スペックも同じです。
実のところ、機能面での違いについては今後、「AVC-X8500H」でもアップデート対応予定となっています。また、アップデート済みの「AVC-X8500H」も発売される予定です。
つまり、機能面だけで言えば、「AVC-A110」と「AVC-X8500H」の違いは無くなる予定です。
しかし、「AVC-A110」は、アップデートでは対応不可能で、しかも音質に深くかかわる要素である、アンプとアナログ回路における物量を前提にした改善が盛り込まれています。また、サウンドマネージャーによる入念な音質チューニングは、デノンの高級単品コンポでも重要な要素です。
このことから、「AVC-A110」には「AVC-X8500H」が容易には超えられない、基本的な音質の違いがあると考えざるを得ません。なかなか数値には表れない要素ですが、オーディオ用コンポでは常識とされる領域です。
「AVC-A110」の価格をどう捉えるか、「AVC-X8500H」との20万円ほどの違いもどう考えるかなどの点はありますが、両者の間に、絶対的な音の品位の違いはあると考えられます(AVアンプ+DENON)。