DENON(デノン)は一体型AVアンプの新フラッグシップ機「AVC-A1H」を2023年3月24日に発売しました。価格は99万円。外形寸法は434×498×195mm(幅×奥行き×高さ)。重量は32.0kg。
15chパワーアンプを搭載し、15.4chのプロセッシング出力に対応する弩級モデル。デノンの中でも、その時代における最新かつ最高の映像・音声を最良のクオリティで再生できるモデルにのみ与えられる「A1」の型番を冠するAVアンプ。2007年の「AVC-A1HD」(約60万円)以来、実に15年ぶりの“A1ネームド”モデルです。
パワーアンプ部は15ch全てを独立させたモノリス・コンストラクション構成を採用したディスクリート構成。増幅素子にはデノンのオーディオ用Hi-Fiアンプの設計思想を踏襲したという大電流タイプのパワートランジスター「Denon High Current Transistor(DHCT)」を搭載。アンプはシンプルで素直な特性が得られるという差動1段のAB級リニア回路を採用。最大出力は260W(6Ω/1kHz/THD 10%/1ch駆動)。4Ωスピーカーでも余裕を持ってドライブ可能。
DACにはリスニングテストを繰り返して厳選したという2ch 32bit DACチップを10個搭載。プリ部には中核技術「D.D.S.C.-HD32」を投入。16bitや24bitのマルチチャンネル信号を32bitに拡張できるアナログ波形再現技術「AL32 Processing Multi Channel」も搭載。
DSPには、AVR-X3800H/X4800Hでいち早く採用されていたアナログ・デバイセズ社の最上位チップ「Griffin Lite XP」を採用。演算処理能力のアップグレードによって15.4chのプロセッシング出力、17.4chのプリアウト、Auro-3Dの13.1ch出力を実現。音場補正はマニュアル設定に加え、Audyssey Sub EQ HTによる自動設定も可能。
音声ではDolby Atmos/DTS:X/IMAX Enhanced/Auro-3D/MPEG-4 AAC/をサポート。バーチャル3DサラウンドテクノロジーのDolby Atmos Height Virtualizer/DTS Virtual:Xにも対応。新4K/8K衛星放送で使用されているMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)にも対応。360 Reality Audioもサポート。サラウンドフォーマットは現行の主要なものは網羅しています。
ネットワークオーディオのプラットフォーム「HEOS」を搭載。ハイレゾファイルの再生は、DSDファイルは5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまで対応。AirPlay 2、Bluetooth受信も可能。iOS/Android対応リモコンアプリ「Denon AVR Remote」も用意。
これ一台あれば、およそ現在使えるサラウンド規格を楽しめる最新AVアンプ。それだけでなく、DAC部、DSD部、パワーアンプ部も物量を投入し、凝った設計により、音質面で一体型AVアンプの最上級を目指そうという意欲作です。また、オーディオ用アンプとしても十分な機能性と音質を意図しており、ホームシアターと音楽鑑賞を一台にまとめられる高品位なアンプとしても魅力があるでしょう。
いずれのレビュー記事でも音質への評価は大変高いものがあります。
Atmosサラウンドを使い、映画を視聴した結果、音質や音の密度、空間の広がりなどが素晴らしいと述べられています。また、パワーアンプを個別基板にしたモノリス・コンストラクション構造が音質に与える影響や、音の分解能の良さにも触れられています。
映画によくある炸裂音や爆発音のシーンでも、トランジェントの良さが感じられ、音がハイスピードで気持ちが良いという表現が使われています。また、飛行機が登場するシーンでも、音がうねりとなって部屋を通過し、機体の細かい振動まで聞き取れるなどと述べられています。
メーカーでは、映画「不屈の男 アンブロークン」と「トップガン マーヴェリック」の2つを本機のサラウンドを満喫できる高音質ソフトとしてデモに使用していることもポイントです。
フロアに9本、天井に6本のスピーカーとサブウーハーを1本加えた構成であるDolby Atmosの「9.1.6」システムを一台で実現できる15chアンプ内蔵という意味についてもレビューでは触れられています。最高レベルのDolby Atmosを一台のAVアンプで実現したいと思っていた向きにはまさに福音となるモデルでしょう。
純オーディオ用としても、A1Hは2chピュアオーディオのクオリティを十分に有しており、生々しく広い空間を再現するなど、ハイエンド2ch環境でもなかなか聴いたことがない体験ができるなどと表現されています。
音楽ソースでも増えているAtmos音声収録コンテンツでも立体感はもちろん、低域のパワフルな響きやハイスピードなキレを持つソリッドかつ鮮烈な音質を楽しめるようです。音圧とキレの良さが両立し、リアルな体験につながるようです。
全体として、これらのレビューは、高音質なオーディオ機器や音声収録技術が持つポテンシャルを「AVC-A1H」を引き出すだけの実力を有していることがうかがわれ、高品質なホームシアターと音楽体験を提供することができることを示唆しています。
意外にもこれだけの物量と15chパワーアンプを内蔵しながら外形寸法は434×498×195mmに抑えられていることも評価されています。むやみに重く大きいコンポはできるだけ避けたいところではあるでしょうし。
「AVC-A1HD」からは数十万円も上がりました。ただ、「AVC-A1HD」は15年以上前のモデルで、内蔵パワーアンプも7chしかありませんでした。対応フォーマットや機能なども全く別物になっており、この15年間のサラウンド業界の進化を感じずにはいられません。価格的には一般的には高額でしょうが、ホームシアターとオーディオ愛好家からすると内容からすると納得できるレベルに収まっていると思われます。それでも昨今の材料費などの値上がりや為替などの影響はあるとは思いますが。
レビュー記事では、同じD&Mグループから同時期に発売されるセパレート型AVアンプ「AV10」と「AMP10」のペアと比較すると、本機は半額以下ということを考えると素晴らしいパフォーマンスであり、むしろハイエンドAVアンプとしてコストパフォーマンスは高いとすら評価されています。
価格やコスパについて、なかなか一般ユーザーには理解されないかもしれませんが、愛好家にとっては頷けそうな評価かもしれません。