「DHT-S216」はデノン(DENON)が2019年12月に発売した一体型サウンドバー。発売当時の税込み実売価格は2.4万円程度。2020年8月現在は2万円程度となっています。
バーチャル3Dサラウンド技術「DTS Virtual:X」に対応したサウンドバーで、映画などのソースを立体的な音響で楽しむという現在のサウンドバーの主流的な使い方はもちろん、単品コンポで実績のあるデノンのブランド力を生かした「高音質設計」が特徴的なモデル。本体サイズは890(幅)×66(高さ)×120(奥行)mm、重量は3.5kg。
ここでいう「高音質」とは、いわゆるピュアオーディオ的なもので、音楽鑑賞をハイクオリティーに楽しむという意味。そのためには基本的な回路や音質を練り上げ、できるだけ音源そのままの再生を心がける必要があります。
そのため、デノンの単品コンポのサウンドマネージャー・山内慎一氏が、開発の初期から関与。「ピュアでストレート」なサウンドを追求したとしています。
山内慎一氏の開発力には大変に定評があり、彼の部品選定や音質チューニングによって、デノンの何十万円もするコンポが高く評価されていると言えるほどの存在です。
通常はサウンドバーのようなライトユーザーにも向けたゼネラルオーディオ的な製品には、単品コンポの設計者は関わらないようですが、このたび、山内慎一氏がはじめてサウンドバーに関わったということです。それだけ、オーディオメーカーにとってもサウンドバーは重要な製品ジャンルになっているということでしょう。
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本機の音質重視設計を特徴づける機能として、「Pureモード」を搭載。「Pureモード」では、ほかのサウンドモードやバーチャルサラウンド、ダイアログエンハンサーなどの処理を停止し、原音への脚色を行わず、音源に収録された音を可能な限りストレートに再生するというもの。
単品コンポであるAVアンプなどで原音に忠実な再生を音楽鑑賞時などに狙うとくに採用されることがある機能ですが、サウンドバーで搭載されるのは異例。実際、デノンのサウンドバーとしてもはじめての搭載とのことです。
「Pureモード」のほかのサウンドモードには、臨場感豊かにワイドな空間を描くという「Movieモード」、ボーカルや楽器の音を鮮やかに奏でるという「Musicモード」、控えめな音量でも迫力を感じられるという「Nightモード」を搭載。
さらに、ニュースやナレーション、映画のセリフなど、人の声を明瞭にする「ダイアログエンハンサー」機能も搭載。効果は3段階で調整可能。
天井にスピーカー設置をしなくても、高さ方向を含めたサラウンドを仮想的に再現できる「DTS Virtual:X」も搭載。上記4つのサウンドモードに重ね掛けもできます。
入力・デコードに対応するサラウンドフォーマットはドルビーデジタル、DTS、AAC、リニアPCM(2ch)となっています。
Bluetooth受信も可能で、Bluetoothスピーカーとして使う事も可能。コーデックはSBCに対応
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再生の要であるスピーカー部を見ていきます。
カスタムメイドの25mm径ツイーターと45mm×90mm径のミッドレンジドライバーに加え、エンクロージャーの底面に向けて2基の75mmサブウーハーを搭載した2.1ch構成。本体音量と内蔵サブウーファー音量は別調整可能。
また、低音の量感とクリアネスを最適にバランスさせるよう設計したというバスレフポートを、エンクロージャーの左右に配置。これにより、豊かな低音再生を実現したとしています。
内蔵アンプの出力については未発表。このクラスの標準は60~80Wくらいなので、そのくらいだとは想像されます。なお、消費電力が40Wと少な目なことから、搭載アンプは省電力のD級動作と思われます。
入力はHDMI×1、光デジタル×1、アナログAUX×1、出力はHDMI×1、サブウーファープリアウトを装備。HDMIはオーディオ・リターン・チャンネル(ARC)、HDMIコントロール機能(CEC)にも対応。HDMIのパススルーは、4K/60p対応。
2万円程度のサウンドバーとして、「DTS Virtual:X」に対応したHDMI入出力対応と、4Kパススルー対応ということで、現在のトレンドは押さえています。
そのうえで、デノンならではの高品位再生能力が魅力。この能力は、音楽再生時にサラウンド効果を掛けずに「Pureモード」で特に際立つものと思われます。一体型サウンドバーの弱点となりうる低音再生については、外付けサブウーファー増設にも対応。この価格では珍しい装備です。
機能面では限られたコストを音質に振り向けていることからなのか、ネットワークオーディオ機能やUSBメモリからの再生、音声アシスタントへの対応などはなく、このあたりの機能性を期待する向きには向いていないかもしれません。
http://blog.livedoor.jp/element874/archives/22988856.html
https://www.wohltech.com/soundbar-denon/
https://www.element874.blog/DHT-S216レビュー/
やはり本機の本領は「Pureモード」で、音楽ソースを聴いたときは、同価格帯のサウンドバーを大きく超える高音質のようです。とくに、この価格帯のサウンドバーでありがちな音の篭り感や、不自然な高音のキツさなどが抑えられているのは特筆できるようです。
意外と言っては失礼ですが、サラウンド再生のクオリティーへの評価もおしなべて高く、これも基本的な音質を高めていることの二次的効果かもしれません。
価格的には手ごろなものの、機能を絞り、音質重視に振っているためか、他社のもっと高額で多機能なモデルに対してもそれほどの音質差は感じないという評価もあり、ハイコスパなサウンドバーとしても注目できるようです。