パナソニックがついに、メーカーとして初の完全ワイヤレスイヤホンを発売します。
Technicsブランドから「EAH-AZ70W」、Panasonicブランドから「RZ-S50W」「RZ-S30W」の計3モデルを4月中旬より発売。いずれもオープン価格で「EAH-AZ70W」が31,000円前後、「RZ-S50W」が21,000円前後、「RZ-S30W」が13,000円前後(いずれも税別)。
このうち、「EAH-AZ70W」と「RZ-S50W」はいずれもアクティブノイズキャンセリングを搭載しており、兄弟機のような関係にあります。
実売で1万円の差がありますが、この2モデルを比較しての違いは何でしょうか。
結論から言って、この2モデルの違いは、音響設計部分で、それに伴う音質の違い、また設計の違いによるサイズの違いです。また、筐体デザイン、充電ケースの素材、デザイン、そして製品のカラバリも違います。
逆に言うと、ノイズキャンセリング機能の性能、内容、そのほか、スペックなどは同一となります。
「EAH-AZ70W」のみがパナソニックネームではなく、単品コンポ部門のTechnicsネームであることも大きな違いではありましょう。オーディオに詳しくないライトユーザーなら、パナソニックだとわからない場合もあるかもしれません。それは今に始まったことではないのですが。
では、この2モデルの基本的な特徴です。最大の売りは、業界トップクラスを目指したという強力なノイズキャンセリング機能です。フィードフォワード方式とフィードバック方式を組み合わせたハイブリッドノイズキャンセリング方式を採用。それぞれにデジタル制御とアナログ制御を個別に行うことで、先行他社を凌駕するような性能を狙っているようです。
イヤホン本体は、再生コントロールなどを行うタッチセンサーとBluetoothアンテナを共用した「タッチセンサーアンテナ」を採用。アンテナ部分を広い面で確保するとともに、左右独立受信方式を採用することで、通信安定性も高めているとしています。また、通話に使用するMEMSマイクについても、電話機の開発チームと協力し、ビームフォーミング技術や風切り音対策を導入し、環境に左右されにくいクリアな通話品位を実現しているとしています。
Bluetoothはバージョン5.0、プロファイルはA2DP/AVRCP/HSP/HFP、コーデックはSBC/AACに対応。
バッテリー駆動時間は、イヤホン単体で約6.5時間(NCオン/AAC接続時、オフの場合は約7.5時間)、専用ケースと組み合わせた状態で約19.5時間(NCオン/AAC接続時、オフの場合は約22.5時間)。充電端子はUSB Type-Cで、15分の充電で約70分(NCオン/AAC接続時)使用できる急速充電機能も備えています。
イヤホンの質量は片側7g、IPX4相当の防滴性能も装備。これも共通です。
「EAH-AZ70W」専用アプリ「Technics Audio Connect」を使用することで、ノイズキャンセリングと外音取り込みのレベルは100段階で調整可能としていて、このあたりはソニーやアップルといった具体的な競合他社以上の使い勝手を実現しています。
一方、「RZ-S50W」では「Panasonic Audio Connect」で同様の機能を持ちますが、ノイズキャンセリングと外音取り込みのレベルは数段階での調節に留まるようです。これでも一般的には十分で、「EAH-AZ70W」の100段階が際立っていると言えます。
おそらく、ノイズキャンセリングと外音取り込みの最高レベルの性能は同じでしょう。ただ、個人の好みの強さにジャストに調整できる能力は「EAH-AZ70W」のほうが優れているのは間違いありません。
「EAH-AZ70W」の音響面の特徴は、TechnicsのHi-Fiオーディオ機器や有線イヤホン「EAH-TZ700」の開発で培った音響技術を活かした、高音質再生を志向していることです。
具体的にはまず、完全ワイヤレスイヤホンとしては比較的大型な10mm口径のダイナミックドライバーを搭載。振動板には、強度アップと不要な共振を抑制するため、PEEK素材にグラフェンをコーティングしたグラフェンコートPEEK振動板を採用し、高域の伸びや抜け、艶のあるボーカル再生が可能としています。
ドライバーの背面側には、「EAH-TZ700」でも採用した「アコースティックコントロールチャンバー」を設置。ドライバー前後の空気の流れを精密にコントロールして最適化することで、ドライバーが本来持つ広帯域にわたる再生能力を引き出すとしています。
「EAH-TZ700」は10万円以上もする有線イヤホンの高級機。さすがに「EAH-TZ700」に迫る音質は無理でしょうが、「EAH-TZ700」が備える高音質の方向性ではありましょうから、完全ワイヤレスイヤホンとして卓越した高音質が実現できているかはおおいに注目されます。
ドライバーユニットには、「EAH-AZ70W」よりも小さい、8mm径のダイナミックドライバーを採用。振動板にバイオセルロース素材を採用し、締りのある豊かな低域と明瞭なボーカルを楽しめるチューニングに仕上げたとしています。
円形デザインで、テクニクスヘッドホンの上質なデザインを象徴するスピン加工が施されます。カラーはブラックとシルバーの2色展開。
充電ケースは持ちやすいラウンド形状で、素材はアルミニウム。ヘアライン仕上げの天面部にはロゴを配置し、イヤホンのハウジング部と共通したデザインで、全体的に質感の高い仕上がりとしています。
「RZ-S50W」のイヤホン本体は正円形のシンプルなデザインで、ハウジング周囲にはノイズキャンセリング用のマイク孔を表現したオーナメントが施されるカラーはブラック/ホワイトの2色。
充電ケースは「EAH-AZ70W」同様に持ちやすいラウンド形状ながら、素材は樹脂。
どちらも4サイズのイヤーピースが付属しています。
両者の違いは基本的に再生音質。ですから、音よりもノイズキャンセリング機能やワイヤレスイヤホンとしての実用性を重視するのであれば、「RZ-S50W」でも十分と言えそうです。専用アプリによる調整の細かさの違いは人によっては大きな比較材料になりえますが。
ただ、モノとしての質感や使用感は、金属を使用している「EAH-AZ70W」のほうが上でしょう。音の違いに興味がなくとも、予算があり、興味もあるのであれば、「EAH-AZ70W」でも良いでしょう。
音がよくても重くて大きいモノは嫌だ、という人もいますが、こと、この2モデルに関しては、重量は同じで、サイズもほとんど変わらないようです。
予算や好み、音質、アプリへのこだわりによって、選ぶということになるでしょう。
むしろ、注目は、先行している2つの人気モデル・AirPods ProとWF-1000XM3との比較でしょう。特に、パナソニックでは、業界最高クラスのノイズキャンセリング性能と謳っているだけに、この部分での実際の比較がポイントです。
そのほか、音質面ではデジタル音源のアプコン機能を持つWF-1000XM3、スマホとの連携性では、iPhoneとの圧倒的な利便性を備えるAirPods Proとどれだけ渡り合えるかでしょう(完全ワイヤレスイヤホン+Panasonic)。