EAH-AZ70WとMOMENTUM True Wireless 2を比較しての違いは?

注目のTWSイヤホン・「EAH-AZ70W」と「MOMENTUM True Wireless 2」

2020年春に注目の完全ワイヤレスイヤホン新モデル、「EAH-AZ70W」と「MOMENTUM True Wireless 2」を比較しての違いを紹介し、両機の特徴やメリット、どちらをどう選ぶのがよいのかも解説します。

アップルの「AirPods Pro」と「AirPods 第2世代」、ソニーの「WF-1000XM3」が抜きんでて強い完全ワイヤレス市場。ここに、2020年春、相次いでこの2社の牙城を崩すべく投入される期待のモデルが2つあります。

それが、パナソニック初(ブランドはテクニクス)の完全ワイヤレスイヤホン・「EAH-AZ70W」と、ゼンハイザーの新作・「MOMENTUM True Wireless 2」です。

両機はいずれもアップル・ソニーの2社を意識しながらも、独自のよさを打ち出すことで、完全ワイヤレスイヤホン市場でのシェア拡大を狙う意欲作です。

どちらもそれぞれのメーカーが持つノウハウを活かしており、使用環境や用途によっては、アップル・ソニーにも対抗しうる実力をそなているようにも見えます。いよいよ、完全ワイヤレスイヤホンの戦国時代に突入するのでしょうか。

今回は、まずは、これから発売予定の「EAH-AZ70W」と「MOMENTUM True Wireless 2」を比較しての違いを見ながら、それぞれの特徴や得意な内容を探っていきたいと思います。そして、アップルとソニーも含めて、どのようなユーザーにどのモデルが適しているのかも考察したいと思います。

「EAH-AZ70W」と「MOMENTUM True Wireless 2」の価格と発売時期

「EAH-AZ70W」は2020年4月中旬発売予定。オープン価格で、税抜き31,000円程度の実売が予想。

「MOMENTUM True Wireless 2」は2020年5月中旬発売予定。オープン価格で、税抜き36,000円程度の実売が予想。
追記:4月16日に早められました。

ノイズキャンセリング性能の違い

両機とも、アクティブノイズキャンセリング(NC)機能を搭載しています。また、NC機能を働かせているときに瞬時に外部の音を取り込む機能もいずれも搭載しています。

両機のNC機能と性能は、NC機能と音質のバランスについての考え方の違いから、かなり異なったものになりそうです。

「EAH-AZ70W」は業界トップクラスを目指したというノイズキャンセリング機能を売りにしているだけに、騒音低減性能にはこだわっています。

外側のマイク音声のみで処理を行うフィードフォワード方式と、内側にマイクを配置するフィードバック式の両方を併用するハイブリッド型NC回路を採用。それぞれにデジタル制御とアナログ制御を個別に行うことで、先行他社を凌駕するような性能を狙っています

さらに、専用アプリ「Technics Audio Connect」を使用することで、ノイズキャンセリングと外音取り込みのレベルは実に100段階の細かさで調整可能としているのも特徴です。

NC性能をむやみに強力化すると耳に違和感を感じる場合がある点に、NC性能の駒かいカスタマイズ性で対応していると言えそうです。

一方、「MOMENTUM True Wireless 2」はフィードフォワード方式のみを採用したNC機能です。回路的なNC機能をあまり強めないことによって、耳に違和感の感じにくい自然なNC効果を狙ったためとしています。その分、イヤホン自体の遮音性を高める、つまりパッシブ・ノイズキャンセリング性能を高めることで、全体の騒音低減効果を高めているとしています。

ゼンハイザーにも専用アプリ「Smart Control」が用意されますが、NC機能の効きを細かく調節する機能はないようです。

「MOMENTUM True Wireless 2」がアクティブNC性能をむやみに高めないのにはほかにも理由があります。それはNC搭載イヤホンで起こりがちな、NC機能をオン・オフによる音質の違いです。ゼンハイザーではこれを最小限に抑えて、NC機能をオンにした状態でも自然な音質で音楽を聴けるようにしたとしています。

コーデックやバッテリーなどの違い

「EAH-AZ70W」はBluetoothチップにAiroha社の”MCSync テクノロジー”搭載タイプを採用。Airohaの”MCSync テクノロジー”搭載タイプはWF-1000XM3でも使われているのもので(ソニーはメーカーと共同開発したカスタマイズ品)、接続安定性を高める左右独立伝送を行うチップです。送信機器に左右されずに左右独立伝送できるのがメリットとされています。

また、このチップにNC機能は搭載されていないため、「EAH-AZ70W」のNC機能はパナソニックの自社開発回路であることもわかります。

Bluetoothはバージョン5.0、プロファイルはA2DP/AVRCP/HSP/HFP、コーデックはSBC、AACに対応

バッテリー駆動時間は、イヤホン単体で約6.5時間(NCオン/AAC接続時、オフの場合は約7.5時間)、専用ケースと組み合わせた状態で約19.5時間(NCオン/AAC接続時、オフの場合は約22.5時間)。充電端子はUSB Type-Cで、15分の充電で約70分(NCオン/AAC接続時)使用できる急速充電機能も備えています。

「MOMENTUM True Wireless 2」はBluetoothチップにQualcomm社製のQCC5100番台のものを使用していると推定されます。

QCC5100番台チップはNC機能も内蔵している便利なチップですが、NC性能に関してはソニーやアップルのようなメーカー開発品には及ばないというのが、これまでのQCC5100番台を搭載した他社製完全ワイヤレスイヤホンでの一般的な評価です。

Bluetoothのバージョンは完全ワイヤレスイヤホンでは最新の5.1。受信性能の高いLDS(レーザーによる直接構造化を行う)アンテナを採用し、接続安定性も向上。Bluetooth 5.1ではペアリングした機器の方向を検出できるため、LDS形成のアンテナと併せて、対応機器とペアリングした際の途切れにくさ、接続安定性の高さを高められることが期待できます。

プロファイルはA2DP/AVRCP/HSP/HFP。対応コーデックはSBC、AAC、aptX

イヤホン単体で最大7時間、ケースとの併用で最大28時間の再生が可能としています。充電端子はUSB Type-C。10分の充電で1.5時間使用できる急速充電機能も搭載。

音響面

完全ワイヤレスイヤホンとしては高価な2モデル。いずれも高音質を謳っており、そのサウンド面の特徴や機能は重要なポイントです。

「EAH-AZ70W」の音響面の特徴は、TechnicsのHi-Fiオーディオ機器や10万円以上もするフラグシップの有線イヤホン「EAH-TZ700」の開発で培った音響技術を活かしていることです。

具体的には、完全ワイヤレスイヤホンとしては比較的大型な10mm口径のダイナミックドライバーを搭載。振動板には、強度アップと不要な共振を抑制するため、PEEK素材にグラフェンをコーティングしたグラフェンコートPEEK振動板を採用し、高域の伸びや抜け、艶のあるボーカル再生が可能としています。

ドライバーの背面側には、「EAH-TZ700」でも採用した「アコースティックコントロールチャンバー」を設置。ドライバー前後の空気の流れを精密にコントロールして最適化することで、ドライバーが本来持つ広帯域にわたる再生能力を引き出すとしています。

一方、「MOMENTUM True Wireless 2」はドイツ・ハノーファーの本社で開発したというダイナミック型7mmドライバーを搭載。この7mmというサイズにも意味があると説明しており、これより大きくても小さくても求める音にならないとしています。

ゼンハイザーも高級イヤホンをいくつも開発しているだけでなく、特にダイナミック型にはこだわりがあるだけに、音質面でのメリットは十分にありそうです。

どちらも専用アプリにてプリセットイコライザーやマニュアルでのイコライザー設定が可能。好みの音質に追い込むこともできそうです。イコライザーの自由度は「EAH-TZ700」のほうが高いようです。

外観面

「EAH-AZ70W」は円形デザインで、テクニクスヘッドホンの上質なデザインを象徴するスピン加工が施されます。カラーはブラックとシルバーの2色展開。

充電ケースは持ちやすいラウンド形状で、素材はアルミニウム。ヘアライン仕上げの天面部にはロゴを配置し、イヤホンのハウジング部と共通したデザインで、全体的に質感の高い仕上がりとしています。

イヤホンの質量は片側7g、IPX4相当の防滴性能も装備。

「MOMENTUM True Wireless 2」は円柱形ハウジングに突き出たノズル部分が組み合わさった、独特なスタイリッシュなデザイン。カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色。ファブリック素材の充電ケースも特徴的。

イヤホンの質量は片側6g、IPX4相当の防滴性能も装備。装着時の耳からの突き出しを低減するとともに、耳の小さい女性でも装着しやすいとしていて、本体の小型・軽量性や装着性のよさについては「MOMENTUM True Wireless 2」のほうがこだわっていると感じます。

使い勝手の違いなど

いずれも操作はタッチセンサー式。操作内容を専用アプリでカスタマイズできるのもどちらも同じ。本体にはハンズフリー通話や音声アシスタントに対応したマイクも搭載。

マイク性能については、「MOMENTUM True Wireless 2」はアルゴリズムの最適化とビームフォーミングにより、とても自然でクリアとしています。ゼンハイザーはビジネス向けのヘッドセットやスピーカーフォンのノウハウがある分、他のメーカーよりも通話品位は優れている可能性があります。

「MOMENTUM True Wireless 2」は近接センサーを搭載し、イヤホンの着け外しによって曲の再生停止が行えます。

どちらをどう選ぶ

どちらもまだ発売前なだけに、どちらをどう選ぶかは難しいところもあります。それでも、すでに量販店には試聴機が並んでおり、両機を聴いた、聴き比べたという人も出てきており、ある程度の傾向はあるようです。

強力なNC性能を謳っている「EAH-AZ70W」ですが、意外にもむやみにNC性能を高めているというよりは、自然なNC性能を実現することで、音楽鑑賞時の音質が損なわれないことに注力しているようです。それでも、「MOMENTUM True Wireless 2」との比較では上のようです。

音は高音質を謳っているだけあって、クリアで情報量の多い正統派のハイファイ的なサウンドのようです。

一方の「MOMENTUM True Wireless 2」ははじめから自然なNC性能を謳っているだけあって、NCについてはほどほどのようです。自然で軽快な装着性は確かなようです。

音については、もともとアコースティック楽器を中心に、ナチュラルな再現性が持ち味のメーカーだけに、ブランドイメージを維持した高音質となっているようです。

素の音のおおまかな傾向としては「EAH-AZ70W」のほうがワイドレンジな解像度志向で「MOMENTUM True Wireless 2」がやや低音の盛り上がったピラミッド型傾向のようです。イコライザーである程度は変えられましょうが、楽器の質感などはそう変えられないでしょうから、自分の好みに合ったサウンド傾向のほうを選ぶのは重要です。

この2つで選ぶのであれば、NC性能で選ぶのであれば「EAH-AZ70W」、装着性で選ぶのであれば「MOMENTUM True Wireless 2」、音質で選ぶのであれば、好みや音楽ジャンルなどを考慮してどちらでも、といった感じでしょうか。なお、aptXコーデックにこだわるのであれば「MOMENTUM True Wireless 2」となります。

購入者の感想をご紹介
追記:4月16日に「MOMENTUM True Wireless 2」が発売されたため、おもに両機の比較をした感想がツイッターなどに上がり始めています。そのうちのいくつかをご紹介します。ただ、「MOMENTUM True Wireless 2」購入者視点のため、どうしてもゼンハイザー優勢になりやすい傾向があることには注意してください。参考程度に留めたほうがよさそうです。

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