エソテリックは、おなじみのSACD「名盤復刻シリーズ」に3タイトルの新譜を追加します。
それぞれ曲目は『R. シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》/ 交響詩《死と浄化》』『シューマン:ピアノ協奏曲 / グリーグ:ピアノ協奏曲』『ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》(全曲)』。9月15日から発売。
演奏と録音は『R. シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》/ 交響詩《死と浄化》』はカラヤン指揮ベルリン・フィルの1980年代のデジタル録音(マスターは44.1kHz/16bit)。
『シューマン:ピアノ協奏曲 / グリーグ:ピアノ協奏曲』はシューマンがアルフレッド・ブレンデルのピアノ独奏、アバド指揮、グリーグはラドゥ・ルプー独奏、プレヴィン指揮のいずれも1970年代のアナログ録音。オケはどちらもロンドン交響楽団。
『ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》(全曲)』は1971年のバイロイト音楽祭でのライヴ録音。
今回は初SACD化が多いようです。ユニバーサルによるSACD化がすでになされているのはルプーによるグリーグくらいでしょうか。ユニバーサルはデジタル録音初期の44.1kHz/16bit録音をSACD化することはこれまでのところありませんが。
結構ネタ切れなのかと思いきや、今回はかなり頑張ってくれた印象です。
とくにベームの「さまよえるオランダ人」は、名演奏・名録音の誉れ高い名盤ながら、どうやらこれまでハイレゾ化さえされていないようです。ユニバーサルによるSACD化はなくても、じりじりとアナログ録音時代の名盤はブルーレイ・オーディオ化されたり、ハイレゾFLAC配信化されてきているので、てっきりこの録音もすでにハイレゾ化されていると思っていました。
ベームのバイロイトでの録音のハイレゾ化というと、1967年の「トリスタンとイゾルデ」のブルーレイ・オーディオ化があり、そちらも非常に好評なので、今回のSACD化も大いに歓迎・期待されるところです。
ドイツ・グラモフォンの原盤ですから、今回のSACD化はユニバーサルから提供された192kHzないし96kHz/24bitのPCMデータを基にDSDリマスタリングされるものと思われます。ユニバーサルはDGの音源の自社SACD化についても現在でもPCMデータから行っていることが多いようですので。
ブレンデルのシューマンについても説明不要なくらいの名盤。こちらも初SACD化はうれしいところです。録音は1979年9月とフィリップスがデジタル録音を始める直前。昔はこれがアナログ録音で残念と思いましたが、今はアナログ録音のおかげでSACD等のハイレゾで楽しめるのでよかったと思います。
いずれにしてもフィリップスには多くの名盤がありながら、デッカに吸収されて以降、ユニバーサルからのハイレゾ化やSACD化はあまりありません。タワーレコードのSACD化もあまりないくらいです。この状況は変えて欲しいです。今回エソテリックがフィリップスのアナログ録音に手を掛けたのはその点で大いに評価します。