注目の高音質Bluetoothレシーバー2モデルが、ほぼ同時期に同価格帯で発売されます。いずれも中国メーカーのSHANLING UP4(1月31日発売・税込み実売1.4万円程度)と、FiiO BTR5(1月28日発売・税抜き1.4万円程度)。両者の価格差はちょうど消費税分。1,400円ほど。だからといって、高いほうがいいという簡単な結論なのかは、両者をよく比べてみてから考えた方がよさそうです。
FiiO BTR5 と SHANLING UP4は基本的によく似た内容と性能を持っています。どちらも、イヤホン端子は一般的な3.5mm径アンバランスに加え、2.5mm径バランス端子を搭載しています。いまや、イヤホンのバランス接続は、低価格なDAPやヘッドホンアンプでも必須なほど普及しており、この装備は妥当なところでしょう。
Bluetoothの対応コーデックや、DACとしての対応スペックを左右するDACチップ、Bluetoothチップは両者同じ。使っているDACはESS ES9281Pを2基、BluetoothのチップもQualcommのCSR8675で共通。
Bluetoothの対応コーデックはどちらもLDACやaptX HDといった、ハイレゾ相当の高品位コーデックに対応するのも同様。
どちらもUSB-DACとしても機能し、対応スペックはPCM: 384kHz/32bit、DSDは 11.2MHzまでネイティブ対応と、価格を考えると十二分なスペックです。
重要な追記:UP4の国内発売後に、価格コムで検証したところ、USB-DAC時は、PCM48kHz/16bitまでの対応に留まることが判明いたしました。情報をくださった読者の方に感謝いたします。
https://kakakumag.com/av-kaden/?id=14996
両者を比較しての違いもあります。まず、最も重要な機能であるBluetoothレシーバーとして、受信コーデックがUP4のみHuaweiのHWAに対応しています。LDAC同様に24bit/96kHzの伝送に対応する高品位コーデックですが、送信に対応しているのは現状ではHuaweiの機器だけです。
次に、モバイル機器で気になるバッテリー持ち。これはUP4に軍配。UP4が、3.5mm: 15時間・2.5mm: 10時間に対して、BTR5は、3.5mm: 9時間・2.5mm: 7時間とやや短くなっています。
ただし、充電時間はUP4の2時間に対して、BTR5は1,5時間と短いので、時間がない時の充電の使い勝手はBTR5のほうでしょう。
次にヘッドホンアンプとしては気になる項目である、アンプ出力。これはBTR5のほうが総じて上。3.5mmのステレオの場合も2.5mmのバランス出力の場合もBTR5の方が大きくなっています(比較表参考)。S/N比はどちらも十分に高く、優劣がつくほどではありません。
ただし、気になる点も、どちらのモデルも、バランス出力時には、DACチップのデュアル使用を謳っています。ところが、アンランス接続時にはUP4がデュアル、BTR5がシングル使用と分かれています(BTR5がアンバランス時にシングル仕様ということは、国内代理店がユーザーからの質問に答える形で明らかになりました)。
操作方法も違います。UP4のすべての機能は、多機能ホイールでコントロール、BTR5はマルチファンクション(多機能)ボタンでコントロールします。これは好みで選ぶべきところでしょう。
専用アプリによる利便性は、現状では専用アプリを用意し、デジタルフィルターの切り替え、10バンドのイコライザーの調整など、多彩な設定項目を変更可能なFiiOです。ただ、UP4もアプリを開発中との海外情報もあります(確かなものではありません)。
サイズと重量は、どちらも軽量・コンパクト。強いて言えば、UP4のほうが少しだけ軽いです。どちらのも取り外し可能なクリップケースが付属しており、胸ポケットなどに挟んでの使用が簡単にできます。
結局、どちらを選ぶかは、個人の考えや好みに委ねられると思います。強いて言えば、バッテリー持ち重視ならUP4ですし、バランス接続中心なら、アンプ出力の強いBTR5、アンバランス接続中心なら、アンバランス時でもDACデュアル仕様のUP4でしょうか。音質をいろいろ変えたいなら、カスタマイズ性の高いBTR5でしょう。
もっとも肝心なのは音質ですが、これも好みの領域です。店頭に出向いて、試聴機を比較視聴するのがよいとは思いますが、そこまではしないで買う人も多いのでしょう。これは海外も含めてネット上の情報からするに、BTR5はワイドレンジで情報量志向の、いかにも高音質機器というサウンドですが、反面、空気感や柔らかさの表現に欠けるという傾向の意見・レビューが見られます。
一方、UP4は、BTR5ほどの情報量・ワイドレンジではないものの、温かみや柔らかさを感じさせるサウンドに好印象を持った、という傾向に見受けられます。
いずれにしても、この2モデルは、バランス接続対応のBluetoothレシーバーという枠に収まらないハイスペックとハイコスパな好モデルです。ライバルはもはや、2万円以下のUSB-DAC内蔵ポタアンです。両機のいずれかがあれば、PCやスマホに接続して、ハイレゾ対応のUSB-DAC/ヘッドホンアンプとしても十分に機能を果たせるからです。
ですから、Bluetoothレシーバー機能に興味がなくとも、2万円以内で、USB-DAC/ヘッドホンアンプを探している人にも検討に値する製品なのではないでしょうか(比較+ヘッドホンアンプ)。
FiiO BTR5 | SHANLING UP4 | |
価格 | 税抜き実売14,000円程度(US$ 119.99) | 税込み実売14,000円程度 (US$ 99.99) |
DACチップ | ESS ES9218P x 2 | ESS ES9218P x 2 |
Bluetoothチップ | Qualcomm CSR8675 | Qualcomm CSR8675 |
USBコントローラー | Xmos XUF208 | |
Bluetoothコーデック | LDAC/aptX HD/aptX LL/aptX/AAC/SBC | LDAC/HWA/aptX HD/aptX LL/ aptX/AAC/SBC |
イヤホン出力およびアナログ出力 | 3.5mm + 2.5 mm , AUX | 3.5mm + 2.5 mm ,AUX |
アンプ出力 | 3.5mm HP: 80mW@32Ω (SE) 2.5mm Balanced: 220mW@32Ω | 3.5mm HP: 71mW @32Ω (High Gain)/ 91mW @32Ω (Dual DAC) 2.5mm Balanced: 160mW @32Ω |
USB-DAC時の対応スペック | PCM: 384kHz/32-bit DSD: 11.2MHz | PCM: 384kHz/32-bit DSD: 11.2MHzPCM: 48kHz/16bit? |
ゲイン調節 | High/Low 2段階 | High/Low 2段階 |
ボリューム調整 | ボタン | ホイール |
専用アプリ | あり | なし(開発中との情報もあり) |
バッテリー容量 | 550mAh | 550mAh |
バッテリー持続時間 | 3.5mm: 9時間 2.5mm: 7時間 | 3.5mm: 15時間 2.5mm: 10時間 |
充電時間 | 1.5時間 | 2時間 |
充電端子 | USB-C | USB-C |
S/N比 | 3.5mm: -118dB 2.5mm -122dB | 3.5mm: -120dB 2.5mm: -120dB |
サイズ | 72 x 32 x 11.3 mm | 60 x 36 x 13.5 mm |
重量 | 43.7g | 37g |
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大変有益な情報をありがとうございます。記事の内容も訂正させていただきました。
両機で迷っているユーザーは多いうえに、USB-DACの対応スペックを同じと思っている人も多いようなので、重要なことです。
ネット上の情報を信じて購入される人も多いことを自覚して、記事の制作に努めたいと思います。
大変有益な情報をありがとうございます。記事の内容も訂正させていただきました。
両機で迷っているユーザーは多いうえに、USB-DACの対応スペックを同じと思っている人も多いようなので重要なことです。
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