木を多用し、独特なデザインと開放的なサウンドのヘッドホンで確固たる地位を築いているGRADO(グラド)が完全ワイヤレスイヤホンに参入しました。
「GT220」を10月23日に定価27,800円(税抜き)で発売。
約2年の開発期間を要したという労作と銘打った、記念すべきGRADOブランド初の完全ワイヤレスイヤホン。
Bluetoothチップに「QCC3020」を搭載。Bluetoothバージョンは5.0で、対応コーデックがaptX、AAC、SBC。ハンズフリー通話やタッチコントロールによる接続機器の操作、SiriやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントの操作など、現在の完全ワイヤレスイヤホンに求められる基本性能は確保しています。
バッテリー駆動時間はイヤホン単体で6時間、付属充電ケースと併用で最大36時間。充電ケースは、USB Type-C端子を採用。Qiワイヤレス充電に対応。
ここまでは特に際立った特徴はありません。
それではどこに本機の特徴があるのかというと、本体ハウジングの設計と音、ということになりましょう。
ハウジングのデザインは特に奇を衒ったものではありません。わざわざ言うのは、GRADOのヘッドホンというと、一目でそれとわかる独特なデザインのため、イヤホンにおいてもそのように一目でGRADOとわかる意匠にしてくるかと思われるところでしたが、ここでは無難なデザインとなっています。
とはいえ、軽量ポリカーボネートを本体の素材に採用することで、長時間の使用でも疲労しにくい軽さを実現しているというのが売りです。完全ワイヤレスイヤホンは内部に機械部を内蔵している関係上、人によっては重さによる違和感を感じる場合があるだけに、本機が他よりも際立って軽いというのならそれだけでも注目です。ただ、本体の重量についての公表はされていないようです。
また、デザイン面では無難ですが、ハウジングに配されたGRADOのロゴは、操作するたびに光ります。GRADO好きの人にはここが堪らないようですが、完全ワイヤレスイヤホンが光ることを嫌うユーザーも結構いますので、本機を購入しようと思っている方は留意してください。
そのほか、ツイストロック方式により優れた装着感を実現しているとしています。
サウンド面では使用ユニットは8mm径ダイナミック型を採用。特に振動板素材も公表しておらず、時期回路などについての特記事項もないようです。ただ、ここに独自のチューニング技術で最適化を施しているというのが最大の売りと言っていいようです。
メーカーが作り上げた音質を変えて欲しくないためなのか、本機では他社ではよくみられるイコライザーなどが使える専用アプリは用意されていません。
ざっと内容を見てみると、デザイン的にはGRADOの個性は出ていません。おそらく、どこかのメーカーの既存品をベースにしたOEM製品なのでしょう。既存品がないにしても、社外に製造を委託しているような印象です。
だからといっても、音質チューニングはメーカーがしっかり行っているのもOEM製品であっても多く、その部分でメーカーの個性が発揮されているものも少なくありません。使用部品もカスタムで指定したり開発したりしている場合もあります。
特にGRADOに関しては、開放型ヘッドホンにおける開放的な音場と、独特の迫力のある低音といった確立されたサウンドイメージがあるだけに、GRADOらしい音質を聴かせるためのチューニングはことに重要でしょう。
では、購入した方たちのなどのレビューや感想はどうなっているのでしょうか。
GRADO初の完全ワイヤレスイヤホンとはいえ、この価格でアクティブノイズキャンセリング機能を搭載していないばかりか、外音取り込み機能や専用アプリがないため、割高という印象からか、発売後の購入の出足は鈍い印象もあります。
それでも、GRADOのサウンドが好き、という熱心なユーザーを中心に購入者はいます。彼らのレビュー・感想を見てみると、基本的に音質は満足、というか、高音質ではあるという印象です。
音については、癖が少なく素直な音で解像度が高く、バランスも良い、というような方向性のようです。ホワイトノイズについては少し感じるという人がいました。GRADOユーザーの多くはロック系ミュージックが中心で、ピアニシモの目立つクラシックはあまり聴かないという評判と関係があるのかもしれません。
一方、GRADOらしいパワフルさや低音の充実、といった方向性とは少し異なる印象も受けます。オーソドックスな高音質イヤホンとは言えるようです。
ただ、本体の軽量さによる長時間でも疲れにくい装着感の良さを特記的に賞賛している向きは多いです。デザインはあまりGRADOらしくはないとは言っても、本体ロゴが光ることや充電ケースの雰囲気に満足している人は多いようです。
総じて、高音質なイヤホンではありますが、GRADO愛好家から見て音の満足度が高いのか、一般的なユーザーからするとこの装備と音質のバランスから見た価格はどうなのか、といった観点からよく検討する必要があるイヤホンのようにも思えます。