ファーウェイ・ジャパンは、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンのエントリーモデル「HUAWEI FreeBuds 3i」を6月12日に発売します。オープン価格で予想実売価格は14,800円(税抜)。本体色はブラック(カーボンブラック)とホワイト(セラミックホワイト)。
「FreeBuds 3」(税抜き定価18,800円)よりも安価なエントリーモデル。ただし、「FreeBuds 3」は世界初のオープンエアー型の完全ワイヤレスイヤホンでアクティブノイズキャンセリング機能を搭載しているという話題性のあるモデルでしたが、「FreeBuds 3i」では一般的なカナル型としているのが大きな違い。
このため、遮音性が高まり、ノイズキャンセリング性能としては上位よりも高まっているという逆転現象になっています。
「FreeBuds 3」との比較も交えつつ、「FreeBuds 3i」の詳しい内容・特徴をご紹介します。
「FreeBuds 3i」は耳の外側に2基、内側に1基のマイクを搭載。アクティブノイズキャンセリングはこのうち、内外のマイク各1基ずつを使用する「ハイブリッド型」となっています。ソニーやテクニクスなど、ノイズキャンセリング性能の高さを謳うタイプのモデルでは必ずと言っていいほど使用される方式で、高い騒音低減効果を狙うならマストの装備でしょう。「FreeBuds 3」では採用されていなかったようです。
この結果、「FreeBuds 3i」の騒音低減効果は、「FreeBuds 3」の15dBから大幅に向上した32dBとなる高性能を達成しています。
一方、通話時には環境騒音を低減するノイズキャンセリング機能が働きます。通話時のノイズキャンセリング時には、外側マイク2基がビームフォーミングで声をよりうまく拾い、周囲のノイズ干渉を回避。さらに、内側マイクで内耳道を伝わる声を拾うことで、外風が強い環境などでもクリアな音声を届けることができるとしています。
なお、「FreeBuds 3」ではハウジング側面に通話音声を収集するための骨伝導センサーを内蔵。さらに、ステムの先端にダクトを設け、風切り音を抑えるようにしていました。
どちらも高い通話品位を実現しているようですが、「FreeBuds 3」のほうが、風切り音が発生しやすい屋外での移動中の通話品位はより高いような感じがします。
また、「FreeBuds 3」では独自開発の「Kirin A1チップ」によりノイズキャンセリング機能を司っていましたが、「FreeBuds 3i」ではこのチップを使用しているとは明示されていません。
「FreeBuds 3i」では「FreeBuds 3」には搭載されていなかった外音取り込みモードが後日アップデートで対応予定となっています。
「FreeBuds 3i」のBluetoothはVer.5.0に、コーデックはAAC/SBCに対応。「FreeBuds 3」では190msの低遅延や電波干渉への耐性の高さもアピールしていました。
Androidのみ対応の「HUAWEI AI Life」アプリに「FreeBuds 3」同様対応。ノイキャン効果の調整、機能のアサインなど様々な設定が可能。アップデートにもこのアプリは必要ですので、常に最適な状態で使い続けるためにはAndroid端末が必須なことには注意しましょう。
操作系は本体のタッチ式。表面の高光沢コーティング防汚処理とアンチミスタッチアルゴリズムの組み合わせで、ミスタッチを大幅軽減できるとしています。このあたりはより新しい「FreeBuds 3i」が「FreeBuds 3」が優れているのかは注目です。
ドライバーは10mm径のダイナミック型を搭載。大型ムービングコイルユニットと高感度ポリマー複合振動板により、高音質を志向しています。
「FreeBuds 3」は大口径ユニットを搭載しやすいインナーイヤー型だったこともあり、14mmのダイナミックドライバーを備え、低音増強のためのベースチューブも搭載していました。
基本的な音質がどちらが優れているのかは興味深いですが、インナーイヤー型とカナル型という大きく音質傾向の異なるタイプなだけに、簡単に優劣を決められない気もします。
「FreeBuds 3i」の音楽再生/通話時間は本体のみの場合3.5/2.5時間で、ケース充電を含めると14.5/10.5時間。充電時間は1.5時間で、15分の充電で1.5時間使用可能な急速充電にも対応。
バッテリー性能は明らかに「FreeBuds 3」が優れています。「FreeBuds 3」のバッテリーはイヤホン本体で約4時間、ケース使用で約20時間の再生が可能。30分でケースを約70%充電可能な急速充電にも対応。「HUAWEI Wireless Charger」やワイヤレス給電対応の同社スマホとの組み合わせにより、ワイヤレスで充電もできます。
「FreeBuds 3i」の質量はイヤホン本体(片側)が5.5gで、ケースが51g。「FreeBuds 3」本体の重さは4.5gでしたから、少し重くなっています。「FreeBuds 3」の充電ケースは約48g。
「FreeBuds 3i」はIP54の防塵・防水性能を搭載。「FreeBuds 3」では防塵・防水性能はありませんでしたから、屋外やスポーツ時の用途には「FreeBuds 3i」のほうが優れています。
こうしてみると、「FreeBuds 3i」は単に「FreeBuds 3」の廉価版、下位機という単純なモデルではなく、それぞれに存在価値のあるようにうまく住み分けした印象です。
音楽再生や通話用には「FreeBuds 3」が優れている可能性があります。一方、ノイズキャンセリング性能は間違いなく「FreeBuds 3i」が上。防水・防塵性による汎用性の高さも「FreeBuds 3i」が上。
バッテリー性能は一応「FreeBuds 3」が上ですが、これはどちらのモデルも他社の競合機より短く、ファーウェイの弱点と言えそうです。
他社の競合機としては、もちろん、見た目や内容からもアップルの「AirPods Pro」なのでしょうが、「FreeBuds 3i」ではAndroidに最適化した設計を採るなどで、巧みに完全ワイヤレスイヤホンのユーザーを取り込もうとしています。
何と言っても魅力は安さでしょう。アクティブノイズキャンセリング機能を搭載した大手メーカー製としてはもっとも安いクラスです。アップルやソニーは高いだけでだめ、というユーザーにはアピールできそうです。ファーウェイというメーカーがいやだ、という流れもあり、簡単ではない面もあるかもしれませんが(完全ワイヤレスイヤホン+HUAWEI)。