国内では特定のイヤホンとのセット販売しか行われていなかった、iFi audioの完全ワイヤレスイヤホン化アダプター「GO pod」が単体販売されました。59,400円で2023年7月7日に発売。
なお、GO podの単体販売に伴い、須山歯研で受け付けていた「Fitear MH」シリーズとのバンドルセットは、7月6日をもって販売終了となります。
「GO pod」は、MMCXと2pinのリケーブル端子を備えた有線イヤホンを完全ワイヤレスイヤホン化できるBluetoothアダプター。
BluetoothチップはQualcomm QCC5144を採用。Snapdragon Sound対応でLDACをはじめ、aptX Adaptive(96kHz/24bit)/aptX HD/aptX LL/aptX/LHDC/AAC/SBCと現在の主要なコーデックは網羅。
DACはシーラスロジックの「MasterHIFI」(型番までは非公開)を左右に1つづつ別途搭載。高音質再生を担っています。
接続されたイヤホンに出力を最適に合わせるために、自動的にイヤホンのインピーダンスを検出し出力を調整。設定は16Ω、32Ω、64Ω、300Ωの4つあり、接続されたイヤホンに最適な設定が自動的に選択されるしくみ。ヘッドホンアンプ出力は32Ω時で120mW。
アダプター本体とイヤホンケーブル接続部分(イヤーフック部分)も分離・接続できる機構になっており、このため標準付属品でMMCX、2pinの両規格に対応可能。別売りオプションの追加により、さらにPentaconn ear、T2、A2DCという複数の規格のリケーブル端子に対応できる予定になっています。
アダプター本体の操作はタッチ式。音楽再生や一時停止、前後トラックに移動、電話応答、着信リジェクト、ボイスアシスタントなどが操作できます。アダプター本体はIPX5の防水仕様。
専用充電ケースはワイヤレス充電にも対応。連続再生時間:約7時間、充電時間:約1.5時間、ケース充電込みで35時間。
外形寸法/重量は、アダプターが43.5×16.4×9.5mm/12g(片側)、ケースが116×76×38.5mm/126g。
本機が発表されたときは、LDAC/aptX adaptive両対応の完全ワイヤレスイヤホン化アダプターはなかったのですが、FiiOのUTWS5(実売価格約2.2万円)が2023年7月のファームウェアアップデートにより、元からのaptX Adaptiveに加えて、LDACにベータ版として対応。本機のLDAC/aptX adaptive両対応の完全ワイヤレスイヤホン化アダプターという唯一性はなくなりました。
しかし、独自機構による複数リケーブル端子への対応はUTWS5にはなく、さまざまなリケーブル端子のイヤホンで本機1台を使いまわしたいなら、本機の価値は依然として高いものがあります。
また、価格・内容からしても現在最高音質を目指した完全ワイヤレスイヤホン化アダプターとしての立ち位置も、まだ競合レベルの製品は出ておらず、揺らいではいないと言えるでしょう。
(比較参考用)FiiO UTWS5の紹介記事
各種レビューを参考にすると、さすがに音質は良いようで、現在、最高の音質の完全ワイヤレスイヤホン化アダプターが欲しいなら本機となりそうです。UTWS5との比較でも価格差が大きいこともあり、本機が音質面での絶対的実力では上回っているということで良いようです。また、いわゆる鳴らすのが難しい、高級なマルチドライバーイヤホンもうまく鳴らせるようです。もはやDAPの必要性を感じないというほどの評価をしている人もいます。
iFi audioは、ポータブル向けのDAC/ヘッドホンアンプでのノウハウや市場での高い評価がありますが、今回、これまでとは違うレベルでの小ささが求められる製品でも、従来の高い評価を維持できるような製品を出したことにも驚きます。
iFi audioのDAC/ヘッドホンアンプは、現代的な情報量やワイドレンジ性を確保しながら、自然で滑らか、やや穏やかなサウンドで、聴きやすい音質に定評があります。また、その音質傾向をすべての製品で共通化させているのも特徴です。本機もiFi audioの定評ある音質面での持ち味・魅力を踏襲できているようです。
ただ、音質以外の面ではいろいろと注文が出てくるようです。
装着感がきついとか違和感があるという意見がいくつか見られました。深く耳に装着できないイヤホンの組み合わせがあるというのも気になります。音質重視設計により、どうしても本体が大きく、重めになることが関係しているのかもしれません。イヤーループの着脱を手で行うのが難しいという声もあります。
そもそも、iFi audioはDAC製品がメインで、イヤホンに関わる製品を出したことがないことも関係あるかもしれません。このあたりはイヤホンの設計ノウハウの多いFiiOやKZなどに譲る部分があるのでしょう。
接続安定性は、やはり伝送データ量の多くなるLDACでは環境によっては不安定になるという報告があります。これも、接続元のスマホを変えたら安定性が高まったという報告もあり、いろいろと試行錯誤が必要かもしれません。LDACの音質優先ではうまくつながらないという人もいます。LDACメインで使いたい人は注意したほうがいいかもしれません。
付属充電ケースが大きく、ケース込みでの携帯性が悪いという感想があります。ただ、これにより、高級イヤホンに多い、筐体が大きいイヤホンも収納できるメリットがあります。この製品と組み合わせるユーザーは大型筐体の高級イヤホンを使うことも多いことを想定してのこととも思われます。
装着性や使い勝手の面ではUTWS5はここまで悪い評価はなく、総合的な完成度を求めるのであればUTWS5のほうが優れているかもしれません。UTWS5もそれほど高額ではない有線イヤホンとの組み合わせでは、本機との差はそれほど大きくないという意見もあり、予算や手持ちのイヤホンとの兼ね合い、音質の好みなどを勘案してUTWS5を選ぶというのも方法でしょう。