JVCケンウッドのJVCブランドによるカナル型イヤホン・HA-FX1100は、2014年に約53,000円(税抜き)で発売されたカナル型イヤホン。すでに2016年に後継機のHA-FW01が実売価格税込み約38,000円ほどで発売されています。
いわば、型落ちの旧モデルなのですが、なぜか、2020年の現在でもイヤホン愛好家ならずとも話題に上ることが多いイヤホンです。
というのも、このHA-FX1100。なぜか、Amazonタイムセール祭りをはじめとする、Amazonのセールに、頻繁に登場するからです。だいたい25,000円くらいでセールされます。年に一回のサイバーマンデーでは23,000円くらいになったこともあります。
本来ならば、生産完了品のはずで?それにしてはAmazonの在庫が尽きる気配もなく、もはやJVCがAmazonのためにだけHA-FX1100を生産継続しているのでは、と言われるくらいです。実際、2020年現在は、Amazonくらいでしか新品はあまり入手できないので、疑われてもしょうがないかなあ、と思います。本当のところはわかりません。
さて、HA-FX1100も後継のHA-FW01も同じWOODシリーズに属するイヤホンであり、共通点の多いモデルです。一方で、違いもあるわけで、両者の共通点と違いを探りたいと思います。
共通点としては、両者とも、JVCの看板技術ともいえる、木製ダイナミック型振動板を採用していること。木は振動板として優秀な特性を備えつつも、実際にオーディオ用として実用化するにはさまざまな困難があるため、現在でも木製振動板を実用的に採用しているのは世界でもJVCだけという、非常に独創的な技術です。
この振動板によるサウンド面の特徴は、やはり、木製が多い、生楽器の再現性に優れていることが挙げられるようです。また、いわゆる温もりを感じさせる傾向も顕著なようです。
さらに、JVCのWOODシリーズイヤホンでは、木製振動板だけでなく、ハウジングやそのほかの部材にも随所に木製パーツを使用することによるサウンド面、意匠面での方向づけを行っています。
また、木製ユニットに寄り掛かるだけでなく、HA-FX1100ではユニット前面にウッドディフューザーの配置や、ユニットの振動ロスを広帯域で低減するアコースティックハイブリッドダンパーなどの高音質化技術も採用しています。
イヤーピース内壁に設けたディンプルによって、音質劣化の原因となるイヤーピース内の反射音を拡散させて音のにごりを抑制し、クリアなサウンドを実現するスパイラルドットイヤーピースの付属も特徴です。
両モデルとも、ハイレゾ対応を軽く超える広帯域再生、リケーブルやバランス接続化を容易に実行できるMMCX端子採用など、現代最先端の高級イヤホンに欲しい性能と装備もしっかりと備えています。
そのうえで、HA-FX1100とHA-FW01を比較しての違いとしては、まず、もっとも重要な木製ユニットについて、口径は11mmと同じながらも、HA-FX1100の80μmからHA-FW01では50μmに薄型化した軽量ウッドドーム振動板を使用していることが挙げられます。これによって、より繊細な表現力を持っているとしています。
ウッドやアルミなど異種材料の組み合わせにより、不要な振動をコントロールする「メタルハーモナイザー設計」、ユニット前面に不要な音を拡散するドットを効果的に配置。分解能を改善し自然な音の広がりを実現するという新開発「アコースティックピュリファイアー」も違いです。
さらに、形状も見直し。音筒の角度や位置を耳孔に合わせて調整することで、装着時の本体の安定性が向上。本体のサイズや形状に加えてケーブルの位置も見直し、重量バランスを最適化することで、サポート力を向上させ、より高い装着感で安定を維持できるとしています。
付属ケーブルについても、L/R独立グランドケーブルを採用し、セパレーションの向上を図っています。
HA-FX1100の主な仕様は、ドライバーユニットが口径11mのウッドドームユニット、再生周波数帯域が6Hz~45000Hz、インピーダンスが16Ω、出力音圧レベルが106dB、最大許容入力が200mW。MMCX端子を使用した着脱式コードはケーブル長1.2m。
HA-FW01の主な仕様は、口径11mのウッドドームユニット、再生周波数帯域が6Hz~50000Hz、出力音圧レベルが104dB、インピーダンスが16Ω、最大許容入力が200mW。重量は約14g。MMCX端子を使用した着脱式コードはケーブル長1.2m。
Amazonのセール価格を基準にすれば、両者の価格差は1万3千円以上くらいです。どちらもハイクラスのイヤホンであり、一般的にそれほど不満の出るイヤホンとは思えませんが、この価格差ほどの音の違いがあるかでしょう。
HA-FX1100は単体でも十分に魅力的なイヤホンで、実売25,000円程度なら多くの人が満足できる水準の音質を備えているからこそ、この価格でのセールが長きにわたって続いているのでしょう。
一方で、HA-FW01を購入し、HA-FX1100とも比較できるような人の一般的な意見としては、HA-FW01のほうが、価格差に見合うほどに音の情報量が多く、ワイドレンジでニュートラルな高性能イヤホンという傾向のようです。
HA-FX1100はやや低音の量感が多く、最新録音のハイレゾ音源などでの緻密な情報量などにも若干の不満が出る場合はあるようです。
ただ、ジャズやクラシックを、雰囲気よく聴きたい場合など、HA-FX1100のほうが好ましい場合もあると評価しているユーザーも少なくなく、HA-FX1100が単なる旧設計の型落ち機と言い切れない魅力を持っているようでもあります。
木製振動板らしさもHA-FX1100のほうが色濃いという声もあり、イヤホンはニュートラルであるべきという人には少し違うかもしれませんが、もともとWOODシリーズのイヤホンはアコースティック楽器をうまく聴かせたいという面もあり、モニターイヤホンとはコンセプトが異なるでしょう。
いつまでHA-FX1100が安く買えるかはわかりませんが、自分の好み、予算などによって、興味があれば購入されるのも悪くないイヤホンのように思います(イヤホン+JVC)。