中国のイヤホンメーカー・KBEARから大注目の新製品「Believe」が登場します。海外価格は180ドル。価格だけ見ると、中国メーカーのイヤホンとしても特に高くもなく安くもないといったところ。
いくら中華イヤホンが欧米の大手メーカーよりも安いといっても、今やいくらBAドライバーを積んだイヤホンが安かろうが、ちょっとやそっとではイヤホン愛好家も驚かなくなっている昨今であっても、この「Believe」には驚くほかないような内容となっています。
それは、なんとこの価格でピュア(純)ベリリウム振動板を採用しているのです。
ベリリウムをダイナミック型ドライバーの表面に蒸着したベリリウム使用ユニットは、スピーカー素材においても、その高音質ぶりからヤマハやパイオニア、FOCALなどの国内大手メーカーも採用してきました。ベリリウムはスピーカー用素材として極めて優れた物性特性を持っているからです。
一方で、ベリリウムは扱いが難しく、コストも高いことからスピーカー用としてもそれほど多くは使われていません。
そもそも、ベリリウムを振動板に使うのであれば、純ベリリウムが理想ですが、スピーカー用振動板に純ベリリウムで作り上げることは極めて難しいため、ほとんどは既存のコーン素材に蒸着して使われてきました。純ベリリウムであれば、ベリリウム蒸着、コーティングの振動板に比べても飛躍的な音質向上も見込まれています。スピーカー用の純ベリリウム振動板採用スピーカーとしては、カナダのパラダイムのPersonaシリーズが中高域用に使用し、その高音質ぶりで注目されています。
それが、イヤホン用の小口径ユニットとして、ついに純ベリリウム振動板が開発され、その製品化第一弾として、日本のfinalの「A8000」と台湾のDUNUの「LUNA」という2モデルが発売。どちらも同じメーカー製の純ベリリウム振動板を使っています。
両モデルとも、これまでにないほどの高音質で大変に評価の高いイヤホンですが、価格は約20万円とさすがにそれなり。
この2モデル以外、なかなか純ベリリウム振動板イヤホンが出てこない状況ですし、まして、劇的な低価格化は難しいと思われていました。
ところが、KBEAR「Believe」はなんと180ドル。2万円しないくらい。いかに価格破壊かということです。
ベリリウムコーティングの振動板のイヤホンはいくらもあります。価格もそれほどでもありません。
しかし、KBEAR「Believe」はどうやら本当に純ベリリウム振動板。日本から輸入した振動板との記述があり、finalの「A8000」で使われているのと同系統ということでしょうか。
大変に可能性のある振動板だけに、磁気回路も重要ですが、ここにも「Believe」はN52ネオジム鉄ホウ素強力磁石を採用し、高音質を狙っています。
航空宇宙グレードの高強度アルミニウム合金を採用したチャンバー、人間工学と音響的観点から入念に設計されたハウジングデザインなど、イヤホンの音質に影響を与えるパーツについても練り上げられています。このあたりはこれまでに「KBEAR LARK」や「KBEAR DIAMOND」といった市場での評価の高い高音質イヤホンをものにしてきたメーカーだけあると言えそうです。「Believe」は本体デザインやパッケージは「KBEAR DIAMOND」を継承しており、合理的なコストダウンにもつなげているようです。
40芯6Nフルカワ製単結晶銅Litz構造ケーブルが付属。0.78mm 2pin規格でリケーブル可能。そのほか付属品(写真参照)
プラグ:3.5mm
周波数応答範囲:20-20KHZ
感度:98dB
インピーダンス:17Ω
のスペック。20kHzまでの再生とは、現代の高性能イヤホンとしては物足りませんが、メーカーとしては考えがあってのことでしょう。
海外ではすでに発売されており、英文のレビューがいくつか出てきています。
それらの傾向としては、音質については価格破壊的に良く、超ハイコスパイヤホンと言えるようです。ベリリウム振動板の特徴と言われる、極めて高い解像度と生音を彷彿とさせる自然で滑らかな音の質感再現力という基本方向を有しているようです。
さすがにfinalやDUNUと同レベルとはいかないものの、DUNU LUNAの7割ほどのパフォーマンスと評している人もいて、これは価格からするととんでもない実力です。
問題は音でも価格でもなく、駆動するアンプに力を要求することのようです。スマホはもちろん、安価なDAPではどうやらうまく鳴らせないようで、駆動環境がボトルネックになってしまうようです。
上記で紹介した海外のレビューではiBasso DX160のような駆動力に定評のあるDAPか、xDuoo Link 2のようなUSB-DAC/ヘッドホンアンプを具体的に挙げています。
その点ではイヤホンを安く買えても、再生機器は安く済まない面があり、結局は一定以上のポータブルオーディオ愛好家向けという面はあるようです(中華イヤホン+KBEAR)。