クリプトンの密閉型スピーカーの最エントリーモデル「KX-0.5」は2017年に税別・ペア185,000円で発売され、2021年現在も販売され、この間に多くのオーディオ専門誌で取り上げられ、数々の賞を受賞するなど、国内メーカー製スピーカーの今や数少ない現役の名機と言える存在です。これも今や珍しい、日本国内製造というのも大きな特徴です。
なお、クリプトンのスピーカーは、ビクターで「SX-3」以降のSXシリーズなど、密閉型ブックシェルフスピーカーを中心に数々の銘機を開発してきた伝説的な名エンジニア・渡邉 勝氏が設計しているのも特筆大書される特徴です。
「KX-0.5」の好評を受け、本機のバリエーションモデルとして2019年7月に税別・ペア22万円で発売されたのが「KX-0.5P」です。
「KX-0.5P」は「KX-0.5」の仕上げをピアノフィニッシュとしたのが大きな違い。加えて、仕上げを変えただけでなく、それによって変化する音に合わせて、改めて音質チューニングも施しているのも違いです。
エンクロージャーは両機とも針葉樹系高密度パーチクルボードとMDFボード(リア)で構成。仕上げのベースも、両機ともスモークユーカリ木目。
「KX-0.5」ではスモークユーカリつき板をポリウレタン塗装で仕上げています。これにより、不要な振動を抑えて振動特性に優れ、ぬけが良く響きの美しい、「高級楽器のようなエンクロージャー」になっているとしています。
一方、「KX-0.5P」はスモークユーカリつき板をポリエステル塗装でピアノ仕上げと「KX-0.5」とは異なります。
それもピアノ作りで知られる浜松にあり、実際にピアノを手がけていた企業に依頼。高級ピアノと同じ、ポリエステル塗装で鏡面6面を仕上げと非常に凝っています。
要は実際のピアノにかなり近い見た目の質感を持ったハイクオリティーな仕上げと言えるでしょう。
ピアノ仕上げは見た目だけでなく、音にも影響します。ピアノ仕上げをすると、エンクロージャーが“締まり”低音が出にくくなり、ポリエステル塗装は硬度も高く、音が硬くなる傾向があるとのこと。ですから、ベースの通常モデルと塗装以外を同じにしても、音が変わってしまうということです。
そこで、内部の吸音材を調整し、低域を出るようにしたほか、ツイーターの内部配線材を、ベルデン製から上位機の「KX-3Spirit」で採用した、マグネシウムケーブル+PC Triple Cケーブルに変更。もともとハイレゾ対応のハイスペックを備えた「KX-0.5」の高域の良さをさらに引き出したとしています。
もともと「KX-0.5」は天然ウールの低密度フェルトで制動特性を調整していますが、そのあたりにも手が入っているのでしょう。
ユニット構成は、140mm径のCPP(カーボンポリプロ振動板)ウーファーと、35mm径のピュアシルク・リングダイアフラム型ツィーターを組み合わせた2ウェイブックシェルフで、エンクロージャーは密閉型。「アルニコライク フェライト磁気回路」を開発して搭載。
再生帯域は50Hz~50kHz。出力音圧レベルは87dB/W・mで、インピーダンスは6Ω。クロスオーバー周波数は3,500Hz。
定格入力は40W、最大入力は120W。
このあたりの内容や物理特性は両機同じ。
サイズも両機同じですが、重量のみ「KX-0.5P」は「KX-0.5」より200g重くなっています。塗装や内部の変更の影響でしょう。
両機の外形寸法は194×295×352mm(幅×奥行き×高さ)で、「KX-0.5」の重量は7.4kg。「KX-0.5P」は7.6kg。
正直、どちらのスピーカーも見た目は美しく、甲乙つけがたい印象。あえて言えば「KX-0.5」は高級家具調で、「KX-0.5P」はそのままピアノ風といったところ。これは好みの問題でしょう。
音については意外にもベースモデルで価格も安い「KX-0.5」のほうが良い、というか好みという人が見られます。
「KX-0.5P」はどうもタイトで解像度が高いのはいいものの、腰高、あるいはモニター的な素っ気なさのような傾向が強いようで、そのあたりが好みを分けるのかもしれません。もともと密閉型で、いわゆる低音感が弱く感じるというのもあるのかもしれません。
なお、クリプトンが「KX-0.5」「KX-0.5P」との組合せに推奨するスピーカースタンドは同社の「SD-1」、インシュレーターは「IS-HR1」です。オーディオアクセサリーでも定評のあるメーカーですので、この組み合わせは確かなものでしょう(スピーカー+KRIPTON)。