マランツは、エントリークラスの単品コンポ・6000シリーズの新モデルとして、CDプレーヤー「CD6007」、プリメインアンプ「PM6007」を9月中旬に発売します。税抜き価格は「CD6007」が5万円、「PM6007」が64,000円。
2016年に発売されたエントリーコンポ「CD6006」、「PM6006」の後継モデル。
それぞれ、「CD6006」、「PM6006」と比較しての違いを交えつつ、内容・特徴をご紹介します。
まず、両機とも、従来よりも少し価格がアップしています。「CD6006」は48,000円、「PM6006」は6万円でした。ただ、価格上昇分が納得できるような内容の改善や向上が見られるようです。
「CD6007」と「CD6006」を比較しての違いとしては、まず、音の要であるDACチップが変更になっています。「CD6007」では旭化成エレクトロニクスの32bit DAC「AK4490EQ」を新たに採用している一方、「CD6006」ではシーラスロジックの「CS4398」を採用していました。旧モデルから4年の歳月の間に、DACチップも各社から多くの新製品がよりハイスペックになって出てきていることが影響しているのでしょう。
また、DACチップの変更により、新たにデジタルフィルター切り替え機能を追加しています。スローロールオフとシャープロールオフを切り替えられます。
従来から上級クラスのモデルでは他社も含めてよく搭載されている機能ですが、マランツのエントリークラスでも搭載されるようになりました。
DAC以降のアナログ出力回路には、フルディスクリート構成としたうえで、マランツの持ち味であるハイスピードなサウンドのため、独自の高速アンプモジュール「HDAM」と「HDAM-SA2」によって電流帰還型フィルターアンプ兼送り出しアンプを構成するといった、マランツのコンポでは従来から継続し、定評のある内容は踏襲しています。
左右チャンネル間のクロストークやレベル差を抑えるために、アナログ出力回路は左右でシンメトリーにレイアウト手法も同様です。
基本的にはアナログ部の回路構成は同様ですが、一部の部品を交換・追加することにより音質を向上させています。
アナログオーディオ用電源回路には、低電流回路を追加。特に低い周波数帯で大きくノイズレベルを改善する効果がありということで、実際に100Hzでは約30dB改善したとしています。
また、アナログ回路電源用のブロックコンデンサーには、新規開発の2,200μFのエルナー製カスタム・ブロックコンデンサーを採用し、音質を改善しているとしています。
さらに、アナログ出力回路には、精密メルフ抵抗や金属皮膜抵抗、低ESR導電性高分子コンデンサーなど高品位なパーツを新たに採用しています。
もともとマランツのCDプレーヤーは、ヘッドホンアンプ部にも注力しており、その音質にも定評があります。
HDAM-SA2型のディスクリート高速電流バッファーアンプとハイスルーレートオペアンプを組み合わせた高品位なヘッドホンアンプという基本は従来同様。3段階のゲイン切替機能も同様に搭載しています。
「CD6007」では、新たに、低ノイズ・低歪なオペアンプ「OPA1678」を新たに採用し、音質の向上を図っています。
さらに、ヘッドホンやイヤホンを接続すると、自動的にヘッドホンアンプの出力回路がONになる機構を採用。逆に未使用時はOFFになるようになりました。ヘッドホンを使用していない時の音質向上が期待できます。
以前から前面のUSB端子を利用して、USBメモリ内の音源ファイル再生ができましたが、再生可能ファイルのスペックが大幅にアップ。
CD6006では再生対応ファイルはWAV/MP3/WMA/AACで、WAVは48kHz/16bitまででしたが、「CD6007」ではDSDは5.6MHzまで、PCM系は最大192kHz/24bitまでの再生に対応するようになりました。従来はDSDはおろか、全くハイレゾ再生もできなかっただけに、大きな向上です。なお、PCなどからの直結によるUSB-DACとしては従来同様に機能しません。
外形寸法は440×341×105mm(幅×奥行き×高さ)、重量は6.5kg。出力端子はアナログRCA×1、同軸デジタル×1、光デジタル×1という構成は従来と同一です。
アンプの6000番台モデルは従来から同軸と光のSFDIF デジタル入力を持つDAC内蔵アンプでしたが、DACチップの構成がこちらもCDプレーヤーと同様に、シーラスロジックの「CS4398」から、旭化成エレクトロニクスの32bit DAC「AK4490EQ」に変更に。また、CDプレーヤー同様に2種類のデジタルフィルター切り替え機能を新搭載しました。
端子は同軸デジタル入力×1、光デジタル入力×2で、PCMの192kHz/24bitまでのデータをサポートするスペックは同じです。
DAC以降のアナログ回路には、HDAMによるローパスフィルター、及び HDAM-SA2による出力バッファーを採用するなど、「CD6007」同等の内容となっています。
プリアンプ、パワーアンプには上級機と同様にフルディスクリート構成の電流帰還型増幅回路を採用。オリジナル高速アンプモジュール・HDAMを要所に使用。電流帰還型増幅回路には、HDAM-SA2とHDAM-SA3を組み合わせるといった構成は従来から継承しています。3段ダーリントン回路のバイポーラ型のドライバートランジスタによるパワーアンプも同様。
電源部はシールドケースに封入した大型のトロイダル型。アルミ押し出し材のヒートシンクを備えています。
パワーアンプ用の電源部のブロックコンデンサーには、新規に開発した12,000μFのエルナー製カスタム・ブロックコンデンサーを採用。ブリッジ回路も改良。金属皮膜抵抗や低ESR導電性高分子コンデンサーなど高品位なパーツも新たに採用。このあたりの部品の改良・交換はCDプレーヤーのCD6007とも共通していて、合理的な設計を感じます。
MMカートリッジ対応のフォノイコライザーも従来から引き続き搭載。新たにJFET入力を採用し、入力部のカップリングコンデンサーを用いない回路構成にすることで、鮮度の高いサウンドになったとしています。
定格出力は40W×2ch(8Ω)、全高調波歪率は0.08%、周波数特性は10Hz~70kHz。入力端子はアナログRCA×4、同軸デジタル×1、光デジタル×2、Phono×1。音声出力はアナログRCA×1、ヘッドホン×1。
スピーカー出力は金メッキのスクリュータイプを2系統で、バイワイヤリングにも対応します
消費電力は355W。待機時消費電力は0.3W。外形寸法は440×370×105mm(幅×奥行き×高さ)、重量は7.8kg。このあたりまでののスペックは全く同じ。デザインもほとんど変わっていないので、もし交換してもオーディオに疎い家族には交換を気づかれないでしょう。
CDプレーヤー、アンプともに、サウンドマネージャーと音質担当エンジニアによる試作、試聴を繰り返し、徹底したサウンドチューニングを施すことで、「定評ある6000シリーズのサウンドをさらに一段高いレベルに引き上げた」としています。これは部品交換や回路変更だけで行えるものではなく、担当者の努力の賜物と言えるでしょう。
大手メーカーであっても、少人数の音決めにより、メーカーの音が形成されているというのはこれまでの例からも明らかなので、マランツに限らず、メーカーの音質担当者の感性が自分に合うものかを考慮する必要はあります。ただ、メーカーごと、音質担当者ごとの個性は、幅広いユーザーが購入するであろうエントリークラスであれば、それほど強烈なことはない傾向があり、この両機も全体にオーソドックスなサウンドの範囲ではあろうと思います。
CDプレーヤー「CD6007」、プリメインアンプ「PM6007」の両機を見てみると、「CD6007」のほうが従来モデルからの改善ポイントは多いように見受けられます。PM6007は、すでに完成度の高いジャンルである、アナログアンプを軸にした製品だけに、なかなか劇的な改善は難しいところでしょう。
「PM6007」においては、たとえばデジタル入力にUSBを追加するなどすれば、従来モデルとの差別化を大きくできたとは思います。
「CD6007」は、やはり、USB端子からのハイレゾ再生が可能になったのは大きいでしょう。PCからのUSB入力に対応して欲しかった向きもあるでしょうが、音質面ではUSBメモリからの再生のほうが有利です。
従来機のCDプレーヤー「CD6006」、プリメインアンプ「PM6006」のうち、在庫品や中古で安く狙うなら、新モデルとの違いの少ない「PM6006」のほうがおすすめではないでしょうか。
なお、両機のあとに発表された中級コンポの「30シリーズ」ではデザインが従来の「12シリーズ」から一変。オールドマランツを思わせるのものに変わっています。今年の6000番台は従来のデザインでしたが、来年以降に6000番台のモデルチェンジがある場合は、おそらく現在のデザインからは大幅に変更になるものと思われます(SACDプレーヤー+marantz)。