ハーマンインターナショナルは、Mark Levinson(マークレビンソン)のワイヤレスヘッドホン「No5909」を2023年6月に発売。価格は121,000円。
アクティブノイズキャンセル(ANC)を備えたBluetooth接続対応型のワイヤレスヘッドホンで、マークレビンソン初のヘッドホンであり、ブランド初のポータブルオーディオ製品。
40mm径ベリリウムドライバーを搭載。マークレビンソンのアンプなどの単品コンポと同じ、世界クラスのサウンドエンジニアによって設計されたと謳っています。
ヘッドバンドにはプレミアムレザーを採用。イヤーパッドは交換可能となっているなど、高級コンポブランドで培ったイメージをポータブル機でも展開。専用のハードケースも付属。
接続はBluetoothワイヤレスと3.5mmステレオミニ(専用付属ケーブル)によるアナログ有線接続、さらにUSB-C端子も搭載し、24bit/96kHzまでの再生が可能なUSB-DAC接続もサポート。
Bluetooth 5.1準拠で、コーデックはAAC、aptX、LDAC、aptX Adaptive(最大24bit/96kHz)に対応。
ANC機能は3モード搭載。Ambient Aware(いわゆる外音取り込み機能)も備えています。また、4基のマイクを備え、クリアな通話を実現するSmart Wind Adaption技術も搭載。本体操作は物理ボタン。スマートフォンアプリ・Mark Levinson Headphones対応。
連続再生時間は最大34時間で、ANC使用時は30時間。15分の充電で6時間再生可能。
充電用USB-Cケーブル、USB-C to 3.5mmオーディオケーブル、3.5mm to 6.3mmアダプタなどが付属。
あのマークレビンソンがついにポータブルオーディオ業界にも参入。といってもマークレビンソンも、とっくにその名を冠する創業者の経営ではなく、多くの有名オーディオブランドを傘下に収め、現在は韓国のサムスンの傘下になっているハーマンインターナショナルのいちブランド。利益になるのであれば、ポータブルオーディオ業界にも参入させるということでしょうか。
ただ、マークレビンソンブランドは、いまでも高級単品コンポブランドとしてのポジションを維持し続けているのですから、これまでの製品とは全く違うジャンルで、しかも、これまでの製品よりも大幅に安い価格のモデルを出すのは意外には思います。
マークレビンソンブランドでヘッドホンを出すのであれば、音質重視タイプの高級有線専用型で、数十万クラスかと思った面もあります。
ネット上には半分冗談でしょうが、マークレビンソンにしては安い(安すぎる)という意見もあり、ブランドイメージと幅広い製品ジャンルとの整合性の維持の難しさも感じます。
まずは、この価格で音が良ければありがたいことです。
本機の比較対象機は、10万円を超え、本機と同じ10万円台前半程度の実売価格の、ワイヤレスノイズキャンセリング機能搭載ヘッドホンとなります。具体的にはFocal Bathys、B&WのPX8あたり。音質はいずれの評価も高く、好みで選べる範囲でしょう。機能面ではこの3つではLDACに対応しているのは「No5909」だけですので、LDACにこだわるなら本機でしょう。また、ヘッドホンのバッテリーが切れたとき、完全パッシブでアナログ接続できるのも本機のみらしいのも注目点です。内蔵バッテリーが消耗しても末永く使い続けられる点も見逃せないポイントです。
No5909の基本的な音質評価は好評です。本機の接続は以下の3種類に対応
①無線 Bluetooth接続
LDAC aptx adaptive両対応
内蔵DAC利用(96kHz/24bit)
ノイキャン使用可能
②有線 USB-Cデジタル接続
内蔵DAC利用(96kHz/24bit)
ノイキャン使用可能
③有線 USB-C-3.5mm接続
アナログ接続(電源オフにする必要あり)
ノイキャン使用不可
とくに有線接続時の音質は、マークレビンソンブランド初のヘッドホンとは思えないほどハイレベルなようです。有線接続時の音質は素性のよい好バランスのオーソドックスなハイクラスヘッドホンそのもののようで、高音質志向の有線ヘッドホン愛好家の使用にも耐えられるようです。ハーマン曲線に忠実という設計も功を奏しているのでしょう。
具体的には豊かな音場表現や広がりのあるサウンドステージ、クリアな中高音、力強いソリッドな低音など、全体的にバランスの取れた音質を持つと評価されています。情報量の豊富さや迫力についても高く評価されています。
やや情報量志向のモニター系よりで、音源によっては聴き疲れを覚える向きもあるかもしれないという評論は気になります(聴き疲れしにくいという評価もあり、音源に左右される要素が大きいのでしょうか)。録音状態に敏感で、良い録音なら楽しめるが、悪い録音なら録音の欠点も暴くようなところがあるようです。ATH-M50xをグレードアップしたようなサウンドという評論がうまく表現しているようです。この傾向が好きなら、素晴らしいヘッドホンが登場したと言えるのかもしれません。
有線接続は内蔵DAC使用のUSBデジタル接続と、専用ケーブルによるアナログ入力があります。アナログ入力は外部のDACの品位を上げれば、デジタル接続を上回るポテンシャルがあるとのこと。こだわるならアナログ接続でしょう。Z1R、TH909、HE1000v2といったアナログ有線オンリーの高級ヘッドホンにも伍する音質という評価をする人もおり、そうなるとワイヤレスやANC、DAC機能の分、本機のコストパフォーマンスはかなり高いとなりそうです。
無線接続時にも有線接続と同様の傾向が維持されており、これもはじめてワイヤレスヘッドホンを手掛けたとは思えない完成度のようです。
ANC性能や外音取り込み機能に関しては特筆できる性能ではなく、実用には十分というレベルのようです。ANC機能はBOSE、SONY、Appleといったこのジャンルでは実績とメーカー規模の大きなところに大きなアドバンテージがあり、無理からぬところでしょう。
イヤーカップの外側にタッチセンサーが搭載されており、再生や一時停止、曲送りなどの操作が直感的に行えると評価されています。
専用アプリの機能性も標準的で、イコライザーが低音の増減しかないのを不満に思う人がいました。アップデートで細かいイコライジングが可能になればいいかもしれません。アナログ接続は付属専用ケーブルのみで可能で、バランス接続はできないことにも留意が必要です。
そのほか、高品質な材料と製作技術による堅牢な作りが評価されています。ヘッドバンドやイヤーカップの調整が容易で、長時間の使用でも快適性が高いと述べられています。付属のケーブルやアクセサリーの品質も高く、使い勝手が良いと評価されています。
非常に高級なオーディオブランドとしてのネームバリューを獲得しているマークレビンソン。そのヘッドホン第一弾は、12万円とヘッドホンとしては高額なものの、ブランドとしては安いくらいで、しかもその音質は期待以上なほど良好なようです。外観や手触りなどモノとしての質感もよく、所有欲を満たせるブランド力も相まって、10万円クラスの高級ヘッドホンに登場した新星と言えるようです。