ゼンハイザージャパンは、完全ワイヤレスイヤホン「MOMENTUM True Wireless 2」を国内発表しました。発売時期は2020年5月中旬。オープン価格で、実売予想価格は税別3万6300円です。カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色。
2018年に発売した「MOMENTUM True Wireless」(現在の税込み実売価格3万円程度)の後継機。
新たにアクティブノイズキャンセリング機能を搭載したことをはじめ、本体の小型化、バッテリーの長寿命化、接続安定性能の向上、使い勝手の向上など、全方位的な向上を図った意欲作です。
前作「MOMENTUM True Wireless」と比較しながら「MOMENTUM True Wireless 2」の特徴をみていきたいと思います。
「MOMENTUM True Wireless 2」では新たにアクティブノイズキャンセリングが搭載されました。これにより、周囲が騒々しい屋外や乗り物のなかでもより音楽に集中できるようになります。
遮音性の高い構造によるパッシブノイズアイソレーションと、アクティブノイズキャンセリングを融合させることで、強力かつ自然なノイズキャンセル(NC)能力を実現しているというのが特徴。
アクティブノイズキャンセリングについては、NC効果が高いものの、ユーザーが違和感を感じることもあるハイブリッド式(外側のマイク音声のみで処理を行うフィードフォワード方式と、内側にマイクを配置するフィードバック式の両方を使うやり方)をあえて採用せず、外側に配置した2基のマイクによるフィードフォワード方式のみにしています。ソニーやアップルなど、ハイブリッド式を採用したメーカーは、NC効果は高いものの、使用時に違和感を感じることもあるという評判を見ての判断のようです。
また、NCオン・オフによって、音質が大きく変わることが他社製品ではありますが、ゼンハイザーではこの点も最小限になるように留意しているとしています。つまりは、音質最優先のNC機能と言えそうです。
外音取り込みは従来も搭載していた機能ですが、新モデルではこの性能を向上させているとしています。NC使用時の急な呼びかけにも対応でき、屋外などでの安全確保にも役立ちます。
デザインは「MOMENTUM True Wireless」でも採用された、円柱形ハウジングに突き出たノズル部分が組み合わさった、独特なスタイリッシュなデザインを踏襲しています。ただ、サイズを小型化しているのが大きな違いです。
ハウジング最底部の最大径は2mmほど小さくなり、ほぼ円形だったものもオーバル形状に変化しています。これにより、装着時の耳からの突き出しを低減するとともに、耳の小さい女性でも装着しやすいなどように大幅に装着性が改善しています。
イヤホンの左右合わせての重量は12g。「MOMENTUM True Wireless」の13.2gから軽量化しています。
バッテリー性能も向上。「MOMENTUM True Wireless」では単体で4時間、充電ケースを併用することで、合計約12時間のバッテリー駆動可能だったところ、イヤホン単体で最大7時間、ケースとの併用で最大28時間の再生が可能と大幅にロングバッテリー化しています。充電端子には従来どおりUSB Type-Cを搭載しています。
なお、待機時のバッテリー消費も従来から軽減し、一部で問題になっていた充電ケースの使い勝手の悪さも改善しているようです。ファブリック素材の充電ケースもおなじみですが、これも継承しています。
接続性についてもBluetoothのバージョンが5.0から5.1へと向上。受信性能の高いLDS(レーザーによる直接構造化を行う)アンテナを採用し、接続安定性も向上させているようです。Bluetooth 5.1ではペアリングした機器の方向を検出できるため、LDS形成のアンテナと併せて、対応機器とペアリングした際の途切れにくさ、接続安定性の高さを高められるとのことです。
Bluetoothチップには引き続きQualcomm社製SoCを採用。ただ、NC機能を搭載しているのはQCC5100番台のSoCであり、「MOMENTUM True Wireless」発売以降に開発されているため、SoCの型番は変わっているはずです。
この影響なのか、対応コーデックが変わりました。対応コーデックはSBC、AAC、aptX。「MOMENTUM True Wireless」で対応していたaptX LLには対応しません。ここは大きな違い。aptX LLに対応した完全ワイヤレスイヤホンは大変珍しいだけに、残念です。
ドライバーには、ドイツ・ハノーファーの本社で開発したダイナミック型7mmドライバーを搭載。この7mmというサイズにも意味があると説明しており、これより大きくても小さくても求める音にならないとしています。「MOMENTUM True Wireless」でも7mm径ダイナミック型ドライバーを採用していました。「MOMENTUM True Wireless 2」では本体が小型化し、筐体の内容積も減っていることから、音質チューニングは入念に行われているはずです。
周波数特性は5Hz – 21kHzで、感度は107dB(1kHz/1mW)。このスペックは両機同一です。
そのほか、「MOMENTUM True Wireless」とも共通の便利な機能や特徴は以下とおり。
ハウジングにはタッチパネルを搭載し、ノイズキャンセリングのオン・オフ、音量の上下、曲の再生停止などの各種操作が可能。1回タッチするだけで、GoogleアシスタントやSiriといった音声アシスタントも起動できます。
IPX4の防滴性能にも対応。専用アプリ「Smart Control」も用意され、好みのサウンドバランスにイコライジングできるのに加え、イヤホン本体のタッチパネルをカスタムしたり、ファームウェアのアップデートなどにも対応できるようになっています。
近接センサーを新たに搭載し、イヤホンの着け外しによって曲の再生停止が行えるのは新機能です。
ゼンハイザーでは、「MOMENTUM True Wireless 2」を音質を最重視して設計した完全ワイヤレスイヤホンと謳っていて、利便性やNC性能はさることながら、完全ワイヤレスイヤホンに高音質を求める層がもっともマッチするユーザーでしょう。
なかでは、屋外のそれなりにうるさい場所で、NC機能をかけたほうが音楽を聴き取りやすい環境にある人がより適しているでしょう。普段から静かな場所で聴く人にはNC機能分はむだになりかねませんし。
ただ、ゼンハイザーはヘッドホンや高級イヤホンでもそうですが、クラシック音楽にも対応できるアコースティック楽器の高度な再現性を特徴にしていますから、NC機能に関係なく、アコースティック系音楽を良く聴く人には他社のモデルよりも向いているかもしれません。
完全ワイヤレスイヤホンの人気メーカーであるアップルやソニーとうまく差別化しようという意図も見えます。少なくとも音質ではアップルを上回っていることは確実でしょう。音質についても、ソニーも高音質を売りにできますし実力もありますが、クラシック向けのアコースティック系への親和性ではソニー以上も十分に可能でしょう。
前作との比較では、「MOMENTUM True Wireless」ではやや大きい、装着感がイマイチだったという人は「MOMENTUM True Wireless 2」で装着性が大幅に改善できる可能性があります。「MOMENTUM True Wireless 2」が他社の完全ワイヤレスイヤホンよりも小型であるならば、幅広い女性ユーザーにおすすめのモデルともなり得ます。
とりあえず、完全ワイヤレスイヤホンに3万円台後半以上をかけてもよい、という予算の問題もありますが。
なお、ほとんどの場合は新製品の「MOMENTUM True Wireless 2」が従来機の「MOMENTUM True Wireless」よりも優れていますが、一点、従来のほうがメリットがあるのがaptX LLコーデックへの対応。aptX LLコーデックは動画視聴時やそれほど遅延を気にしなくてもよいゲームであれば、Bluetoothワイヤレスでも遅延の違和感なく使えるというコーデックです。ですから、動画やゲームで完全ワイヤレスイヤホンを使いたいのであれば、従来の「MOMENTUM True Wireless」を入手されることをおすすめします(NC搭載完全ワイヤレスイヤホン+SENNHEISER)。