水月雨ブランドは、ブランド初のヘッドホンとして、開放型のダイナミック・ヘッドホン「空鳴-VOID」と、平面磁界型ドライバー採用の「啓明星-VENUS」を2022年12月に発売しました。価格はどちらもオープン価格。発売当初の税込み実売価格は、空鳴-VOIDが30,400円前後、啓明星-VENUSが95,000円前後。
本記事では下位モデルの「空鳴-VOID」についてご紹介します。
上位モデルの「啓明星-VENUS」についてはこちらでご紹介しています。
空鳴 – Voidは、研究開発チームが約3年かけたという開放型ヘッドホン。水月雨独自の専用金型一式を使ってパーツを作ることで、コストを抑えた生産を可能にしたとしています。
独自開発の50mmダイナミックドライバーを搭載。有限要素法シミュレーション(FEA)で最適化した内磁型磁気回路を採用することで、内磁型構造であっても 1T 以上の磁束密度を達成し高い効率を発揮。「音楽のラージダイナミックレンジやディテールをより豊かに表現できる」としています。
振動板には柔性エッジと金属メッキドームを組み合わせたものを採用。優れたダイナミックレスポンスと質感をもつ低・中域、滑らかな周波数応答をもたらすとしています。
優れた装着感&軽量化設計:全体的な構造が軽量化されているものの、高い品質と耐久性があり、快適な装着感をもたらします。室内でも、室外のポータブルでも、気軽に使うことができます。
周波数帯域は10Hz~80kHzで、インピーダンスは64Ω±15%。感度は110dB。本体重量は非公開(実測でケーブル込み263gというユーザー情報あり)。プラグは3.5mm。3.5mmプラグの両出しケーブル、3.5mm to 6.3mm 変換プラグが付属。
全体的な印象としてはフラットな音質であり、特に中~高音域が良く出ていると評価されています。
低音域が欲しい人にとっては物足りないかもしれませんが、低音の量は必要な範囲で出ているとされています。
音の解像度は高く、中高音が綺麗に出ていると評価されています。高音は爽やかで繊細な音も滲みなく再現されるとされています。低音は量感がやや薄く硬めの印象ですが、キレがありすっきり聴かせるタイプと評されています。
音は全体に上品に鳴り、女性の声は透明さが際立つと述べられています。逆に男性ボーカルは苦手ととらえることもできます。
音場は広く、定位もしっかりしており、近い音と遠い音をはっきりと聞き分けることができると述べられています。
このヘッドホンはオールジャンルに強い万能機種ではなく、音と空間の調和が特徴との評価があります。音場が広がり、ヘッドホンから出た音が周囲の空気と調和していると述べているレビュアーもいます。このような音質傾向はダイナミック型の開放型としても一般的ではなく、本機の個性ととらえることができそうです。
音像の実体感は全体に薄目ながら、ボーカルの存在感はしっかりしているというのも変わった傾向であり、楽器主体の音楽よりもボーカル、特に女性ボーカルをフィーチャーした音源に注力して設計された可能性もあります。
総合的な評価として、価格に比べて音質が満足できると評する人がいる一方、汎用性の高い音質ではないこともあり、音質面でのコストパフォーマンスが高いとは言えないという意見もあります。
開放型ヘッドホンは得てして、高音のヌケがよいとか、音場が広いとか、低音は弱く薄目という傾向があります。本機もその傾向ですが、そのうえで、確信的に長所を伸ばしたような独特なサウンドになっているようです。
この製品の弱点として、見た目と作りのチープを挙げる人が少なくありませんでした。プラスチックの感じが強く、値段に見合わない外観であると感じる人もいます。ただし、装着感は側圧がやや強めですが、本体が非常に軽いため、あまり疲れないとのこと。強く頭を振ってもずれたり落ちたりしないので、フィット感も良好としています。
特にイヤーパッドの大きさに関しては、耳が大きい人でも耳たぶが干渉せず痛くならないと高評価されています。ただし、パッド自体はウレタンのような材質であり、見た目は安っぽく感じられます。
付属のケーブルはL型のメッシュケーブルで、取り回しや巻き癖が少なく、高品質な作りとされています。
装着感はヘッドホン自体も軽く(メーカー発表はないものの、多くのユーザーが軽いと高評価)、締め付けもキツくないため、長時間の使用でも痛くないとのこと。ただし、本体はとても軽く装着感も良いですが、作りはコストを削った感じでチープさがあります。特に白色の場合、それが顕著に感じられます。
見た目は大きくて白いヘッドホンで、イヤーパッドもかなり大きいサイズです。パールホワイトの塗装が採用されており、清楚な印象にまとめられています。男女ともに違和感のない白色で、パールホワイトの柔らかさとキラキラ感が拘りのある人に好まれるでしょう。また、白色の開放型ヘッドホンは珍しいため、白色の開放型ヘッドホンを求める人にはこの製品が少ない候補になると思われます。
しかし、この価格帯のヘッドホンとしては、質感が十分でないとの評価がやはり支配的です。
総合的に言えば、音質だけを考えれば、コスパが高いと評価できる場合もあります。また、装着感は軽量モデルが多い開放型にあっても特筆できる良好さのようです。
ただし、見た目を重視する人には価格にしては見た目は安っぽいと言えるようです。音質を重視し、外観や装飾にはあまりこだわらない人にはおすすめの製品と言えるでしょう。また、軽くて装着感のよい本格的な開放型ヘッドホンが欲しい方にも向いていそうです。
いずれにしても、独特な音質傾向と見た目という個性的な製品と言えるようです。「面白い隠れ名機」と一言で評している人がいますが、まさしくそのようなモデルなのでしょう。
この価格帯で最初の開放型ヘッドホンを求めるような用途ではなく、すでに何台かヘッドホンを持っている、あるいはリファレンス的な音質のヘッドホンを持っている人が、気分を変えて音楽を聴きたいといった用途に向いているような気がします。