パナソニックは、4K有機ELテレビフラグシップモデル「JZ2000」シリーズをCES2021において発表しました。価格や発売時期は未定ですが、いずれ国内での正式発表があるものと考えられます。サイズは55型と65型の2種類。
従来の「HZ2000」シリーズの後継機となる新フラグシップ機。
現時点で公開された情報を基に、「HZ2000」シリーズと比較しての違いを加えつつ、「JZ2000」シリーズの内容を見てみたいと思います。
「JZ2000」シリーズは、「HZ2000」シリーズの発売後にソニーから発売された最新の高性能ゲーム機「PS5」が持つ多くのビジュアル機器としてのハイスペックに対応すべく、4K/120Hz入力に新たに対応するなど、いわゆるHDMI2.1規格で実現される多くの機能が新たに追加されています。それらの「最新ゲーム機」向けの改善点が中心となっています。
また、テレビの基本的な画質を大きく左右する映像エンジンも刷新。スピーカーやUIにも改善が加えられ、ゲームを楽しむ以外の幅広いユーザー層にもアピールできる高品位テレビを狙っています。
まず、映像エンジンは新たに「HCX Pro AIプロセッサー」を搭載。AIを活用し、映画、スポーツ、音楽、ニュースなど、ユーザーが視聴しているコンテンツの種類を正確に検出した上で、コンテンツに合わせた画質に自動調整してくれます。AIを活用して画像エンジンの高画質化を図ることは他のメーカーでも始まっていますが、パナソニックでもついに導入が始まりました。
有機ELパネルは、「HZ2000」に引き続き特注のLG製Master HDR OLED Professional Editionを採用。パナソニックのエンジニアによって独占的にカスタマイズが施されており、有機ELテレビはどのメーカーもLG製パネルを使っていることにより似たような画質になりかねないマイナス点にメスを入れています。
HDRについては従来までのHDR10、Dolby Vision、HLGに加え、部屋の明るさに合わせて自動調整する新機能「HDR10+ ADAPTIVE」にも新対応。「HDR10+ ADAPTIVE」自体、発表されたばかりの規格であり、本機がその世界最初の対応テレビです。
Dolby Vision IQ、Filmmaker Mode、HLGフォトといったHZ2000でも対応していた最新規格に対応します。さらに本機のFilmmaker Modeでは、光量に応じて映像を動的に調整する独自機能「Intelligent Sensing」も追加されています。
HDMI入力は上述のように新たにHDMI2.1に対応。4K/120Hzでの入力とVRR (可変リフレッシュ レート)に対応しています。AMD FreeSync Premiumもサポート。
「Game Mode Extreme」(「ゲームモードエクストリーム」)と呼ぶゲーム用のモードを新搭載。大きくアピールポイントとして打ち出しているのも特徴です。
「HCX Pro AIプロセッサー」が持つ高速かつ高い処理能力を生かしての低遅延が売りで、「有機EL TVの業界で最も低い数値までレイテンシーを削減する」と謳っています。数値的には60Hz入力時に14.4msとなるようです。
オーディオ面ではTechnicsがアドバイスした「TUNED BY TECHNICS」のサウンドシステムを引き続き搭載。従来の上向き、および前向きスピーカーに加えて、新たに横向きスピーカーも搭載。「360°SoundscapePro」システムと称して、より立体感と空間表現力に優れたサウンドが楽しめるようです。
なお、HZ2000で採用していた、フルデジタルアンプのJENO Engineをはじめとする各種オーディオグレードパーツはJZ2000では搭載しません。
操作系では独自OSの最新版「MY HOME SCREEN 6.0」を搭載。UIをリニューアルし使い勝手を向上させたほか、Bluetooth端末の2台同時接続に対応。深夜などに2人同時にヘッドホンでテレビを楽しむといった使い方ができるようになりました。
総じて、HDMI2.1系で、PS5などの4K/120Hz出力対応のゲーム機への低遅延での対応、が改善点のメインの売りとなっています。今年はどのメーカーでも似たような対応にはなるとは思いますが。
「HZ2000」シリーズとの比較では「HCX Pro AIプロセッサー」による画質向上がどれくらいなのかが、おもな注目点でしょう。
ゲーム機でなくともHDMI2.1入力にこだわる向きにもやはり「JZ2000」が良いでしょうが、ゲームをしない、HDMI入力もそれほど使わない、つまり、テレビは録画も含めて単体利用メインというのであれば、新機能分の改善と価格上昇のバランスを見て考える必要もあるかもしれません(有機ELテレビ+Panasonic)。
追記:国内発表が4月21日にされました。
5月21日より発売。ラインナップは65型の「TH-65JZ2000」と55型の「TH-55JZ2000」の2モデル。いずれも価格はオープンで、それぞれTH-65JZ2000は税込55万円前後、TH-55JZ2000は税込39万円前後での実売が予想されます。
4Kチューナーは2機内蔵し、4K2番組同時録画に新対応。新メニュー画面とデザイン一新のBluetoothリモコンも付属。従来のビエラ音声操作に加え、新モデルではGoogle アシスタントとAmazon Alexaに対応。
上記でLG製のパネルに独自のカスタマイズを施しているという概要が出ていましたが、国内発表でより詳しい情報が出ました。
自社設計・製造の「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイ」の全構造を刷新。独自設計によりバックカバーと放熱プレートを一体化したほか、新素材を用いた独自の貼付け構造を採用。
加えてパネルチューニング時に、暗部表現のわずかな乱れも低減するという独自の調整工程を追加しており、制作現場の業務用モニターに極めて近い黒の階調表現を実現したとしています。
独自のパネル制御技術「Dot ContrastパネルコントローラーPro」も、新たにエリアごとの入力信号情報を解析するアルゴリズムを搭載。このようにディスプレイの製造から制御まで自社で行うことにより、性能を最大限に引き出し、高コントラストな映像を実現したとしています。
なお、LGから供給されるパネルについて、公的に明言している情報はなく、最新型のEVOパネルではないかという憶測がネット上で出回っていますが、確証はありません。
同時に国内発表された4K液晶モデル上位機「JX950」にも用いられる自動画質・音質調整機構「オートAI画質/音質」を新搭載、進化した信号処理技術「ヘキサクロマドライブ+」を搭載。「ヘキサクロマドライブ+」はHDR10/HDR10+コンテンツの入力時、シーンに応じてHDRトーンマッピング処理を動的に変化させる技術が追加されており、高輝度域でも色鮮やかで、階調豊かな映像を実現したとしています。