TPビジョンは、フィリップス(PHILIPS)のハイエンドイヤホン“Fidelio”(フィデリオ)シリーズ新モデルとして、「Fidelio S3」を5月28日より発売しました。税込39,600円前後での実売が予想されます。
1ダイナミック+2BAドライバーのハイブリッド構造を採用したセミオープン型イヤホン。
6mm径のダイナミックドライバーを採用。
独自形状のオーバルアコースティックチューブを採用することに加え、3サイズのComply低反発フォームのイヤーチップカバーを同梱。これにより高い密閉性を確保したとしています。
ハウジングは金属製で光沢仕上げを施し、エンボス加工されたFidelioロゴを付けており、モノとしての質感も追求しています。
MMCX端子でのリケーブルにも対応。付属ケーブルにはスマートフォンでの通話などに対応するインラインリモコンとマイクが備わっている。ケーブル長は1.3m。
再生周波数帯域は5Hz~40kHzでハイレゾ領域の再生にも対応。インピーダンスは16Ωで、感度は107dB/mW。
どこかで見たような形との指摘がありますが、ズバリ、「ONKYO E900M」(2016年に約4万円で発売。現在は生産終了)に似ています。
1ダイナミック+2BAドライバーのハイブリッド構造を採用したセミオープン型という基本構造から、独特な形状も酷似、MMCXリケーブル機構、物理スペックまで同じ。「E900M」のケーブルも独特な見た目のOFC(無酸素銅)ツイストケーブルでしたが、「Fidelio S3」もその点でも似ています。
となると、両機には何等かの関係があると考えるのが普通です。「Fidelio S3」は「ONKYO E900M」同等内容、ないし、「ONKYO E900M」をベースに開発された新モデルといったあたりでしょうか。
ONKYOのホームAV事業はシャープなどに譲渡されましたが、OEM事業は継続しますし、自社ブランドのセミカスタムIEMも継続しますから、イヤホン設計・製造の事業は継続されます。「Fidelio S3」はONKYOによるOEM品の可能性もあるということでしょうか。
「ONKYO E900M」自体は、音質評価の高かったイヤホンであり、それと同等のイヤホンを同等価格で現在発売してきたということであれば、「ONKYO E900M」の完成度が極めて高いということなのでしょうか。あるいは、イヤホン業界はこの5年で思ったより進歩していないということでしょうか。
実際、「ONKYO E900M」の内容・スペックも「Fidelio S3」のそれも、今日でも特に見劣りはしません。
ただ、5年前に比べてとくに中国メーカー製の競合機は4万円クラスでも増えていますから、このゾーンで存在感を発揮するのは大変そうです。
そもそも、これがフィリップスの開発でないというのであれば、それ自体が残念ということに感じるユーザーも少なくなさそうです。
フィリップスのイヤホン・ヘッドホンの開発体制は以前とは変わっており、かつて世界を席巻したSHE9700シリーズやX2シリーズのような名機を生み出したころとは違っています。
そういう意味ではすでにフィリップスの音は失われた可能性もあり、それでもフィリップスの新製品を買うなら、新たなフィリップスを受け入れていくことになりそうです(イヤホン+PHILIPS)。