PHILIPS(フィリップス)ブランドの有線カナル型イヤホン「PRO6305BK/98」(PRO6305)は2020年11月に発売。発売当初の実売価格は5,400円程度。2023年時点での実売価格は1,700円程度。
ダイナミック型ドライバー1基を搭載し、密閉カナル型を採用したオーソドックスな有線イヤホン。ケーブル中にはマイク付きリモコンも搭載し、スマホなどでのハンズフリー通話や各種操作が可能。
12.2mm径のダイナミック型ネオジウム・ドライバーを搭載。ハイレゾ認証を取得するハイスペックを実現(40kHzの超高域再生をクリア)。
耳にフィットする楕円形のノズルを採用しているのも特徴。付属のイヤーピース(3サイズ付属)を適度に変形させることで確実に耳にフィットし、高い遮音性を実現するとしています。小さい音量でも細部まで音楽を楽しめるとしています。
通話用マイクにはエコーキャンセレーション機能を搭載し、クリアで快適な通話が楽しめるようにしています。
再生周波数帯域が7~40000Hz、感度が109dB、インピーダンスが16Ω。ケーブル長は1.2m、入力プラグが3.5mm金メッキ。
かつて、数千円クラスの有線カナル型イヤホンのハイコスパモデル「SHE9700」(2000年代中頃)という名機を作ったフィリップス。本機も当初の価格や内容からすると「SHE9700」の系譜や延長に属するようなモデルと言えます。
「SHE9700」から時代が流れ、いまやイヤホンというと完全ワイヤレスイヤホンが花盛り。有線イヤホンというと、コスパ重視の中華イヤホンの数千円クラスか、数万円から10万円以上の高級イヤホンに注目が移っています。
一時代を作ったフィリップスは新モデルの評判もあまり聞こえず、どうしたかと思っていましたが、本機「PRO6305」はどうしてどうして、今日にも実力を発揮できる優秀機のようです。
まず、数千円クラスの大手メーカー製の有線イヤホン自体減っています。また、スマホなどとの使用に欲しい、マイク付きリモコンありの有線イヤホンも減っています。3千円以下程度でスマホで使えるオーソドックスな大手メーカー製有線イヤホンというだけでも本機の存在価値はあります。
そのうえ、高音質再生の目安となりうる「ハイレゾ対応認証」もあり、ハイレゾ音源の超高域データをスポイルしないで再生したい向きにも適しています(SHE9700はハイレゾ非対応でした。またハイレゾ対応となったシリーズ機SHE9730は販売終了しています)。
大手メーカー製の有線イヤホン・マイク付きリモコンあり・ハイレゾ対応、この3つがそろって、2023年時点での実売価格は何と1,700円程度。これは安いと言わざるを得ません。中華メーカーならマイク付きで40kHz再生クリアの同じくらいの価格のモデルがあるかもしれませんが、そのクラスだと正式な「ハイレゾ認証」は取っていないのが普通なので、メーカーの信頼性やアフターサービスなども考慮すると「PRO6305」は音質以前に内容面でのコスパがかなり高いと言えるでしょう。
肝心の音質についても、高い評価が大半です。
「SHE9700」でも数千円クラスのイヤホンでは難しいとされていた、クラシックなどのアコースティック音源も自然かつ好バランスで鳴らすのが評価されていました。
「PRO6305」も、音質は「SHE9700」とは異なるようですが、クラシックなどのアコースティック音源も自然かつ好バランスで鳴らせるような、いわばフィリップスのエントリーイヤホンに流れている伝統のようなものを受け継いでいるようです。
低域が「SHE9700」より強く、高域もやや強めという感想が多いようですが(ややドンシャリになった?)、単体でのバランスのよさや、ハイレゾ音源を十分楽しめる基本クオリティーなど、称賛すべき内容に仕上がっているようです。メーカーがこだわったとされるフィット性も良好のようです。
なにより、この装備、音質で1,700円というのはやはり破格でしょう。安さが売りの中華イヤホンの銅価格帯でも、フィリップスのように自然なサウンドで音楽を鳴らすのは難しいのではないでしょうか?一般的なカナル型と比べての弱点としては、いわゆるシュア掛け(コードを耳の後ろに回す)に対応していないことはあります。シュア掛け以外のイヤホンは使いたくないという方には向いていません。
どうしたことか、1,700円で売られている現在も、あまり本機がハイコスパな有線イヤホンとして評判になっていませんが、購入者のレビューのなかには、かつての「SHE9700」の人気も引き合いに出して、現在もっと話題になっていい実力だと評価している人もいます。隠れた名機になってしまうのは惜しいような気がします。