東芝の有機ELテレビのフラグシップの2020年モデルREGZA 「X9400シリーズ」は、6月19日から順次発売で、予想実売価格は65V型が約47万円(税抜)。55V型で約30万円(税抜)。48V型/77V型については2020年秋の発売予定(価格未定)となっています。
従来のフラグシップで2019年モデル・X930シリーズから新たに4桁の型番になることにも表れているように、多くの点でブラッシュアップが図られている意欲作です。
東芝 REGZA X9400シリーズとX930シリーズを比較しての違いを解説。新型を買うべきか迷っている人も、自分の気になるポイントが強化されているかを確認してみてください。
大雑把に見ても、画質を大きく左右する映像エンジンが刷新。また、サウンドシステムも刷新と、映像、音響の両面で大幅に変更が加わっており、新モデル色が強くなっています。
まず、サイズラインナップも違います。「X930シリーズ」では65V型(発売当初の税抜き実売価格は約55万円)と55V型(同・35万円)の2サイズのみでした。一方、「X9400」では、4K有機ELレグザ初のインチサイズとなる、77V型と48V型を新たに追加。それにより、4つのサイズから幅広く選べるようになりました。
48型はパネル供給メーカーであるLGからの供給が今年始まったことから追加されたもので、これまでの有機ELテレビというと55型以上の大きいサイズしかなかったため、設置場所や価格で導入を見送っていたユーザーにも注目のサイズとなるでしょう。
映像エンジンは「X930シリーズ」の「レグザエンジン Professional」から「ダブルレグザエンジン Cloud PRO」を新採用。最大の新しいポイントは、インターネットを介してクラウド上にされた画質調整パラメーターのデータベースと連携して放送番組を高画質化する「クラウドAI高画質テクノロジー」。
クラウドを活用してアップデートしながら番組ごとに高品位化できるという全く新しい発想で、成長する高画質といった点で新しく、従来とは別次元の回路と言えるでしょう。
高画質化回路についても大幅改善。従来から4K素材と地デジなどの2K放送素材は「AI超解像」で高画質化していましたが、「X9400シリーズ」では、2K放送素材については2Kコンテンツだけに動作するという追加の映像エンジンによって、3次元ノイズ低減処理やフレーム超解像処理が追加で行われるようになったことから「地デジAIビューティPRO」としてより高画質になっています。
また、従来は特に高画質化を謳っていなかったネット配信動画については「ネット動画ビューティPRO」により高画質化されます。
HDRへの対応はHDR10+ / DOLBY VISION / HDR10 / HLGと従来同様。
「X9400シリーズ」ではコンテンツの多い地デジや従来のBS/CS、さらにネット動画での高画質化が大きく向上しています。4K素材だけでなく、幅広いコンテンツを高画質で見たい方には「X930シリーズ」との差は大きそうです。
有機ELパネルに関しては、どこのメーカーでも同じでLGから調達したパネルですが、「X930シリーズ」では2019年仕様、「X9400シリーズ」では独自のガンマ特性・輝度特性を施した2020年仕様としており、新しさをアピールしています。
パネルの改良により、高コントラストのまま輝度を引き上げることができたため、従来の倍速駆動に加え、黒挿入を行なうことで残像感を低減する「インパルスモーションモード」(240Hz相当の映像)が新搭載。このインパルスモーションを活用した、「有機EL瞬速ゲームモード」も改善点。ゲームモードで一定時間操作しないと画面が暗くなる仕様も撤廃され、使い勝手も良くなっています。
残像感の少なさとゲームへの親和性の点でも「X9400シリーズ」は「X930シリーズ」を上回っていると言えそうです。
さらに、「X9400シリーズ」の65V/55V型のみ、LG製のパネルモジュールに自社開発の高放熱インナープレートやメタルバックカバーを組み合わせた独自仕様のパネルを採用。これにより、パネルの放熱性を高めることができ、いっそうの高輝度と高コントラストが得られるとしているので、この2サイズのモデルはパネル分だけでも「X930シリーズ」以上の高画質になっていると言えます。
どちらも東芝のハイクラステレビの象徴と言える、いわゆる全録機能である「タイムシフトマシン」を搭載しています。
通常視聴用と通常録画チューナーはBS/110度CSデジタル×3、BS4K/110度CS4K×2を搭載。B-CASカードは付属せず、ACASチップを内蔵。このあたりは同様の内容です。
そのほか、ネット関連機能や各種動画配信(VOD)への対応具合、DLNA関連機能、、スマートスピーカー連携、UIなども同様のようです。タイムシフトマシンはじめ機能は同様です。このあたりは完成度が高いのであえて変える必要はないということでしょう。
HDMI入力についても、どちらも7つで、HDMI入力は全て、4K/60p 4:4:4 8bitや4K/60p 4:2:2 12bitの18Gbps対応拡張フォーマットをサポート。なお、HDMI1-4は、フル12bit/オール4:4:4処理が可能です(HDMIの5~7番端子は、SoCを介して高画質処理LSIに入力されるため、構成上フル12bit処理とはならないため)。ARC(オーディオリターンチャンネル)はHDMI1のみ対応。
HDMI2.1はほぼ非対応なのも同じです(X9400はALLM(Auto Low Latency Mode)のみ対応)。HDMI2.1ほぼ非対応は仕方ないかもしれませんが、他社の2020年モデルと比べて、eARCあたりの新機能は欲しかったところです。
サウンド面の違いも大きなものです。「X930シリーズ」の「有機ELレグザオーディオシステム PRO」から変更。
「X9400シリーズ」は新開発の「レグザパワーオーディオX-PRO」を搭載。(77・65・55V型のみ)。
「X930シリーズ」の「有機ELレグザオーディオシステム PRO」も、新型対向型パッシブラジエーター方式BOXと新型フルレンジスピーカー&シルクドームツイーターによる対向型パッシブラジエーター方式2ウェイスピーカーという構成で、出力はフルレンジが15W+15W、ツイーターは若干パワーアップして10W+10Wの、総合出力50Wと薄型テレビとしてはなかなかものでした。
「レグザパワーオーディオX-PRO」ではメインスピーカー、トップツイーター、重低音バズーカユニットの3ウェイ・10スピーカーと大幅に大規模化。さらに、計142Wの大出力マルチアンプを搭載。薄型テレビの範囲を超えた高音質を志向していることがひしひしと伝わります。
加えて、77V型のみ、バズーカを2基搭載し重低音を増強、一方、48型のみ、トップツイーターと重低音バズーカ非搭載の「レグザパワーオーディオXD」(72W)となっています。
「X9400」のオーディオ新機能で注目なのは、「外部スピーカー出力端子」。テレビの内蔵アンプ・20W×2(6Ω)を使って、市販のパッシブ型スピーカーを接続して鳴らせる機能です。幅広いスピーカーをこのテレビに直結できます。他社の高級機でも見かけない非常に珍しい機能です。
自動音質補正機能の「VIRイコライザー」やデジタル音源の音質補完機能「レグザサウンドリマスター」などは2シリーズとも同様に搭載しています。
「X930シリーズ」のベゼルレスデザインを踏襲しつつも、フロントスピーカーが本体下部に収められたこともあり、スタンドベースの上に画面が乗ったようなデザインへと変わっています。なお、有機ELパネルは垂直ではなくいくらか傾斜が設けられているのは従来同様です。
さて、「X9400シリーズ」はすでに発売されているので、購入者のレビューや店頭展示などにより「X930シリーズ」と比較しての違いの感想もいろいろ出てきています。大まかな印象としては、おもに4Kにおける画質は確かに上がっているが、すでに「X930」の時点で高いレベルに達していて、それほど劇的な向上とは感じない、という感じです。一方、地デジやネット動画での画質向上、ゲームモード、インパルスモーションモードの効果についてはかなりあるという印象。
自分が多くの時間を割いて見る/楽しむコンテンツの種類によって、「X9400シリーズ」の「X930シリーズ」との差は異なるような感じです(有機ELテレビ+東芝)。