TVS REGZA(旧東芝映像ソリューション)はREGZA(レグザ)ブランドの有機ELテレビの2021年モデルで有機ELテレビの上位モデルとなる「X9400S」シリーズを発表。3サイズ展開でいずれも4月30日に発売。ラインナップと発売当初の税込み実売価格は以下の通りです。
65型「65X9400S」 52万円前後
55型「55X9400S」 36.5万円前後
48型「48X9400S」 26.5万円前後
レグザ15周年の記念モデルとしてラインナップする有機ELの新フラグシップモデル。型番のSは「Special Edition」を意味しています。従来機で2020年モデルの「X9400」シリーズの後継機でもあります。
東芝 REGZA 「X9400S」シリーズと「X9400」シリーズを比較しての違いを交えながら「X9400S」シリーズを解説。画質や音質、使い勝手を強化・改善しています。
新型を買うべきか迷っている人も、自分の気になるポイントが強化されているかを確認してみてください。
映像エンジンは同じ「ダブルレグザエンジン Cloud PRO」を搭載。
インターネットを介してクラウド上にされた画質調整パラメーターのデータベースと連携して放送番組を高画質化する「クラウドAI高画質テクノロジー」も引き続き搭載。
X9400Sシリーズで新たに追加された画質回路が、「ナチュラル美肌トーン」。
白飛びしている部分、シャドーが強く黒ずみしている部分、カラーシフトしたシーンなどを調整。リアルタイムに人肌を検出し、撮影環境の違いや視聴環境の影響による人肌部分の不自然さを自動で補正することで、人物の立体感や質感を自然なトーンにコントロールするというもの。
要は人の顔の画質がより自然に見える改善ということでしょう。
ナチュラル美肌トーンは放送、ネット動画などに関わらず、どの入力コンテンツにもそれぞれのコンテンツに応じて機能。
そのため、放送向けの高画質化機能である「地デジAIビューティPRO」が「地デジAIビューティPRO II」などに名称が変わっています。ネット動画向けは「ネット動画ビューティPRO II」となっています。
視聴環境に合わせて画質を自動調整する「おまかせAIピクチャー」も「おまかせAIピクチャー II」に改善。新たにブルーライトカット機能を搭載。夜間に浴びると睡眠の導入を妨げるとされるブルーライトを約20%削減した(X9400比)としています。
HDR規格は、HDR10、HLG、Dolby Vision、HDR10+に加え、「X9400S」シリーズではHDR10+ ADAPTIVEも新たにサポート。HDR10+ ADAPTIVEは「X9400」シリーズ発売後の新規格であり、着実に最新規格を取り入れています。
4K/3,840×2,160ドットの有機ELパネル(倍速タイプ)を搭載しているのは同じ。有機ELパネルに関しては、どこのメーカーでもLGから調達したパネルですが、「X9400シリーズ」では独自のガンマ特性・輝度特性を施し輝度を約1割向上した2020年仕様としていました。また65型と55型のモデルでは、専用設計の高放熱インナープレートを採用し、高いコントラストと高い階調性を図っていました。
このあたりの説明が「X9400S」シリーズでも同様なので、有機ELパネルに関しては「X9400シリーズ」と同じ模様です(新情報が入れば更新します)。
業界トップクラスの大出力を備えたサウンドシステム「レグザパワーオーディオPRO」は、新しいクロスオーバーフィルターを使った第2世代「レグザパワーオーディオ X-PROII」へと進化。
65、55型ではフルレンジ×4、ツイーター×2、トップツイーター×2、ウーファー×2の10スピーカーと142Wのマルチアンプという構成は踏襲。
シルクドームツイーターは新開発のもの。またダブルフルレンジスピーカーとダブルウーファーにはCNF(セルロースナノファイバー)コーティングを実施するなどユニットに手を入れています。
また、新特性フィルターが各スピーカーの音域のつながりを改善。「画面から出ているようなサウンドと重低音で、さらにナチュラルでリアルな高音質を実現」しているとしています。マルチアンプのマルチウェイ駆動はワイドレンジ化や情報量の高まりには効果的ですが、音域のつながりに違和感を感じる場合があるので、そのあたりを意識的に改善したようです。
48型は、合計出力72W・6スピーカーシステムの「レグザパワーオーディオXD」で従来と同じようです。
市販のパッシブスピーカーをテレビに接続できる「外部スピーカー出力端子」(要はプリメインアンプ機能)を引き続き搭載。20W×2(6Ω)の外部スピーカー専用高効率デジタルアンプを搭載しています。
どちらも東芝のハイクラステレビの象徴と言える、いわゆる全録機能である「タイムシフトマシン」を搭載しています。「タイムシフトマシン」では、おすすめ番組機能を「X9400S」シリーズが有機ELモデルとして初めて搭載しました。
通常視聴用と通常録画チューナーはBS/110度CSデジタル×3、BS4K/110度CS4K×2を搭載。B-CASカードは付属せず、ACASチップを内蔵。このあたりは同様の内容です。
そのほか、ネット関連機能や各種動画配信(VOD)への対応具合、DLNA関連機能、、スマートスピーカー連携、UIなども同様のようです。このあたりは完成度が高いのであえて大きく変える必要はないということでしょう。
なお、スマートスピーカー機能は引き続き搭載しますが、天気の確認や音楽再生ができるAlexa機能はX9400Sシリーズではカットされました。
リモコンはデザイン変更。視認性を向上させた新レグザリモコンとしています。ボタン形状やカーソル、文字コントラストなどを最適化。
レグザのネットサービス「みるコレ」で好評だった“おすすめ番組”(旧おすすめ録画リスト)には、リモコンの専用ボタンからダイレクトにアクセスが可能になりました。
HDMI入力についても、どちらも7つで、HDMI入力は全て、4K/60p 4:4:4 8bitや4K/60p 4:2:2 12bitの18Gbps対応拡張フォーマットをサポート。
HDMI2.1規格のサポートは引き続きALLMのみ。4K/120pやeARC、VRRなどは対応しません。
HDMI2.1へのより充実した対応は今回のモデルチェンジで望まれていた大きなポイントと思われますが、残念ながら果たされませんでした。
ライバルのソニーでは同時期にALLM、4K/120pやeARC、VRRに対応する4K液晶テレビ「A90J」「A80J」シリーズを発表しただけに、残念な気持ちがより強い人もいそうです。
なお、サイズのラインナップも違います。「X9400」シリーズは77、65、55、48の4サイズでしたが、「X9400S」シリーズでは77型が無くなっています。レグザの有機ELテレビの上位機で77型が欲しい場合は「X9400」シリーズとなります。
「X9400」シリーズの77型のみ、今後「ナチュラル美肌トーン」機能のアップデートでの付加を検討しているという情報もポイントです。
全体にマイナーチェンジ的な色合いが強く、幅広いコンテンツで作動する「ナチュラル美肌トーン」画質面での向上は確かだと思いますが、そのほか、HDMI2.1関連の変化のなさが気になるポイントでしょう。
スピーカーをかなり強化しているのが興味深く、テレビの内蔵スピーカーでより良いサウンドを楽しみたい向きには有力な選択肢になりそうです。
HDMI2.1関連についても、要はALLM、4K/120pやeARC、VRR機能が不要なら無用ですから、ユーザーの使い方にも大きく左右されます。つまりはテレビで放送波、ネット動画、UHD-BDなどを見る分にはあまり関係ないとも言えます。
テレビでコンテンツを受動的に見るのが中心で、録画もスピーカーもテレビ内蔵機能で済ませたい、という人にとっては他社の最新機よりも依然としてアドバンテージはあるでしょう。
難しいのは従来の「X9400シリーズ」との比較。画質向上と機能向上を考慮し、発売後しばらくの価格差も考えると、「X9400シリーズ」もお得というとらえ方はできるような気はします(有機ELテレビ+東芝)。