SENNHEISER HD 660S2とHD 660Sを比較しての違いは?

SENNHEISER HD 660S2 オーバーイヤー開放型有線ヘッドホン

ゼンハイザーは、オーバーイヤー開放型の有線ヘッドホン「HD 660S2」を2023年2月21日に発売します。オープン価格で、税込みの実売価格は96,800円前後。

HD 660Sの後継機で600シリーズの4モデル目

開放型ヘッドホン「HD 660S」の後継機。

HD 600から始まり、HD 650、HD 660Sと続いてきた600シリーズの4モデル目でもあります(HD 600とHD 650は価格帯が異なり、現在も発売されていることからこれら2モデルの後継という意味ではありません)。外見はHD 600以来のシリーズ共通のデザインを踏襲しており、600シリーズとしての統一性やアイデンティティーは重視されています。

「HD 660S2」は「HD 660S」の直接の後継機であり、「HD 660S」は「HD 660S2」の発売により、販売終了となります。

「HD 660S2」の内容・特徴について、「HD 660S」と比較しての違いを交えながらご紹介

「HD 660S2」の内容・特徴について、「HD 660S」と比較しての違いを交えながらご紹介します。

素材変更や設計変更により音質向上

従来モデル「HD 660S」のユーザーからフィードバックが多かったという低域の表現力について、改善、進化させたとメーカーは謳っています。さらに5kHz以上の高域やレスポンス、再現力も高めているとしています。この大きく2つの音質的ポイントの向上を図るために、材料の変更や設計の変更も行われています。

振動板にラミネート加工を施したDuo-Folテクノロジー振動板

自社開発の38mm径ドライバーを搭載。振動板にラミネート加工を施したDuo-Folテクノロジー振動板を新たに採用。ラミネートの厚みを調整することで柔軟性を高め、さらに振動板自体の形状も中心部をアーチ状、その周りを波形状にすることで柔軟性を高める工夫を施しました。

低域を強化

これにより可動域が増えたため、共振周波数を従来の110Hzから70Hzに改善。開放型ヘッドホンは共振周波数以下で低域が落ちるため、その共振周波数自体を下げることで低域を強化することに成功しています。また、インパルス・レスポンスも向上し、余分に音が尾を引くことが減少するため「ハキハキとした低域を感じられる」としています。

ボイスコイルの設計変更による高域の強化と周波数特性の改善

ボイスコイルには超軽量のアルミを採用。従来モデル「HD 660S」も同じくアルミ製のボイスコイルですが、より細いアルミを使ってボイスコイルを成形し、巻き数も増やしたことで、10%程度の軽量化、マグネットパフォーマンスの向上を実現したとしています。

コイル重量の軽量化、振動板素材の柔軟性により高域の振幅に対する追従性を高めることで、繊細な音の再現性も向上。5kHz以上の周波数帯域も全体的にスムーズなまとまりになったといい、ピークを抑えた仕上がりになったとしています。明瞭さも上がったため、長時間のリスニングでも聴き疲れしづらいサウンドになったとのこと。

実際の周波数特性も変わっています

実際の周波数特性も変わっています。低域である20~200Hz間の音圧が向上しており、超低域の20Hz帯ではじつに音圧レベルが2倍になっています。一方、5kHz以上の中高域では凸凹が少なくなり、よりスムーズなサウンドになっていることもうかがえます。

HD 660S2 | Sennheiser 日本
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インピーダンスは150Ωから300Ωに変更

再生周波数帯域は8Hz~41.5kHz、インピーダンスは300Ω、感度は104dB(1kHz、1Vrms)、THDは0.04%以下(1kHz、100dB)。

「HD 660S」の再生周波数帯域は8Hz~41kHz、感度は104dB(1kHz、1Vrms)ですが、インピーダンスは150Ωでした。

「HD 660S」は600シリーズのインピーダンスが300Ωと、廉価なポータブル機器やスマホでは鳴らしにくいスペックであったものを150Ωとすることで、幅広いポータブル機器で鳴らしやすく設計したとしていました。

「HD 660S2」では再び、600シリーズ(というか高音質を謳う本格開放型ヘッドホンはハイインピーダンスが普通)らしく300Ωに。

従来よりは安価な機器やスマホでは鳴らしにくくなっているとは思われますが、ボイスコイルの巻き数が上がっているので、それほど「HD 660S」とは差が大きくないだろうとメーカーは述べています。

外観やケーブル、4.4mmバランス接続対応など

ステンレススチールメッシュ、通気性の高いマグネットホールなど、ヌケの良い開放型サウンドを支える機能は従来同様。

外装パーツやイヤーパッドなどは現行「HD 660S」と共通。イヤーパッドはソフトパッドとベロアの組み合わせ。ヘッドバンドのロゴ表記はコンパクトになり、カラーもシルバーからブロンズになり、メーカーのデザイン上の主張は控えめになっています。

ケーブル長は「HD 660S」の300cmから短くなった180cmで、ケーブルを除いた重さは従来同様約260g。3.5mm変換アダプタ、6.3mmステレオ標準プラグ(アンバランス)、4.4mm Pentaconnプラグ(バランス)が付属。リケーブル機構やデフォルトでの4.4mmバランス対応も従来と同じ。ゼンハイザーの600シリーズは同様のリケーブル機構を採用しているので、これまで同様の社外ケーブルも使用できるものと思われます。

600シリーズとしては高額になり、見合った音質パフォーマンスに生まれ変わっているか注目

もともと設計の完成度が高く、また、シリーズの第1弾モデルであるHD 600は業務用モニターヘッドホンの定番かつ超ロングセラーということもあり、600シリーズは楕円型の黒いハウジングをはじめ、ゼンハイザーの開放型ヘッドホンの代名詞的な外見や音質的特徴(ダイナミック型ながらコンデンサー型を思わせる繊細さとダイナミック型ならではの低域表現でアコースティック音楽を高度に表現)を備えています。

一方、ゼンハイザーは近年になって高額なハイエンド志向の800シリーズも展開しており、デザインも600シリーズよりも派手(豪華)です。

「HD 660S2」もこれまでの600シリーズのイメージや800シリーズとの差別化もあり、内容的には順当な仕上がりに思えます。

ただ、価格が600シリーズとしては高い印象は受けます。なにしろ従来機の「HD 660S」が約5.5万円で発売されていたことからすると2倍とまでいかないものの、4万円の値上がりはこの価格帯では大きいと言わざるを得ません。そのほか、「HD 650」の実売価格6.5万円も大きく超えています。それでも価格が納得できるパフォーマンスがあれば問題はないとは思いますが。

音質的には低音も高音も「HD 660S」より改善したと謳っています。これにより、聴感上の周波数バランスがどうなったのかは気になるところです。

もともと、モニター向けの「HD 600」はフラットバランスかつ高解像度系でした。そこにやや低域を上げて表現もマイルドに振っていわゆるリスニング寄りにした「HD 650」という流れがありました。

「HD 660S」は「HD 650」の系統とされており、そうなると「HD 660S2」もリスニング寄りなのでしょうか。ただ、低域も高域も、より明瞭化を図っているように思われ、プロ用モニターヘッドホンに多いハイインピーダンスに戻していることなどから、「HD 660S2」は最新設計のモニター向けヘッドホンとなっている可能性もあります。発売後の購入者などのレビューに注目されます。

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