かねてよりヘッドホンやイヤホンなどのコンシューマービジネス部門を他社へ譲渡するとしていたドイツのゼンハイザー。
その譲渡先としてスイスのSonova Holding AG(ソノヴァ・Sonova)に決定したと報道されました。
2021年末までにゼンハイザーのコンシューマービジネス部門はSonovaに譲渡されます。
Sonovaは補聴器や人工内耳などの聴覚ケア事業を手がけている企業とのこと。
なお、ゼンハイザーのコンシューマー事業には、約600名の従業員がいますが、これらの従業員はSonovaへ移籍。
ゼンハイザーのヘッドホンやイヤホン、サウンドバーをSonovaがゼンハイザーのブランドを使って製造・販売することになります。
今回のコンシューマー事業の売却により、ゼンハイザーは今後、リソースをプロオーディオ、ビジネスコミュニケーション、ノイマンの各事業分野に集中させていくとしています。
ゼンハイザーのコンシューマー部門の譲渡話には驚きましたが、ついに具体的な譲渡先が決まりました。
とりあえずこれで、ゼンハイザーの現行機の製造・販売は継続されます。
ただ、これまでのような新製品の開発が今後もできるかは不透明かもしれません。
似たようなところとして、AKGがサムスン傘下になったこともあります。サムスン傘下になって以降、AKGはかつてのような革新的な新製品(傘下になる前には世界初のハイブリッド型イヤホンを開発)を開発しているとは言えません。
ゼンハイザーもかつてはOrpheus(オルフェウス)のような超ド級のヘッドホンを1990年代に開発して世界を驚かせました(600万円超)。Orpheusもただのデモンストレーションではなく、2017年には「HE-1」(600万円)として一般販売されています。
さすがにOrpheusはやりすぎかもしれませんが、HD 800やHD 820のような高級ヘッドホンは、コンシューマーだけでなく、モニターヘッドホンとしても評価されており、ゼンハイザーの高い開発力を世界に知らしめてきました。
一方で、数万円クラスで極めてバランスがよくモニターにもリスニングにも使える超ロングセラー・HD 600(1990年代中頃に開発)のような名機も忘れることはできません。
今回の譲渡により、これまでのゼンハイザーが成し遂げてきた、オーディオ名機というだけでなく、世界の音響関連の仕事における標準機的な機器の、新規の開発がうまくいかなくなることがないように祈ります。
コロナによる新しい世界の中でゼンハイザーはどうなる?
そもそもゼンハイザーのコンシューマー機が売れなくなったからこその今回の譲渡劇であり、本格的なヘッドホンやイヤホンの販売を取り巻く状況の厳しさには変わりありません。
一方で、コロナの影響による急激なイヤホン・ヘッドホンへの需要の上昇、完全ワイヤレスイヤホンをはじめとする新たな形態のイヤホン製品の需要拡大など、イヤホン・ヘッドホンをはじめとするポータブルオーディオ業界全体では需要は今後も高まりそうです。
新生ゼンハイザーがコロナによる新しい世界の中で、どんなポジションをつかんでいくでしょうか。