カナル型イヤホンの草分け的存在にして、現在も続くイヤホンブームをけん引してきたイヤホン業界の巨人・シュア(Shure)。定番のロングセラーモデルが多いのも特徴ですが、ついに、シュアのイヤホンの中核ゾーンのモデルに新製品が登場します。
シュアは有線イヤホンの新ラインとなる“AONIC”を発表。「AONIC3/4/5」3機種を、4月25日より発売します。オープン価格で、AONIC3は税抜19,800円前後、4は税抜32,800円前後、5は税抜54,800円前後での実売が予想されます。
AONICシリーズ全体の特徴とそれぞれのモデルの特徴をご紹介しながら、新モデルの魅力に迫りたいと思います。
全体としてはいわゆるインイヤーモニター型と言われるシュアのカナル型イヤホンが普及させた形状を踏襲し、耳の後ろ側にケーブルを回して装着することで、ケーブルのタッチノイズを減らせる通称「シュア掛け」や、ケーブル断線のリスクを無くするとともに、ケーブル交換による音質変化や、ケーブルアダプターを付け替えることでBluetooth対応化などを簡単に行えるMMCX端子による着脱機構を備えた、シュアがイヤホン業界に広めた特徴はこれまで通り全て備えています。
パッシブノイズ低減性能として、最大37dB騒音を遮断できるという高遮音性とそれに伴う周囲への音漏れの少なさもシュアのカナル型イヤホンの特徴であり、特筆点。新製品3モデルも同様のスペックを備えています。
そのうえで、現代のリスナーのニーズや要望を反映して各フォームファクターを作り込んだとしていて、これまで積み上げてきたノウハウを活かしつつ、さらなる高みを目指した製品群と言えそうです。
なお、3モデルとも、マイク付きリモコンが付属した長さ127cmの有線ケーブルが同梱。入力プラグはいずれもステレオミニです。
また、共通の付属品として、イヤーピースはフォームタイプ、ソフト・フレックスタイプ、イエロー・フォームタイプを同梱。キャリングケース、6.3mmアダプター、クリーニングツールなどを同梱。
「AONIC 5」のみ上記に加えて、トリプルフランジタイプ、コンプライPタイプ、音質調整用交換用ノズル、ノズル取り外しキーが同梱します。
「AONIC 3」は、シリーズ3モデルのなかではもっともリーズナブルですが、外見はこれまでのシュアのイメージからもっとも異なっていて、見た目のインパクトはもっとも大きいモデルでしょう。
というのも、「AONIC 3」のハウジングはシュア史上もっとも小さく、形状も筒のようになっています。この中にバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーのシングル構成というシンプルな内容を詰め込んでいます。
BAドライバー1基でカナル型のモニターイヤホンというと、当然、ETYMOTIC RESEARCHのER4SやER4SRを思い起しますが、本機もそれを意識したのは確かでしょうが、決して思い付きで出てきた新製品ではありません。
2000年代半ばごろにシュアが発売していたBAシングル型イヤホンの「E4」が本機のベースにあります。そのことはシュア自体も明言しています。
「E4」はチューンド・ポート・テクノロジーを採用した高解像度で超小型のBAユニットを採用し、小型のユニットながら迫力のある低域と豊かで延びのある中域が持ち味の名機でした。筐体が小型なのも特徴です。
「AONIC 3」もこの「E4」で培われた技術を基にさらにブラッシュアップされた内容となっているようです。筐体サイズは「E4」よりも明らかに小さくなっています。イヤホンに音質だけでなく、小ささや軽さを求める人に適しているでしょう。
感度(1kHz)は108dB SPL/mW、再生周波数帯域は22Hz~18.5kHz。インピーダンス(1kHz)は28Ω。
「AONIC 4」は、同社初となるハイブリッド型イヤホンであることがトピック。1DD+1BA構成を採用。ハイブリッド構成に加え、ユニークな音響経路が特徴だとしており、ダイナミックな低域とクリアな高域再生により、楽器間の自然なセパレーションと明瞭なボーカル表現を実現するとしています。
外見はこれまでのシュアのイヤホンらしいもので、内部が少し透けて見える艶消しのスケルトン仕様もポイントです。
人間工学に基づいた薄型設計で、最適化されたノズル角度により、快適かつ高いフィット感を実現するとしています。これまでのシュアよりも薄型化されているようで、その分、装着感が向上していることも期待されます。
再生周波数帯域は20Hz-19kHzで、インピーダンスは7Ω、感度は106 dB SPL/mW。
「AONIC 5」は、ウーファーに2基、トゥイーターに1基のBAドライバーを搭載する2ウェイ3BA型イヤホン。同様の構成を持ち、現在も発売されている「SE535」をベースにしているモデルです。
伸びのある高音、温かみのある中音、自然で引き締まった低音を楽しめるとしています。
「SE535」にはなかったもので、最上位モデルの「SE846」に採用されているのと同様の着脱式ノズルを搭載しているのが特徴。「バランス」「ウォーム」「ブライト」の3種類のサウンドにチューニングすることが可能となっています。
「SE846」のノズル機能に興味はあったけれども、そこまでの予算はなかった、という人にも朗報でしょう。
再生周波数帯域は18Hz-19.5kHzで、インピーダンスは36Ω、感度は117dB SPL/mW。
いずれのモデルも大変に楽しみなものばかり。発表されていきなり発売というのはちょっと唐突ですが、シュアのことですから、すぐに人気は出るでしょう。
流行のハイレゾ対応には目もくれない特性ですが、これもシュア独特の見識があるのでしょう。
3モデルのなかでは、シュア初のハイブリッド型となる「AONIC 4」がイヤホン愛好家目線ではもっとも注目できるのではないでしょうか。
なお、いまどき有線イヤホンなんて、と思う方にもシュアはMMCX端子用の完全ワイヤレスイヤホン化アダプター・RMCE-TW1を別売りで販売する予定ですので、問題ありません。RMCE-TW1は約2.5万円と少し高いですが、FiiOからUTWS1という同様のアダプターが8500円程度で発売されているので活用できます(イヤホン+Shure)。