完実電気は、同社が取り扱うアメリカ・Shureブランドのイヤホン製品の一部となる全14パッケージの値上げを2月4日に発表しました。値上げされる製品と価格は以下のとおりです。価格は全て税抜きの実売価格。
・SE112GR-A 6,100円(旧:5,480円)
・SE215-CL-A 12,600円(旧:11,800円)
・SE215-K-A 12,600円(旧:11,800円)
・SE215SPE-A 12,600円(旧:11,800円)
・SE31BABKUNI-A(AONIC 3) 21,700円(旧:19,800円)
・SE425-CL-A 31,800円(旧:28,800円)
・SE42HYBK+UNI-A(AONIC 4) 36,000円(旧:32,800円)
・SE42HYWH+UNI-A(AONIC 4) 36,000円(旧:32,800円)
・SE535-CL-A 56,800円(旧:49,800円)
・SE535LTD-A 56,800円(旧:49,800円)
・SE53BABK+UNI-A(AONIC 5) 60,300円(旧:54,800円)
・SE53BACL+UNI-A(AONIC 5) 60,300円(旧:54,800円)
・SE53BARD+UNI-A (AONIC 5) 60,300円(旧:54,800円)
・SE846-CL-A 109,700円(旧:99,800円)
メーカーは「物流コストおよび原材料の高騰により、本日より一部製品の価格改定を実施する運びとなりました」と説明しています。
シュアのイヤホンと言えば、カナル型イヤホンがイヤホンのスタンダードとなるかなり前からカナル型を中心としていたこと、カナル型特有のコードのタッチノイズを低減するためにコードを耳の後ろに回す装着法の編み出し、また、BA型ドライバーを搭載していたイヤホンがほとんどない時代から手掛けていたこと、マルチドライバーイヤホンがほとんどない時代から手掛けていたことなど、イヤホン業界における先駆的な取り組みと、それがスタンダードになる流れを作り続けてきました。まさに、イヤホン界の巨人です。
コードを耳の後ろに回す装着法が通称「シュア掛け」と呼ばれること、リケーブル端子としてMMCX規格を最初に採用し、業界標準になったことなど、イヤホン文化をけん引し、発展させてきました。
コロナ発生以降、ポータブルオーディオを含むオーディオ業界は以前よりも需要が増しており、業界全体としては上向きとなっています。
リモートワーク時やインドアでの使用が増えていることもあり、イヤホン業界も同様です。
では、イヤホン業界の代名詞的存在であるシュアはどうかと言えば、これはもしかして微妙なのかもしれません。
というのも、ここ最近のイヤホン需要の増加の多くは、Bluetoothワイヤレスタイプ、それも完全ワイヤレスタイプに移行しています。一方、シュアは音質重視の伝統的ともいえる有線イヤホンを得意としてきており、最近はBluetoothレシーバーを同梱するパッケージやBluetoothケーブルの発売で時代の流れに乗ろうとしているようですが、正直、Bluetoothイヤホンでのシュアというイメージは世間には浸透していないように思えます。つまり、良くも悪くもシュアは高音質志向の有線イヤホンのメーカーというイメージでしょうか。
シュアも完全ワイヤレスイヤホンの流れにも乗ろうとして、有線イヤホンの名機「SE215」のMMCX端子に完全ワイヤレスタイプのBluetoothレシーバーをセットにした「AONIC 215」を発売。しかし、完全ワイヤレスイヤホンにしては大きくなることと、発売当初に製品に不具合があり、いったん販売停止、回収等のゴタゴタがあり、シュア初の完全ワイヤレスイヤホンのスタートはあまりうまくいきませんでした。
シュアが得意とする高音質な有線カナル型イヤホンについても、昨今は、ハイコスパを武器にした中華イヤホンの数々にその存在感が薄れているようにも見えます。
一方で、カナル型有線イヤホンの定番と言えばシュアというバリューやイメージも維持されているようで、既存の有線イヤホンの評価や販売は堅調なようです。ただ、コロナの影響によって、製品製造や運搬コストなどが上がった影響があるようです。
今回値上げされる有線イヤホンはいずれもシュアを代表するだけでなく、イヤホン業界を代表する名機ばかり。しかもいずれもロングセラー。一方で、新製品の「AONIC」シリーズは価格据え置き。これからはこちらを買って欲しいということでしょうか。
ダイナミック型1基のカナル型イヤホンの名機「SE215」、マルチBAイヤホン黎明期からの名機「SE535」、そして、高級イヤホンの代名詞「SE846」などなど。
とくに「SE846」は、今日のように10万円以上の高級イヤホンがほとんどない時代である2010年代はじめに登場すると、当初からその高音質ぶりでながらく高級イヤホンの基準機として君臨している歴史的名機。モデルチェンジの早い昨今にあって、約10年にわたってのロングセラーもいかに本機の完成度が高いかを示しているでしょう。
それだけに、新品だけでなく中古品の流通も多いモデルですが、今回の新製品の値上げは中古価格への影響も避けられないでしょう。
今回の値上げは残念ですが、シュアというブランドが今後も維持・発展するために必要ならばなんとか頑張って欲しいと思うところです。