中国・SMSL社のDACプリアンプ「SU-9」。国内アマゾン価格が48,600円のミドルクラスモデルです。
「SU-9」は従来機「SU-8」(国内アマゾン価格2.7万円)の上位機として登場したモデルで、「SU-8」に比べていくつかの向上点、追加点があります。
まず、使用しているDACチップが違います。「SU-8」はESSテクノロジー製の「ES9038Q2M」を2基使用していますが、「SU-9」では同じESS製の「ES9038Pro」と、チップのグレードが上がっています。「ES9038Pro」は2016年に発表されたESSのフラグシップDACチップであり、2021年現在でも高性能と言えるチップです。
DACの音はチップだけでは決まらないとはいえ、一般的にはチップのグレード差に伴い、それなりに音の違いがあるのが普通ですので、両機の場合もDACチップの違いによる音の差は間違いなくあるでしょう。
このDACチップの違いにより、「SU-9」ではDACチップ内蔵の7つのデジタルフィルターを切替えての音質の違いを楽しめるようになりました。一方、「SU-8」ではデジタルフィルター切替え機能は搭載しないものの、DACチップに内蔵されているDSPを活用して、9種類のサウンドカラー設定が可能です。
基本的な機能は両機共通で、USB入力対応(そのほか光・同軸対応)のDAC/プリアンプで、アナログ出力はRCAに加えてXLRバランスを装備。ヘッドホン端子は備えていません。ボリュームコントロールに対応するリモコンも付属しています。
USBデジタル入力でデコードできるデジタル信号のスペックも基本的にはDSD512 PCM768kHz / 32Bit までと十分。
「SU-9」ではさらに、USBデジタル入力でのMQA信号のフルデコード機能が追加。また、新たにBluetoothワイヤレスでのデジタル入力にも対応。しかもハイレゾ相当伝送対応のコーデックに豊富に対応、aptX系ではaptX HD対応、おなじみのLDAC、さらに、HiByが開発したUATにも対応しています。高音質なBluetoothレシーバーとしても大いに活躍できます。
見た目というか、使用感に関わるフロントパネルのディスプレイも「SU-9」では1.9インチTFT LCDカラーディスプレイを搭載。「SU-8」では必要最小限程度の表示窓でしたので、大幅に視認性がアップしています。
そのほか、デジタルオーディオ機器としては重要な、デジタル回路周辺やアナログ回路周り、電源部など、「SU-8」との価格差に見合うだけのグレードアップが図られています。
例えば、ジッターを検出不可レベルまで低減するデジタルPLLジッター低減システム、最適化されたクロック処理回路、および1uVrmsの超低ノイズを持つES9311電圧レギュレーターなどが挙げられます。
「SU-9」の日本語レビューは、国内アマゾンの販売ページにいくつもあり、それぞれ詳しいものが多く、十分に参考になります。
本機単体の音質としては価格を考えると非常に高音質、というのがレビューの傾向です。
加えて、「SU-8」にはない機能を使いこなしているユーザーにとっては、これらの新機能を高評価している向きも多いです。
特に、MQAデコード機能によるMQA再生の高音質ぶりに驚ているユーザーも多く、本機をMQA再生機として使うのも価値が大きいようです。
Bluetoohレシーバー機能については、あまりBluetoothを高音質再生の手段として使う人が少ないためか、それほど重視はされていないようです。
「SU-8」との比較では、「SU-8」自体も、一般的な観点では十分に高音質という評価もなされており、「SU-9」のクラスの価格まで使うのか、という問題もありましょう。DAC/プリアンプとしての基本機能も同様ですし。
わざわざ「SU-9」を選ぶ理由として、MQAデコードや、Bluetoohレシーバー機能も使いたいかは結構大きなポイントなのではないでしょうか?
もちろん、「SU-8」以上の高音質を楽しみたいというのは重要な理由になりますが(UAB-DAC+SMSL)。