「ultraRendu」は、SONORE(ソノーレ)による「ネットワークトランスポート」。2019年10月15日に、税抜き165,000円で発売されました。
USB-DACをネットワークオーディオ機器として使えるようにするのが「ネットワークトランスポート」。高級なUSB-DACを発売しているメーカーの中には、ネットワークオーディオプレーヤーは出していないメーカーがあります。そのメーカーがネットワークオーディオプレーヤーを出すのを待ち続けなくても、手持ちのUSB-DACをネットワークオーディオプレーヤーとして使えるようになるわけです。
また、PCとUSB-DACを直接接続する時よりも信号経路でのノイズを遮断できるメリットもあり、音質面でも優位性があります。
全体としては、ネットワークオーディオにおける快適な再生に慣れてしまったユーザーが、その利便性のまま、好みのUSB-DACで自在な音楽再生を楽しむ、というのが本機の大きな存在意義でしょう。
上級クラスのUSB-DACユーザーを中心に、需要はそこそこあると思うのですが、なぜか、同様の製品はあまり見かけません。国内ではオラソニックのNANO-NP1がネットワーク入力を光/同軸デジタル出力に変換して使えるようにする「ネットワークトランスポート」を出していますが、USB出力はないので、本機とは異なります。
アイ・オー・データ機器のネットワークオーディオサーバー用NAS「Soundgenic」がずばり、USB-DACをネットワークオーディオプレーヤー化できる国内メーカー製のツールでは代表的です。ほかにもいくつかありますが、あまり知られていないことがこのジャンルの現状を物語っています。
どうやら、ネットワークオーディオに関わるさまざまな技術的、機能的な困難があることや、それを克服するためのコストが見合うか難しい面もあるなどにより、オーディオメーカーが簡単には手を出さないのかもしれません。
なお、Raspberry PiとVolumioの組み合わせで、安価かつシンプルにUSB-DACをネットワークオーディオプレーヤー化できます。いろいろと自分で構築する手間と知識が必要になりますが。
SONOREは数年前に設立された若い会社ながら、コンピューターオーディオ分野に格段の強みを持つハイテク企業という情報があり、このことが「ultraRendu」の開発を可能にしている背景のようです。
実際、海外ではすでに「ultraRendu」は好評なようで、いわば、満を持して日本に上陸したものです。
「ultraRendu」は、Roon Readyをはじめ、MPD/DLNA、DLNA(OpenHome)、Squeezelite、Spotify Connect、SongCast、HQ Playerなど多くのネットワークオーディオ形式に対応しています。
Roon公式認証済、Audirvana Plus対応、TidalとQobuzのロスレス・ストリーミングをOpenHome出力モードでサポートなど、最新のネットワークオーディオプレーヤーで欲しい機能を高い安定性で提供しているのが本機が海外で人気の秘密でしょう。
サンプリングレートは最大でPCM 768kHz、DSD 512をサポートしています。
なお、日本向けの正規品では、iFi audioのローノイズ電源アダプター「iPower 9V(販売価格6,800円・税抜)」が同梱されていて、ユーザーが工夫しなくても低ノイズで良質な電源環境で使えるように配慮されています。
本機がおすすめのユーザーは、たとえば、国内メーカーではアキュフェーズあたりのUSB-DAC付きの高級単体DACやSACDプレーヤー、ラックスマンのSACDプレーヤーなどのユーザーが、DACの性能・音質を活かしたまま、ネットワークオーディオ化したい人でしょう。この2メーカーはDACの音質に定評がありながら、ネットワークオーディオプレーヤーをなかなか出さないからです。
ネット上を見てみると、実際にアキュフェーズの単体DAC・DC-950と組み合わせて使っているという人がいました。
USB入力付きの高音質SACDプレーヤーでは、最近のソウルノートのフラグシップ機や、ディスクリートDACを搭載しているマランツの高級機などに使うのも面白そうです。
国内メーカーのネットワークオーディオプレーヤー(内蔵型のCDプレーヤーなどの複合機も含む)のなかには、動作がうまくいかない、対応しないソフトがあるなども少なくないようで、そういったメーカー機の不具合に悩まされている人で、そのプレーヤーにUSB入力がある場合にも、動作の快適化という点で「ultraRendu」が有用かもしれません(ネットワークトランスポート)。