SONY NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2 新フラグシップウォークマン
ソニーはウォークマンの最上位クラスモデルであるNW-WM1Z / NW-WM1Aを5年半ぶりにモデルチェンジ。
「NW-WM1ZM2」と「NW-WM1AM2」を3月25日に発売。税込みの実売価格は、NW-WM1ZM2が40万円前後、NW-WM1AM2が16万円前後。
両機は基本的な機能・スペックはほぼ共通。まずは共通内容をご紹介してから、両機の違いを解説します。
OSは従来のLinuxから「Android 11」を新たに採用
OSは従来のLinuxから「Android 11」を新たに採用。Google Playにも対応しており、ユーザーが好きなアプリをインストールし、様々なストリーミングサービスにも対応できるようになりました。なお、GPSを使うアプリは使用できません。SoCはARM Cortex-A53 1.80GHz i.MX 8M Plus(NW-ZX507と型番は同じですが、性能向上しているPlus版)。
サイズは両機とも141.4×75.6×20.8mm。重さはNW-WM1ZM2は約490g、WM1AM2は約299gと違いがあります。
ディスプレイは5型で、解像度は1,280×720ドット。
ストレージメモリとしてWM1ZM2は256GB、WM1AM2は128GBを内蔵。どちらも拡張用のmicroSDカードスロットを備えています。
WMポートから、USB-Cへとコネクタを変更
コネクタはWMポートから、USB-C(USB 3.2 Gen1)へと変更。データ転送速度が高速化、充電時間は4.5時間。接続の汎用性が高まっています。
「S-Master HX」搭載のヘッドホンアンプ部
ヘッドホンアンプ回路にはDACとデジタルアンプを組み合わせた「S-Master HX」(CXD3778GF)を引き続き搭載。いわゆるD級アンプで、省電力性にも優れています。金蒸着・超低位相ノイズの水晶発振器を採用。
ヘッドホン出力は、ステレオミニのアンバランスと、4.4mmのバランスを各1系統。DSDネイティブ再生はバランス接続時のみ対応。アンバランス接続時はリニアPCMへの変換再生となります。
ヘッドホンアンプ出力は
ステレオミニジャック:60mW+60mW(ハイゲイン出力時)
バランス標準ジャック:250mW+250mW(ハイゲイン出力時)
高音質を追求したこだわりの高音質パーツ
高音質を追求したこだわりの高音質パーツの使用も従来からの特徴で、今回はさらにグレードアップ。オーディオブロックの電源のバイパスコンデンサーすべてに、FTCAP3(新開発高分子コンデンサー)を使用。「耐振動性を高めることで、音質の向上を実現した」と説明。また、新開発の大容量固体高分子コンデンサーを搭載。「急激な電圧低下を防ぎ、正確な信号出力を可能にして、クリアで力強い低音域を表現する」としています。
すべての接合部に、無鉛の高音質はんだを採用。ヘッドホン出力のはんだ付け部や基板のクリームはんだなどには、金を添加した高音質はんだを使用し、「微細音の再現力や広がり、定位感を高めている」としています。
Bluetooth受信の対応コーデックは、従来モデルのSBC/aptX/aptX HD/LDACに加え、新たにAACでの受信も可能になりました。USB入力からのUSB-DAC使用も可能です。
高音質化回路「DSEE Ultimate」「DSDリマスタリングエンジン」
非ハイレゾの音楽を、ハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE Ultimate」も搭載。ビットの拡張やサンプリング周波数を高め、最大192kHz/32bit相当まで拡張。従来はソニーの音楽再生アプリ「W.music」利用時のみしか使うことができませんでしたが、W.music以外の、ストリーミングサービスのアプリも含め、全てのアプリでDSEE Ultimateが使えるようになりました。
また、イヤホンやヘッドホンの有線接続時に加え、無線接続する際も、DSEE Ultimateが使えるようになり、DSEE Ultimate処理をかけたサウンドをワイヤレスで伝送できるようにもなりました。
入力されたすべてのPCM音源を、11.2MHz相当のDSD信号に変換する「DSDリマスタリングエンジン」を搭載。有線接続でW.ミュージック再生時のみ有効で、W.ミュージック以外での再生時やBluetoothのワイヤレスリスニング時には使えません。
ロングバッテリー
充電池持続時間は最大40時間(有線接続、「W.ミュージック」使用時。FLAC 96KHz/24bit再生)。Bluetoothで、96kHz/24bitのFLACをLDACコーデックで再生する場合は18時間再生。Android OS搭載のDAPとしてはロングバッテリーとなっています。省電力なアンプである「S-Master HX」と大容量バッテリーの効果のようです。
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2の違い
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2の違い①重量
両機の違いとしては、まず、サイズは同じながら、重量が違います。サイズは両機とも141.4×75.6×20.8mm。重さはNW-WM1ZM2は約490g、WM1AM2は約299gと違いがあります。NW-WM1ZM2の約490gはDAPとしてはかなり重い部類に入ります。
この重量の差は、以下に記すような筐体素材の違いにおもに起因しています。
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2の違い②筐体素材
NW-WM1ZM2のみ、無酸素銅の金メッキシャーシを採用。総削り出し無酸素銅シャーシに、高純度(約99.7%)の金メッキを施し、音質効果と高剛性を両立。金メッキの下地には、非磁性体の三元合金めっき採用。無酸素銅を採用することで大幅な抵抗値の低減を実現。さらに、金メッキにより接触抵抗低減と酸化防止の効果もあるとしています。
背面カバーにも、NW-WM1ZM2のみ、削り出しのアルミシャーシを使用。高剛性に寄与しているほか、「透明感があり、力強い表現。音場も広く、微細音も聴こえるようになるとしています。
NW-WM1AM2のシャーシは一体型アルミ。背面にもアルミカバーを採用。
筐体素材や仕上げの違いもあり、本体カラーもNW-WM1ZM2はゴールド、NW-WM1AM2はブラックというように変えてあります。
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2の違い③内部ヘッドホンケーブル
また、NW-WM1ZM2のみ、内部のバランス出力用ヘッドホンケーブルを、従来機のNW-WM1Zで採用しているキンバーケーブルから更にグレードアップ。超ド級DAP・DMP-Z1で採用した、キンバーケーブルとの協力で開発した4芯Braid(編み)構造のヘッドホン用の太いケーブル(MUC-B20SB1と同仕様)を採用。外部ノイズを遮断し、高品位なオーディオ信号を伝達できるとしています。
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2の違いは何に影響?
先代シリーズでもZモデルとAモデルの差は、筐体素材と内部配線がおもなものでした。これらは基本的に物理スペックでは違いが出ないものの、実際の音質としてはかなりの差となることが、据え置き機はじめ、オーディオの世界では経験的に知られている要素です。なかには懐疑的な意見もある領域の内容ですが、これを良しとして購入するユーザーがいて、市場が成り立っている以上は外野はどうにもならないところでしょう。
また、筐体素材やその仕上げの違いにより、NW-WM1ZM2のほうが高級感のある外観となっています。モノとしての魅力・価値という面では間違いなくNW-WM1ZM2にアドバンテージがあります。
NW-WM1ZM2 / NW-WM1AM2の違いを考慮したうえでどう選ぶ?
両機の違いは機能・スペック面ではなく、筐体素材と内部配線、重量であり、その違いは音質差となって表れるということです。早速、多くのオーディオ系ニュースサイトでは両機の比較試聴レポートが上がってきており、おしなべてNW-WM1ZM2のほうがNW-WM1AM2よりも、音の艶、厚み、空気感(臨場感)といった、測定値では表しにくいと言われる一方、音楽鑑賞においては重要な要素と言われる部分で上回っているという印象。低域の聴感上のレンジというか、力感も上回っているようです。こうした要素が総合して、よりリアルで生音に近い感じがNW-WM1ZM2のほうがすると言えるのでしょう。
一方、NW-WM1AM2は音の情報量はじゅうぶんに豊富であり、NW-WM1ZM2に比べて、音の傾向がスッキリしていることは、必ずしも生音を前提としないPOPSなど現代的な音楽ソースとの相性ではむしろ適している感じもあるようです。重量が軽いのもポータブル機器としてはアドバンテージです。
音の面で全てにおいてNW-WM1ZM2が勝っているという単純なものではなく、ユーザーが聴く音楽ジャンルや音の好み、おもな使い方も考慮してどちらかを選ぶのが良さそうです。
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