「VPL-VW875」はソニーによる4Kプロジェクター。2021年5月8日に税込み実売約330万円で発売されました。
従来機「VPL-VW855」(2018年発売。価格は同じ)の後継機であり、「VPL-VW855」と比較して何が違うのか(良くなったのか)を解説します。
「VPL-VW855」は独自のネイティブ4Kパネル「4K SXRD」を採用したプロジェクターであり、この基本点はこれまで同様です。
新たに「ダイナミックHDRエンハンサー」を搭載することで、明部と暗部の表現力を向上させた点が「VPL-VW855」と比較しての違いとしてまず挙げられます。
ダイナミックHDRエンハンサーは、フレームごとにダイナミックレンジを調整し、明るいところは明るく輝かせ、暗部はアイリスや光源の制御を連動させ、黒をより沈みこませることにより、従来機「VPL-VW855」に比べHDRコンテンツに対して最適なコントラストを提供するという技術。
さらに「Z-Phosphor」レーザー光源を搭載するため、デュアルコントラストコントロール(ダイナミックレーザーコントロール+アドバンストアイリス3)により光源の調整とアイリス連動を進化させ、黒をより沈みこませながら明部を輝かせることを可能としたとしています。
また、HDRオート時のHDR10/HDRリファレンスモードの選択が追加され、HDRオートで自動的に1,000nit調整コンテンツ専用のHDRリファレンスモード(BVM-X300のトーンマッピングを再現するモード)が選択されるようになりました。
そのほか、SDRコンテンツの再生時と、HDRコンテンツの再生時とで、別々の画質プリセットを保持できるようになったのも違いです。従来は共通の設定値が適用されていたため、HDRで適切な設定がSDRにも適用されると映像が明るすぎる、といったことを防げます。
そのほか、「高輝度部分の色再現と階調が向上」「黒い部分も階調を保ちつつ、より深い黒を再現できるようになった」「ダイナミックコントラスト感の向上により精細感も向上した」としています。
以下、VPL-VW875の内容をご紹介。VPL-VW855と共通となります。
0.74型/4,096×2,160ドットの4K SXRDパネルとレーザー光源を搭載。フォーカス精度の高いARC-Fレンズ(VPLL-Z7013)を搭載。ARC-Fレンズは、上位機種のVW5000やかつてのフルHDフラッグシップ機「VW1100ES」などと同等のガラスレンズ18枚構成。
レンズシフトは上下各80%と左右各31%で、電動ズーム/フォーカスに対応。レンズ位置はリモコンから調整可能。
デジタル処理で解像感(MTF:空間解像度)を向上させる技術、「デジタルフォーカスオプティマイザー(DFO)」も搭載。
シネマフィルム1、シネマフィルム2、リファレンスなど、全9種類のピクチャープリセットを用意。ゲームモードは低遅延投影が可能。
4K映画やスポーツなどの動きの速い映像をくっきり、なめらかに表現する「4Kモーションフロー」を搭載。3D立体視にも対応し、「フルHD 3Dグラス・イニシアチブ」準拠の無線方式3Dを採用(メガネは別売)。
使用時間の経過により発生する色バランスのズレを、自動で初期状態に補正する「オートキャリブレーション」も備えています。
輝度は2,200ルーメンで、ダイナミックコントラストは∞:1。
HDR信号は、HDR10と、HLG(ハイブリッドログガンマ)に対応。
HDMI入力端子は2系統を搭載し、18Gbps、4K/60p信号の伝送に対応。低遅延モードも備えており、4K/HDR 60p信号の遅延は27ms(約1.7フレーム)。
外形寸法は560.0W×223.0H×510.5Dmm(レンズ含む/突起部含まず)、質量は約22kg。消費電力は490W(待機時0.4W)。動作音は約24dB。
基本的に、「ダイナミックHDRエンハンサー」の有無が両機の違いとなります。「ダイナミックHDRエンハンサー」については、LSIの変更により実現しているため、「前機種VW855については、ソフトウェアアップデートで同機能の追加はできない」とソニーは明らかにしています。
「ダイナミックHDRエンハンサー」にこだわらないのであればVPL-VW855でもよいことになりましょうが、このクラスのプロジェクターをわざわざ買うようなユーザーであれば、やはり新機能は気になるところでしょう。チューニングによるものなのか、画質もいくらか手が入って向上しているようですし。