国内オーディオメーカーのSOULNOTE(ソウルノート)は、昨年12月に発売になったSACDプレーヤー「S-3」のマイナーチェンジモデル「S-3 ver.2」を発表しました。価格は据え置きで1,280,000円(税抜)。
これだけの高級CDプレーヤーで発売1年程度でモデルチェンジするのは異例のことです。では、「S-3 ver.2」の従来「S-3」と比較しての違いはというと、マスタークロック切り換えリレーを、新たに超低損失ガラス管密封リレーへと変更したことです。
これだけです。この変更のためだけにバージョン2として型番変更のモデルチェンジを行ったのです。
その背景としては、この8月に発表になり、11月の発売が予定されているプリアンプ「P-3」の開発が関係しているのだそうです。
「P-3」は「S-3」と組み合わせて使うことを想定した高級プリアンプで、無帰還バランス回路に加えて、こだわりの固定抵抗切り替えボリュームや凝った電源部を備えるなど、このブランドらしい思い切った内容が満載のモデル。
なんでも、「P-3」の開発で採用されたトランスファー接点の高周波リレーを、「S-3」のマスタークロック切り換えリレーに入れ替えてみたら、飛躍的な音質向上があったため、急遽のモデルチェンジとなったそうです。
新製品の価格据え置きもありがたいところですが、すでに「S-3」を買ったユーザーはどうなるのでしょう。「S-3」は発売当初から各方面で高い評価を受けており、自分のシステム用に購入した評論家もいるほどの話題機。ここは高級オーディオではよくあるアップグレードサービスで対応して欲しいところですが、安心してください。しっかりと「S-3」ユーザーに対しても新しいリレーに交換するアップグレードサービスを行います。しかも、無料で行ってくれるそうです。
アップグレードを希望する「S-3」ユーザーは購入店まで問い合わせてください、となっています。
単品オーディオが売れなくなり、高額化も著しいですが、そのなかにあっても、ソウルノートは元気なメーカーのように感じます。
たしかに大手ではないのですが、大手にはできないような独創的な内容を思い切った試行錯誤から生み出し、それを工業ベースの製品として市場に送り出しているのがいいようで、今や、大手と同格かそれ以上の存在感を感じます。
「S-3」はPCM再生時のNOS(ノンオーバーサンプリング)モードが大きな特徴で、この影響が大きいのか、非常にリアルで生々しいサウンドと評され、購入者が多いようです。定評あるESS製「ES9038PRO」チップを採用していますが、このチップでNOSのサウンドを聴ける既製品という点でも注目です。
NOSは物理特性面で不利に見える面があり、現在の大手ではまず採用することはないという手法ながら、開発者が聴感で良かったから思い切って導入したという経緯(NOSを解除して普通に聴くことも可能)。
今回のマイナーチェンジも、「S-3」のNOS導入を彷彿とさせる、中小メーカーならではの思い切りの良さ、動きの早さを感じさせます。
一方、USB入力やAES/EBUデジタル入力を備え、USBはPCM 768kHz/DSD 22.6MHzまでサポート。また、外部クロック(10MHz)の接続も可能と、高級SACDプレーヤー/単体DACとして大手メーカーの同価格帯と同等の利便性も備えているので、最新のデジタルセンターとして、幅広いユーザーの使用に対応できるでしょう。あえて言えば、MQAデコードには対応していませんが、現状のハイエンドユーザーの動向を考えると、十分に納得できる合理的な選択だと思います。
「S-3」の時点でもかなり音質評価は高かったので、「S-3 ver.2」ではどのように評価されるのかは大いに注目されます(SACDプレーヤー+SOULNOTE)。