Spotifyがついにロスレスでのストリーミングサービスを開始します。
Spotifyは22日、同社の戦略や新サービスを発表するイベント「Stream On」を開催。そのなかで、CD品位のロスレスストリーミングサービス「Spotify HiFi」を新たに開始することを発表しました。おおまかな開始時期は2021年後半としています。
現時点(2/24現在)では具体的な開始時期や対象地域、月額料金などは発表されていません。
Spotifyは世界最大の音楽サブスクリプションサービスながらも、競合のサービスのなかには音質面でSptifyよりも優れるものも多くあります。
日本ではAmazonが「Amazon Music HD」を、ソニー・ミュージックエンタテインメントが「mora qualitas」を展開。この2つはハイレゾ音源まで提供。またDeezerは、CDクオリティのロスレス音楽ストリーミング「Deezer HiFi」をサービス展開しています。海外では「Tidal」や「Qobuz」がハイレゾストリーミングを提供しています。
Sptifyはこれまで、最高320kbpsと、いわゆるMP3の高音質レートのレベルがサービス上の最高音質に留まっており、ハイレゾどころかCD品位にも届いていませんでした。
今回、ついにCD品位に到達。残念ながらハイレゾまでには一気に対応はしませんでしたが、これまでのことを考えると非常に大きな変化でしょう。CD品位のストリーミングというと伝送量と音質の両立から考えて他社と同じFLAC16bit/44.1kHzでの配信と思われます。
Spotifyは扱っている曲の数、再生できる機器の数、操作系のいずれも競合他社よりも優れていると評価されている印象で、こうした総合的な完成度の高さが他の大手企業を差し置いて音楽ストリーミングサービスのトップに立っている要因でしょう。
それでもSpotifyの弱点と言えば、やはり音質であったとも言えるでしょう。ハイレゾストリーミングも当たり前の時代にCDレベルですらなく、MP3レベルというのは音質面では不十分であったと言わざるを得ません。
これにCD品位の音質が加われば、かなりのインパクトがあると思います。
気になるのは価格。現状のSpotifyで月額980円(税抜き)。基準になりそうなCD品位の「Deezer HiFi」は1980円。しかし、CD以上のハイレゾである「Amazon Music HD」「mora qualitas」も1,980円。
つまり、「Deezer HiFi」はCD品位ながら高めな状況にあるので、Spotify HiFiの価格設定は1,980円ということはなく、1,500円前後かもっと下くらいのインパクトは欲しいところです。
また、Spotifyというと、無料ユーザーでも全曲を聴けるというのも大きな特徴で、これがあるから会員数が他よりも多いという理由になっているはず。それもPCから聴く分には再生時間や曲順の制約もなく聴けるというのですから実に太っ腹。ただし、音質はSpotifyの最高音質320kbpsではなく、160kbpsに抑えられます。
Spotify HiFiについても何らかの無料聴取サービスは用意されるのでしょうか。用意されるとしても再生時間などについては使用端末によらず制約はあるものと思われます。
価格次第によっては、既存のハイレゾストリーミングサービスへの影響も考えられます。オーディオ再生の音質はMP3とCDでは音質差が多くの人で聴き分けられるものの、CDとハイレゾでは聴き分けが困難という報告も多く、現実的な高音質素材のラインとしてCD品位で十分という意見もあるからです。
Sptify HiFiとハイレゾストリーミングサービスを聴き比べても音質差が感じられないとユーザーが判断し、価格や楽曲数のメリットを考え合わせるとハイレゾサービスからSptify HiFiに乗り換えるユーザーが多く出ても不思議ではないようにも思います。その結果、既存のハイレゾストリーミングサービスの経営が悪化し、値上げや最悪、サービスの終了という事態に至ることもあるかもしれません。まだSptifyとは関係ありませんが、「mora qualitas」を運営するレーベルゲートがソニーミュージックの傘下に正式に入るというニュースもあり、何か気になるところではあります。
Sptify HiFiは、あるいは音楽ストリーミングサービスのハイレゾ化の普及にブレーキを掛ける存在になるかもしれません。
ただ、そのためにはSptify HiFiがCD品位素材を生かし切る高音質で聴けることも大事です。その前提として、他社のハイレゾやロスレスサービスが実装している専用再生ソフトでの「排他モード」の搭載は大前提です。まあ、Spotifyはこれほどの大きなサービスですし、簡単にできそうです。とはいえ、あのアマゾンですらハイレゾサービスでの排他モードの実装にはかなり手間取りましたから、サービス開始と同時に完成度の高い排他モードを用意できるかは不明です。
いずれにしても、Sptify HiFiは高音質に音楽再生を楽しみたい現代のオーディオ愛好家にとって、大いに注目すべきサービスですし、できれば実際に体験していろいろと検証してみる必要もありそうです。
一日も早いサービス開始を待っています。