エソテリックは、同社が取り扱う英国・TANNOYより、3ウェイ・フロア型スピーカー「Tannoy Platinum F6」および2ウェイ・ブックシェルフ型スピーカー「Tannoy Platinum B6」を5月1日に発売します。価格はPlatinum F6が85,000円(1本・税抜)、Platinum B6が88,000円(ペア・税抜)。
同軸ユニットとウォルナットの突板仕上げの家具調スピーカーが有名なタンノイですが、エントリークラスのスピーカーも長年手掛けてきており、「Platinum」と呼ばれるシリーズが現在それにあたります。
いずれのモデルもリアバスレフ型で、キャビネット素材には、高剛性積層合板による内部添木加工の19mm厚MDFを使用するなど、価格が安くてもタンノイならではのサウンドをハイコストパフォーマンスに実現しているハイパフォーマンスモデルを目指しています。
また、いずれもトゥイーターはシルクドームトゥイーター、ウーファー/ミッドレンジはマルチファイバーペーパーコーンを採用。さすがに、高級機のような同軸ユニットではありませんが、タンノイならではのアコースティック楽器の良好な再現性が期待できます。
フロア型モデルのPlatinum F6は、1インチ・トゥイーター、6.5インチ・ミッドレンジ、6.5インチ・ウーファーを搭載する3ウェイ構成。周波数特性は40Hz – 20kHzで、許容入力は75W(連続・RMS)/300W(最大)。クロスオーバー周波数は350Hz/2.5kHz、能率は87dB(1W/1m)で、インピーダンスは8Ω。外形寸法は300W×1,078H×235Dmm、質量は17.1kg。
ブックシェルフモデルのPlatinum B6は、1インチ・トゥイーターと6.5インチ・ウーファー搭載の2ウェイ構成。Platinum B6の周波数特性は50Hz – 20kHzで、許容入力は40W(連続・RMS)/160W(最大)。クロスオーバー周波数は2.5kHz、能率は86dB(1W/1m)で、インピーダンスは8Ω。また外形寸法は230W×360H×235Dmm、質量は6.6kg。
低音側も高音側もそれほどスペックを欲張っていない印象。高域はとくにハイレゾ対応というわけでもありません。
アンプにかかる負担としては能率は標準的ながら、インピーダンスは8Ωなので、とくにアンプをえり好みする気配もありません。このあたりはエントリーモデルということでの配慮でしょう。
一方で、許容入力はなかなか大きいので、本格的な大出力アンプで大音量再生もこなせそうです。
また、ユニットや設計の共通性からもこの2モデルは、サラウンド用に併用するのにも適しています。
それにしても見た目はシンプルというか個性が薄い印象。最近のスピーカーは個性的なデザインも売りだった大メーカーでも、ミドルクラスくらいまではシンプルなデザインも増えているのでしかたないでしょうか。
ただ、あまりにもタンノイらしい外観の雰囲気がなく、F6などはKEFのスピーカーのようにも見えます。もっともそのKEFやELACなどもみんな似たような外観に収斂してきていますが。
音質的なこともはっきりしたことは言えませんが、低価格でも厚みや艶を感じさせるタンノイのサウンドを以前は感じさせていたものですが、これも他社を含めて、全体にニュートラルで無個性化しているので、本機もいっそうニュートラルな傾向かもしれません。
「Platinum」というシリーズ名もちょっと不思議。たしかに、スピーカーに付けたくなりそうな名前ですが、スピーカー業界ではすでに、モニターオーディオのフラグシップラインに「Platinum」シリーズがあり、そちらも有名ですから、これから使うのは分がわるいのでは、と思ってしまいます。
比較的手ごろな価格帯のスピーカーにおける「タンノイらしさ」という点では、元タンノイの技術者たちが立ち上げたスピーカーブランド・FYNE AUDIOのほうがむしろ正当的に継承しているような感じです。
だからといって、FYNE AUDIOが日本で手放しで賞賛されているわけでもなく、一方、タンノイらしさは置いておいても、タンノイのペア3.5万円程度のアクティブスピーカーReveal 402が国内外でかなり高い評価を受けているのなども見ると、伝統だからよいとも無個性だから悪いとも言えないようで、なかなか難しいところです。
このように、いろいろ考えてみると、この「Platinum」シリーズも、音さえよければちゃんと人気が出そう、ということです(スピーカー+TANNOY)。