パナソニックは、Technicsブランドの完全ワイヤレスイヤホン新モデル2機種「EAH-AZ80」「EAH-AZ60M2」を2023年6月15日に発売しました。ここでは上位モデルの「EAH-AZ80」(税込み実売価格約3.6万円)の内容やレビュー・音質情報についてお届けします。
EAH-AZ80は業界初の3台マルチポイント接続が可能になりました。業界初と謳っているだけに、当然、従来機のEAH-AZ60では対応していません(2台までのマルチポイント対応)。なお、3台マルチポイント接続はLDAC接続時には使用できません。
EAH-AZ80は従来モデルEAH-AZ60では対応していなかったワイヤレス充電にも新たに対応しています。充電時の利便性がアップしています。また、充電ケースへのLEDの新搭載で本体/ケース両方の充電状況が確認できるようになりました。
一般的なイヤホンではデジタルおよびソフトでのイコライザーで音質の設計を行ないます。EAH-AZ60でもそうだったものを、EAH-AZ80ではデジタル処理だけに頼るのではなく、アナログ・機構構造なども含めて開発する事で、情報の欠落をなるべく発生させないアプローチを行って、高音質を実現させているということです。
EAH-AZ60ではサウンドモードをオフにした時でも、フラットなイコライザーブロックを信号が通っており、若干音質が劣化していた点を解消。イコライザー回路を経由しない「ダイレクトモード」を搭載したことで音質の劣化を低減することができるようになったとしています。
本体には通話、ノイキャン用に左右合計8つのマイクを搭載。パナソニックの通話技術も盛り込んだ、独自の「JustMyVoice」も進化。発話音声解析アルゴリズムを見直し、話し声以外のノイズをより低減。通話相手に届かないようにしつつ、発話中においてノイズが小さいものは、抑圧のレベルを従来より緩和。これにより“こもり感”を改善したとしています。
フィードフォワード方式とデジタル制御を、フィードバックとアナログ制御を組み合わせたデュアルハイブリッドノイズキャンセリングを引き続き採用。
精密なデジタル制御と、専用チップでの高速なアナログ制御を組み合わせ、遅延を抑えた高いANC性能を実現しているとしています。
“業界最高クラス” を謳うノイズキャンセリングは従来よりも強化され、中高域でのノイキャン性能を向上させ、人の声や日常的な騒音などのノイズを低減できるとしています。
専用アプリも進化。充電ケースが近くに無い時でも、アプリからイヤホンを制御して電源をOFFにできるほか、ガイダンス音量の調整や、モード切替時の音声ガイダンスを通知音に切り替える事も可能になりました。
Technics有線イヤホン最上位モデル「EAH-TZ700」に搭載している剛性の高いアルミニウム振動板を採用。サイズは10mm径。
リアルなボーカルと力強く正確な低音を再現する「アコースティックコントロールチャンバー」、自然な高音を再生する「ハーモナイザー」の2つの音響機構を用い、デジタル処理のみに頼らない音作りのアプローチで色付けのないきめ細やかな再生、広い音場感を実現したとしています。
筐体は独自の「コンチャフィット形状」を採用。従来の完全ワイヤレスが耳の穴に押し込んで固定させるのに対し、耳甲介(耳の下部の窪み:コンチャ)に収まる形状としたことで、耳を圧迫することなく安定かつ快適な装着感を実現したとしています。完全ワイヤレスイヤホンにおいて、高音質と装着性の両立は難しいとされていますが、「コンチャフィット形状」はその両立を実現できたと謳っています。
BluetoothのコーデックはSBC、AAC、LDACに対応。
装着センサーを供え、耳から外すと音楽再生を停止、装着すると再生という動作が可能。本体操作はタッチ式。
再生時間は7時間。充電ケース併用で約24時間。本体はIPX4の防水性能を搭載。質量は本体片側が約7g。
フィット感と高音質、遮音性を両立するという専用シリコン製イヤーピース7種を同梱。
Technics EAH-AZ80の各種レビューから読み取れる評価をまとめてみます。
高解像度な音質でありながら、低音の存在感もしっかりと感じられる。
バランスの取れたサウンドシグネチャで、各音域のバランスが良い。
高音の伸びや解像度に優れており、音楽のディテールをよく再現している。
声の表現力が豊かで、ボーカルの感情やニュアンスが伝わってくる。
オーケストラの楽器の音色やボーカルの表現にも優れている。
サウンドステージが広く、定位も良好。楽曲の奥行きを感じることができる。
クラシック音楽やジャズなどのジャンルでも高い再現性を持っている。
低音は不足気味と感じる人もいる。
破綻なくバランスも良いが、モニター的で面白味がないと評する向きもある。
音質に際立った特徴がなく、中途半端やどっちつかずという印象も。
音像の厚みが低域、高域ともに薄いと感じる人も。
これらのレビューからは、Technics EAH-AZ80が高い解像度とバランスの取れたサウンドシグネチャを持ち、バランスに優れているイヤホンと見受けられます。また、声の再現性や音楽のディテール表現においても優れており、音楽鑑賞用として幅広く活躍できそうです。あえて言えば、万能型・万人向け感が強く、面白味がないという無いものねだり的なマイナス評価を付ける人もいるようです。
ANC性能については、既存機のEAH-AZ60は確実に超えているという評価が大半です。ただし、ANC性能に定評の高いBoseには及ばず、ANC性能で競合しそうなAppleとの比較でも負けているという評価もあります。少なくとも業界最高レベルとはいかないものの、なかなか優秀というレベルのようです。やたらうるさい環境でもない限りは実用的と思われます。
外音取り込みはとても自然だと感じたという好意的なものが多いです。外音取り込みの音量調整ができればなお良かったという声はあります。外音取り込みのレベルは最高ではなく、他のもっと優れているメーカーよりは少し劣る印象という人もいました。
通話マイク性能も最上ではないが、実用上は十分なレベルと言えるようです。
3台マルチポイントについては、AirPodsとApple製品では利用可能ということで、Android端末を使っている人のほうがメリットやインパクトが大きいという評価がありました。ただ、この機能目当てで買うかというと微妙かもしれません。
装着性についても、メーカーがかなりアピールしているだけのことはあるようで、完全ワイヤレスイヤホンのなかではかなり良好という声が多かったです。ただ、個人的に合わないとか、長時間使用時はきついといった声もあり、購入前の試聴による装着感の確認は必要でしょう。その点大手メーカー品による展示品のアクセスの容易さというメリットが生きるでしょう。
コンパクトなデザインで持ち運びが便利。充電ケースがスタイリッシュで高級感があるといった外観やサイズ面での良好な評価もありました。
高音質・高機能な完全ワイヤレスイヤホンとして約3.6万円の実売価格は決して高くはないのですが、Panasonic製品の販売は、他メーカーのような割引がない状態になっているので、相対的なコストパフォーマンスが悪いと感じるという意見もありました。とくに本機はLDAC接続時に高音質を発揮するように設計されているはずですが、LDACの使えないApple製品との組み合わせでは音質面でのコスパがさらに悪いのではないかという指摘もあります。
総じて、音質面でも使い勝手面でも装着面でも、これといった弱点のない、隙の無い万能機という評価を与えられるモデルと言えそうです。そのぶん面白味がないとか、個々の要素ではどれもナンバーワンではないといったことにもなりますが、音楽鑑賞用をはじめ、ヘッドセットなど幅広い用途に適応できる汎用性の高い高音質機と言えそうです。完全ワイヤレスイヤホンとしては価格が高いだけに、予算に合うかは重要ですが。完全ワイヤレスイヤホンはこれ一台で済ませたい、という用途にも合っていそうです。
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マイク性能の高い製品を求めて先日ヨドバシカメラに行きました。その際に現在マイク性能が1番いいものはこちらの製品とSONYをオススメされました。
しかしこのサイトでは
通話マイク性能も最上ではないが、実用上は十分なレベルと言えるようです。
と記載されていますが、
このサイトにとって最上のイヤホンはどれになりますでしょうか?
普段使っているのはiPhone14 PRO MAXです。
AirPodsより良い商品がないか探しているのですが、参考までに教えてもらえませんか?
マイク性能の高い完全ワイヤレスイヤホンというテーマですと、たとえばこちらのサイトで比較されているように
https://kajetblog.com/telework-wireless-earphone/
Jabra Elite 85t>Panasonic EAH-AZ60>AirPods Pro>SONY WF-1000XM4
といった順位付けがされている実例があります。
ただ、マイクを重点的に使うシーンは個々に異なるでしょうし、一概にマイク性能の良し悪しを決められないかもしれません。一般的にビジネス用ヘッドセットに実績のあるJabraがマイク性能が他のオーディオ専業系メーカーよりも高いとは言われています。
Technics EAH-AZ80は最新モデルなのでマイク性能は高まっているとは思われます。また、SONYについては、全方位的に性能を強化した新モデル・WF-1000XM5が9/1に発売されます。すでに試聴も可能になっています。SONYの新モデルも候補にされたほうがいいかもしれません。
「AirPodsより良い商品」というのが通常のステレオ音源での再生音質ということなら、SONY WF-1000XM4でも上回っているというのが一般的な見解でしょう。そのほか、オーディオメーカー系の数万円以上の高級機ならステレオ再生音質はAirPodsより上回っているでしょう。
ただ、AirPods(第3世代)、AirPods Pro(全世代)ではApple Musicの空間オーディオ(Dolby Atmos)をより高音質で再生できるヘッドトラッキング機能も利用でき、ヘッドトラッキング機能なしでApple Musicの空間オーディオ(Dolby Atmos)を再生できるWF-1000XM4やEAH-AZ80よりも上回っているというのがオーディオニュースサイトなどでの見解です。
https://kakakumag.com/av-kaden/?id=18012
Apple Musicの空間オーディオ(Dolby Atmos)をiPhoneとの組み合わせで楽しむならAirPods(第3世代)、AirPods Pro(全世代)が最上の選択になりそうです。そのほか、一般的なステレオ音源を高音質で楽しみたいなら、AirPods以外の高音質志向の完全ワイヤレスイヤホンから選ぶのがよさそうです。
いずれにしてもマイク性能も音質も、客観的な数値化によって比較されるものではありません。ネット上の評判や著名レビュアーなどの記事を参考にするにしても、ご自身で試聴されるなどで判断されるのが良いと思います。ただ、試聴や比較が個人では難しいこともあるので、ネット上の情報を参考にされる場合は、思っているのとは違ったという結果も受け容れる心の広さは必要かもしれません。