ヤマハが小型のアクティブモニタースピーカーの新モデル「MSP3A」を2020年2月に発売。価格はオープンで、予想実売価格は一台1.6万円程度。
ヤマハのパワードモニタースピーカーの「MSP」シリーズに新たに加わるモデル。「MSP」シリーズはプロからセミプロ、一般ユーザーまで音楽制作から音楽鑑賞、ホームシアター用途まで幅広く使われるアクティブスピーカーの定番シリーズ。
「MSP3A」は既存の「MSP3」(現在の実売価格・一台1.4-5万円程度)をベースに、軽量化を図ったというモデル。小規模なスタジオやポストプロダクション、電子楽器のモニターやサラウンドシステム用に適しているとしています。
「MSP3」も小型のモニタースピーカー定番機として知られ、一台の寸法:144Wx236Hx167Dmm、質量:4.4kgと小型・軽量と言えるモデルでした。
「MSP3A」では全く同じサイズながら、1台の質量を3.6kgと大幅に軽量化。屋内での移動がよりラクになるだけでなく、屋外やモバイル使用などで本格的なモニタースピーカーを使いたい人に、従来よりも使い勝手が向上しています。
モニタースピーカーとしての内容、機能はほぼ「MSP3」同様
モニタースピーカーとしての内容、機能はほぼ「MSP3」同様。2.2cmトゥイーターと10cmウーファーを搭載する2ウェイ・バスレフ方式も同じ。入力端子はXLR/TRSフォーン端子に加えRCA入力も搭載と、プロ使用向けの基本内容をしっかりと備えています。前面にトーンコントロール機能を搭載しており、LOW、HIGHでそれぞれゲインの調整が可能なのも同じ。
外見上も音質面でも、あるいは設置面でも大きな影響が出そうな違いとして、「MSP3」のフロントバスレフから「MSP3A」ではリアバスレフに変更になっています。そのため、これまではフロントに2つの穴が開いていたデザインから、前面はスッキリとし、よりスタイリッシュなデザインになっています。
「MSP3A」のポートには独自技術「ツイステッドフレアポート」を採用。ポートの入口から出口に向かってその広がり方を変化させ、“ひねり”を加えることでノイズの原因となっていたポート両端での気流の乱れを抑え、クリアで忠実な低域再生を実現するとしています。
一般的にフロントバスレフよりもリアバスレフのほうが、背後の壁面の反射を利用して低音感を増やすことができます。一方、背後の壁と一定の距離を取って設置しないと、低音がブーミーになることがあり、やや設置面での制約やテクニックを要する点は出てくるかもしれません。
多少違う点もあります。内蔵アンプの出力が「MSP3」は一台20W(定格最大出力@1kHz)から、「MSP3A」では22W(同条件)にアップ。消費電力については「MSP3」の一台20Wに対して、「MSP3A」では30Wに結構アップ。アンプ出力アップの影響か、最大音圧レベルは「MSP3」の98dB SPL(1m)に対して、「MSP3A」では99dBにアップ。「MSP3A」のほうが大きな音を出せると言えるでしょう。
クロスオーバー周波数はどちらも4.0kHzですが、再生周波数帯域は「MSP3」の65Hz~22kHzに対して「MSP3A」では67Hz~22kHzとわずかに低音再生能力が低くなっています。
S/N比はどちらも95dB。ノイズの量はスペック上は同じとなっています。
「MSP3」は防磁設計でしたが「MSP3A」では非防磁設計。ブラウン管テレビへの影響を考慮する必要があった「MSP3」発売時とは異なり、現在はその必要はない環境ですので、非防磁化は合理的。非防磁のほうが音は良いとも言われているので、この部分の影響も気になります。
サイズや形状は同じで、デザインも同じため、プロ用のモニタースピーカーとして要求される、天井吊りや壁面への設置も可能になる本体底面にM5ネジ穴(60mmピッチ)も同様に開けられています。
そのほか、各種取り付け用のアダプターも同様に使えます。
スピーカーの音質には、エンクロージャーの材質と重量も大きな要素ですので、重さが変わることで音も変わるものと思われます。
ただ、本機の場合は、より正確で精密な音質が要求されるプロ用途のパワードスピーカーであることや、MSPシリーズで統一されたサウンドへの市場からの期待・要求もあるでしょうから、シリーズとして違和感のない音には仕上げられているものと思われます。
ただ、両機のスペックにはわずかずつですが違いがあり、しかも、音の違いとして表面化してもおかしくない要素でもあります。
実際にどれほど両機の音質が違うのか、あるいは聴き比べてもほとんど違いがわからないようになっているのかは発売されてみないとわかりません。発売されたら「MSP3」を使い込んでいるユーザー、できればプロの方に聴き比べて欲しいものです。
なお、価格的には少し「MSP3A」のほうが高いように感じますが、発売後少し時期が経てば「MSP3」の実売価格と同じくらいに落ち着くのかも注目ポイントです。
・「MSP3」の音質レビューはアマゾンにもたくさん。「MSP3A」の参考になるか?
「MSP3」の代替やサラウンド用の追加として「MSP3A」が使えるものなのか、興味は尽きません(アクティブスピーカー+YAMAHA)。