ヤマハのスピーカー・NS-1classicsの内容や特徴について解説
生産終了機器情報。「NS-1classics」は、ヤマハ(YAMAHA)が1988年に一台65,000円(1988年当時の物品税込み・1989年に消費税別59,500円に改定)で発売した2ウェイ・ブックシェルフ型のパッシブスピーカーシステムです。以下に特徴をまとめます。
再現能力の高さ: 広く音楽を堪能できる再現能力をテーマに開発されたスピーカーシステムです。
低域: 16cmコーン型ウーファーを搭載し、振動板をカテナリー形状にすることで艶やかな中域再生を可能にしています。マイカを混成したポリプロピレン素材の採用により、高域まで破綻のない音質を実現しています。
高域: 3cmソフトドーム型ツィーターを搭載しており、綿を使用した振動板とフェノール樹脂を含浸させた構造により高品質な音を再生します。
磁気回路: アルニコ内磁型マグネットを採用し、漏洩磁束を抑える設計としています。AVユースにも適しています。
ツィーターレベルアッテネーター: リアバッフルに装備されたアッテネーターにより、高域を調節可能。
密閉エンクロージャー: 密閉方式を採用しており、締まりのある低音再生を実現。鏡面仕上げの樺のリアルウッド外観仕上げが施されており、美しい外観となっています。
スピーカースタンド: 別売りのスピーカースタンドが用意されていました。アフリカンパドックと鉄を使用したスタンドにより安定した設置が可能です。
以上が「NS-1classics」の内容と特徴の概要です。
ヤマハのスピーカー・NS-1classicsの仕様
仕様 | 値 |
---|---|
型式 | NS-1classics |
方式 | 2ウェイ・2スピーカー・密閉型 |
ユニット構成 | ウーファー:16cmコーン型、ツィーター:3cmソフトドーム型 |
再生周波数帯域 | 60Hz-30kHz |
能率 | 86dB/W/m |
インピーダンス | 6Ω |
最大入力 | 120W |
外形寸法 | 幅205x高さ381.5x奥行285mm |
重量 | 6.5kg |
価格 | 65,000円(1台) |
2ウェイ・ブックシェルフ型の密閉型というと、ヤマハの小型モニタースピーカーの歴史的名機・NS-10Mがあり、当時のヤマハにとっては際立ったノウハウがあるジャンルと言えるでしょう。
といっても、本機はコンシューマーの音楽鑑賞用に設計されており、モニター的な正確さというよりも、聴いていて楽しい、音楽に没頭できる音作りという方向性のようです。また、業務用モニターとは歴然と異なる美しい外観の仕上げもインテリア性も高く、モノとしての魅力も備えています。
「NS-1classics」の音質としては、広い周波数範囲で自然でクリアな音を再現すると評されています。低域から中高域までのバランスが良く、特に中域の豊かな再現性において評価が高いものです。また、エンクロージャーの密閉方式により、クリーンな低音と鮮明な音場表現を実現しているとされています。基本的にはナチュラルな音質傾向で、柔らかく聴きやすい安らぎのある方向性のようです。
一方、音の柔らかさがありつつ鮮明さも併せ持ち、アタック感や力感も表現できるのでリアル感も感じられるのは、モニタースピーカーでの経験が生きているようです。適合する音楽ジャンルは、クラシックの中編成までが得意と言われますが、モニター的な背景もあり、実際には幅広いジャンルに対応できるようです。
デザイン面では、木製のエンクロージャーや鏡面仕上げが美しく、高級感があると評されています。スタンドも別売りで用意されており、スピーカーの安定した設置に貢献しています。現在専用スタンドが容易に入手できるかは別問題ですが。
ハイレゾ音源が登場するはるか前のCD時代、昭和すら終わっていないころのスピーカーであり、各社598戦争(一本59,800円の採算度外視の物量投入型のスピーカーで各社が鎬を削っていた)時代に、まさにその価格ゾーンの製品ですが、598戦争の主流だった中型ブックシェルフの3ウェイ機で、ハイテク素材満載のメリハリサウンドという方向性とは全く異なっており、当時から異彩を放っていました。
当時も本機の音質は柔らかめのモニターサウンドということで、当時から賛否両論あったようですが、本機の音にハマれば、大変気に入るユーザーがいるタイプのサウンドのようです。
「NS-1classics」は、発売から35年以上経った現在でも、多くのオーディオファンに愛されている名機です。その音質は、当時のヤマハの技術力の高さを物語っています。
スペックは高域上限が30kHzと、意外にも今日でも通用するレベルであり、むしろ当時はなかったハイレゾ音源で本機のポテンシャルをやっと発揮できる時代になったと言えるのかもしれません。
86dBの能率も、当時の中級までのアナログアンプには荷が重いスペックでしたが、手ごろなデジタルアンプがいろいろ選べる今日では、うまく鳴らせる環境もより整ったと言えるでしょう。当時はあまり一般的ではなかったニアフィールド的な聴き方にも使えそうです。
オーディオ機器の生産コストが上がっている一方、スピーカーに関する技術はそれほど上がっていないという見方もあるなか、もし現在、本機と同様のスピーカーを製造・販売すれば当時の価格はとても無理なのは当然としても、倍の価格では済まないという見方もあります(アルニコ内磁型マグネットを使った現行スピーカーは何十万レベル)。本機を中古で何万円かで購入したとしても音の好みに合えば相当にコスパは高いとなるのではないでしょうか。
もちろん、状態の良い個体を見つけることや、場合によっては修理やメンテが必要な難しさはあるでしょうが。
NS-1classicsの中古相場は、約2万円から5万円です。状態や付属品によって価格は変動しますので、購入する際はよく確認してください。
NS-1classicsは、発売から30年以上経った今でも中古市場でも比較的流通量が多く、(修理品も含めて)状態の良いものが手頃な価格で購入することができます。
ヤマハのNS-1classicsをお探しの方は、ぜひ中古市場をチェックしてみてください。