AKMの最新DAC「AK4498+AK4191」は2チップ構成
旭化成エレクトロニクス(AKM)は、2チップ構成のオーディオDAコンバーター「AK4498+AK4191」の開発を発表しました。
デジタル信号とアナログ信号の処理をチップレベルで完全分離することで、デジタルノイズのアナログ信号への影響を最小限に抑え、聴感上のS/N感を高めるというのが、音質向上を旨とするDACチップとしての狙い。
また、2製品をチップセットとして使用することで、従来のDACと同様に使用できる従来の1チップDAC同様の使い勝手を維持しつつ、これを採用するオーディオメーカーは、回路構成を工夫することで、さらなる音質向上を行ったりすることも可能という点で音質向上面での伸びしろを高めています。
いずれにしても、音質向上と、汎用性の確保を両立しようというなかなか欲張りな考えから開発されたチップです。
AKMはこの、オーディオ用DACを2チップで構成するやり方を今後も継続するようです。
AKMは今後も2チップ構成を続ける予定。その考えられる背景は?
その要因として、AKMでは特に、本格的なオーディオ機器、とくにハイエンドクラスのデジタル機器において、最近の各社が、自社開発のディスクリートDACを採用するメーカーが増えてきていることが関係しているのかもしれません。
各社とも以前はAKMをはじめとするチップメーカーのDACを採用するのが普通で、どのメーカーのどの型番のDACを何個積んでいる、というのが製品の重要なアピールポイントになっていました。
しかし、昨今のハイレゾ音源の普及が関係しているのか、高級機を中心に国内ではマランツ、エソテリックがディスクリートDACを開発して搭載。最高級機だけでなく、ミドルレンジ機にまで広がる勢いです。
CHORD社の影響も?
英国のCHORD社は、以前からFPGAを利用した超高精度な演算回路を擁した独自のDACシステムを採用しています。CHORD社はハイエンドオーディオ愛好家向けメーカーでしたが、この数年でポータブルオーディオにも進出。数万円から20万円程度という幅広いユーザーが購入できる製品にも同社得意の独自DACシステムを搭載し、そのハイスペックと高音質ぶりで人気です。
もしかして、CHORDの人気が音の良いDACは汎用DACチップは使っていないというイメージを生み、各社もその流れに乗った可能性もあります。そんな簡単な話ではないかもしれませんが。
いずれにしても、ハイエンド級のデジタル機器用のDAチップを自信を持って開発してきたAKMとしては、各メーカーが作るディスクリートDACシステムには負けていられません。そうしたメーカーに、AKMのDACチップを採用させたいはずです。
そのための新たな作戦の一つが、今回のオーディオ用DACを2チップで構成するやり方のようです。
AK4498+AK4191のスペックと従来からの改善・有利点
ΔΣモジュレーターの「AK4191」は、デジタル処理におけるオーバーサンプリングレートを、これまでの8倍フィルタリング処理から256倍にスペックアップしたほか、デジタルフィルターの抑圧量も50dB上げ、デジタルノイズ成分も要請。サンプルレートは32〜1536kHz、 DSD1024 (44.8MHz) に対応と現代最高レベルのハイスペック。
AK4498は、VELVET SOUNDテクノロジーを採用したマルチビット・ステレオ・プレミアムDAC。同社フラッグシップDAC「AK4499」と同じ、電気的な余裕度と低域ノイズ特性を向上したオーディオ専用ICプロセスを採用。ベースは「AK4497」。
アナログ処理のみに特化することで、デジタルノイズからの影響を最大限受けない構成と、聴感上のS/N感を進化。THD+Nは-116dB、ダイナミックレンジ、S/N比は128dB。歪特性と広ダイナミックレンジで業界トップクラスを実現したとしています。
国内のハイクラス機器に積んでもらえるか?
AK4498+AK4191は、アクティブスピーカー、CD/SACDプレーヤー、ネットワークオーディオ、USB DAC、ハイエンドオーディオ機器などへの採用を見込んでいるとしています。どのメーカーの「ハイエンドオーディオ機器」に採用されるかが勝負なのでしょう。
できれば、一度ディスクリートをやったメーカーがいいのでしょう。また、ラックスマンは国内DACチップでも、ローム社を最高級SACDプレーヤー・D-10Xに採用しました。こちらも振り向かせたいところでしょうか(DAC+AKM)。
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