アユートは、Astell&KernのハイレゾDAPのプレミアムライン「A&futura」第2弾モデルとして、「A&futura SE200」を7月17日に発売します。直販価格は239,980円(税込)。カラーはMoon Silver。
「A&futura」第1弾モデル、「A&futura SE100」の上級機ないし後継機。「SE100」と比較しての違いも交えながら、「SE200」の内容や特徴をご紹介します。
「SE200」の最大の特徴はポータブルオーディオプレーヤー史上初という、2種類のDACチップを1つの筐体に搭載した「マルチDAC」プレーヤーであること。もちろん、従来モデルの「SE100」では1種類のDACチップ「ES9038PRO」を搭載していました。
「SE200」では、「誰もまだ試したことのない史上初の一台を作ろう」というコンセプトで、2種類のDACチップを搭載。
具体的なチップとしては、ESSテクノロジーの最新DAC「ES9068AS」を、左右独立で2基採用。さらに、最上位モデル「A&ultima SP2000」にも採用されている、旭化成エレクトロニクスの最上位DAC「AK4499EQ」も1基構成で搭載。
なお、ESS最新の「ES9068AS」を搭載した初のプレーヤーでもあります。
「2種類のDACを適切に実装する為、開発期間及びチューニングに通常の2倍の時間を費やした」という労作。本機よりも高価なDAPよりも開発の手間がかかっている可能性もあります。
さらに、AKのDAPとしては初めての機能となる、DAC内に搭載されているフィルターを選択することも可能。DACを選ぶだけでなく、サウンドをさらにカスタマイズできます。フィルターは「ES9068AS」では3種類、「AK4499EQ」では6種類。この点は「SE100」にはなかった音質面での機能向上です。
ノイズフロアを限りなく抑えたサウンドを実現するという独自の「レーザーグラウンドエキスパンションテクノロジー」も新搭載。
異なるDACチップの違いを活かしてサウンドに反映させる為に、1つのアンプ回路ではなく、それぞれのDACチップのために複数の独立したアンプ回路設計を採用。しかも、AKMとESS、それぞれにアンバランス接続とバランス接続、完全に分離した専用のアンプ回路設計とする徹底ぶりです。
結果、イヤホン出力は、それぞれのDACに対応した個別の端子をアンバランス/バランスごとに搭載。ステレオミニのアンバランス×2、2.5mm 4極バランス×2を備えています。それぞれの切替はイヤホン・ヘッドホンの差し替えで対応します。このようなDAC別のイヤホン端子を備えたDAPも世界初となります。
アンプ出力はアンバランス 3Vrms、バランス 6Vrms(AKM)と「SE100」のバランス 4Vrmsよりも高出力化。
「SE200」の外形寸法は約76.9W×132.2H×15.8mm、質量は約274g。「SE100」の外形寸法は75.8W×132.7H×15.3Dmm、質量は241gでした。サイズはほとんど変わらず、少しだけ重量が増えています。
ボリュームホイールに新たにLEDを搭載。赤、緑、青、紫など様々なカラーの光を表示することで再生に使用しているDACや再生中の曲のビット深度、ボリューム調節状態を表示。例えば、「ES9068AS」使用時は緑、「AK4499EQ」使用時は橙、両方を使用している時は黄色となっています。
CPUには高速信号処理を実現するOcta-Core CPUを搭載。「SE100」で同様に搭載しており、オーディオの処理性能向上、起動の高速化、UIの高速レスポンスなどといった上級DAPならではの使いやすさを実現しています。
内蔵ストレージ容量は256GBと「SE100」から倍増。microSDXCカードスロットは1基搭載。
再生フォーマットはESS系/AKM系ともにPCM 384kHz/32bit、DSD 11.2MHまで対応。MQA再生もサポート。このスペックは「SE100」同様。
連続再生時間はESSで最大約14時間、AKMで最大約10時間。「SE100」の最大11時間よりも使用DACによってはロングバッテリー化しています。USB Type-C(USB 3.0)による急速充電/高速データ転送も引き続きサポート。
ネットワークオーディオ再生機能「AK Connect」や、音楽ストリーミングサービスのアプリ等をインストールできる「Open APP Service」、動画ストリーミングサービス「V-Link」機能などに対応。BluetoothはaptX HD/aptX/SBCコーデックの伝送に対応。このあたりの機能性も「SE100」同様です。
「SE200」は驚きの内容でした。ただ、Cayin 「N6ⅱ」のような、DACとアナログ回路・ヘッドホンアンプ部を分離して、付け替えできる交換モジュール方式を採用すれば、一台のDAPで異なるDACチップのサウンドを楽しむことができます。
それでも、本機の場合は、面倒なモジュール交換なしに、2つのDACチップの音を瞬時に切り替えて楽しめるというのは間違いなく便利です。そこまでする必要があるかは置いておいても。
「SE100」は1種類のDACチップを使っているとしても(それが普通ですが)、その使っているDACチップが、ポータブル・据え置き関係なく、現在最高峰のチップとされる「ES9038PRO」を搭載していることが大きな売りでした。実際、「SE100」をこのチップを使っているから買ったという人もいるようです。
ただ、「ES9038PRO」を搭載したDAPが他にも出てきて、AKならではというか、AKだけのセールスポイントが欲しいということになったのでしょうか。DAPの新製品のサイクルも早いですし。
そんな事情があってのことかはわかりませんが、「SE200」はとにかく世界初の機構を持つ、現在唯一無二のDAPです。
DAPの価値はまずは音質だとは思いますが、操作性をはじめ、外観デザイン、さらにはブランド力など、音以外の要因で選ぶ人もいます。使っていて面白い、楽しいというメカ的な要素もあるのでしょう。最近ではハイレゾストリーミングや据え置き用途との兼用、Bluetooth規格の拡大などもあり、Android OSを組み込むDAPも増えるなど、ひたすら音がよければ良い、という時代でもないようです。
ですから、「SE200」も、さまざまな価値観やニーズによって、売れるDAPとなるのかもしれません(DAP+Astell&Kern)。