KANN ALPHAはAstell&Kernブランド初の4.4mm径バランスイヤホン端子を採用したDAP。2.5mm端子にこだわってきた同ブランドだけに、大きな方針転換となった機種です。実際、本機のあとに発売されているDAPも4.4mm径バランスイヤホン端子が搭載されています。
また、高出力/低ノイズの両立をコンセプトとして開発されているDAPがKANNシリーズの特徴で、本機はその第3弾モデルでした。
本体サイズを初代「KANN」とほぼ同サイズに収めながらも、バランス出力のHigh Gain設定時において、最大12Vrmsの超高出力化を実現しており、高出力DAPはサイズや重量が大きくなりがちなマイナス面もうまくバランスを取っています。
本体サイズは68(幅)×117(高さ)×25(奥行)mm、重量は約316g。
ESS Technology社のオーディオ用DAC「ES9068AS」を左右独立したデュアルDAC構成で搭載。最大PCM384kHz/32bit、DSD 256(11.2MHz/1bit)のネイティブ再生をサポート。MQAレンダラーも内蔵し、MQAファイルの再生にも対応。USB-DAC機能 (USB Type-C)に対応。
音声出力端子として、Astell&Kernブランドとしては初めての4.4mmバランス端子(日本ディックス社 Pentaconnコネクター)を搭載。また同時に2.5mmバランス、光デジタル出力兼用の3.5mmヘッドホン出力も搭載。
インターフェースはAndroid 9.0をベースにしたカスタムOSを採用。Open APP機能を用いた音楽ストリーミングアプリのインストールやアプリアップデートをはじめ、ネットワーク再生機能「AK Connect」、動画ストリーミング機能「V-Link」、EQシェアリング、車内での使用に適した画面レイアウトに切り替えるカーモードといった機能をサポート。音楽再生に特化したAndroid DAPとして十分な機能性を有しています。
なお、Google Playストアは入れられず、アプリも一部の物しか入らない(パソコンに繋いで「APKPURE」というサイトからダウンロードしてコピーしなければならない)ことには留意してください。
64GBの内蔵ストレージに加え最大1TBまで対応のmicroSDスロットを1基搭載。液晶サイズ4.1 型(インチ)、液晶画面解像度720×1280、TFTカラーLCD液晶ディスプレイも搭載。
同ブランド初となるBluetooth 5.0に対応。aptX HD、LDAC両方のコーデックもサポートするなど、DAPにBluetooth送信機能が求められる現状にもフィットさせています。BluetoothはLDAC/aptX HD/aptX/AAC/SBCの再生に対応。
電源回路の効率化により連続約14時間半の長時間再生が可能。大出力モデルながら長時間再生も実現しています。
発売わずか1年での生産終了に、ネット上では驚きの声が上がっています。というのも、本機については一部で15年戦えるDAPなどと表現した販売店があったにも関わらず、この短さという結果のためでした。
もっとも、最近のDAP業界は、とくに中国メーカーのDAPでは1年どころか半年単位くらいで次々に新製品が登場しており、製品サイクルが早いのは当たり前の面もあります。
この1年で急激にハイレゾ対応の音楽ストリーミング環境が変化・普及していることや、Bluetoothのハイレゾコーデック(aptX Adaptiveは48kHz/96kHz対応版に続いて96kHz/24bit版が登場したばかり)もどんどん新しくなっていることもあり、それらへの対応という意味もあります。
一方、DAPの本来的な使い方である、microSDカードに入れたハイレゾ音源を聴く、という使い方であれば、対応ファイルやスペック面では本機はとくに問題ないと思います。また、バランス接続も4.4mm/2.5mm両方備えているので、こちらも現役機として問題ない装備でしょう。
Android DAPとしては、使用できるアプリに制約が多いことや、音楽ストリーミングアプリは主要なものは使えるにしても、立ち上げるのにホーム→サービス→AmazonMusicなど各サービスを選択し、しかも、スマホに比べて立ち上がりが遅いという点はあるようです。
KANN ALPHAの生産終了が決まった時点での新品実売価格は税込み約12万円。アマゾンでの中古価格は11万円程度。今後はもっと下がっていくものとは思われます。
内蔵バッテリータイプのDAPでは、バッテリー交換が自分ではできず、メーカーに依頼するしかないこと、そのサポートがいつまで続くかわからないことがこの製品に限らず、中古DAP購入一般の懸念点となります。