CreativeのPC向けオーディオ製品「Sound Blaster」のUSB-DAC「Sound Blaster X5」が2022年12月に発売。直販価格は39,800円。
デュアルDAC仕様、XAMPヘッドホンバイアンプ×2基によるフルバランス設計で、4.4mmバランスヘッドホン端子も搭載するなど、従来のSound Blaster(X4など)とは異なり、高音質なオーディオ用USB-DAC/ヘッドホンアンプという側面が強いモデル。
DACチップにCirrus Logic「CS43198」を2基採用。PCMは32bit/384kHzまで、DSDも11.2MHzまで対応(DoPでは5.6MHzまで)。AB級動作のフルディスクリート・バイアンプ構成のバランスヘッドホン端子も搭載。ヘッドホンアンプとしては、最大600Ωまでのヘッドホンをドライブ可能(ハイゲイン時)。
また、Windows、Mac、iOS、Androidそれぞれに「Creative App」というアプリケーションが用意され、Acoustic Engineやイコライザー調整、バトルロワイアル、FPSなどのサウンドモード、Scout Modeなど、多彩な機能が備えられています。WindowsでのASIO 2.2もサポートしており、USBでの低遅延再生/録音も可能。
インターフェイスは、USB(Type-C & A)、4.4mmバランスヘッドホン出力の他に、3.5mmヘッドホン/ヘッドセット端子、3.5mmマイク入力、光デジタル/アナログRCA入出力、Bluetoothレシーバー機能(SBC)など。
USBホストオーディオポートも備えており、同社のUSBドングル型Bluetoothトランスミッター「Creative BT-W4」や「BT-W3」などを組み合わせれば、各種入力ソースを本体で対応する以外のBluetoothコーデック(LDACやaptX Adaptiveなど)で送信できます。
前面には、大型のマスターボリュームコントロール、EQボタン、ダイレクトモードのオン/オフ、ヘッドホン/スピーカー切り替えスイッチ、マイクミュート、ゲインつまみを搭載。
サイズは216×170×72mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約879g。
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ゲーム用、あるいは各種音源をPCで録音する用など、純粋なオーディオ鑑賞用のUSB-DAC/ヘッドホンアンプはこれまで本格的に作ってこなかったクリエイティブによるオーディオ鑑賞向けUSB-DAC/ヘッドホンアンプ。型番上は「X4」の上位ですが、ゲーム向けの機能と音質に偏っている「X4」とはかなり方向性が異なるようです。
そのサウンドはオーソドックスでニュートラルなもののようで、音楽鑑賞用の4万円クラスのDAC複合機として十分な音質・性能を備えているようです。製品紹介ページの出力性能測定のグラフを見ても非常にフラットで、高S/N比設計もあり、ワイドレンジでフラット、静寂性に優れた正統派のオーディオ機器となっているようです。
USB-DAC/ヘッドホンアンプとしてはFiiOのK7/K7BTあたりが価格的にも比較対象機になりますが、比較したレビュアーによると、K7/K7BT同等の品位で、十分に対抗できるという評価のようです。FiiOのほうがややソリッドで硬いという傾向があるくらいで、音の情報量やレンジ感はどちらも十分なようです。
4.4mmバランス接続対応のヘッドホンアンプであることをアピールしていますが、高能率なIEMにも、ハイインピーダンスのヘッドホンにも対応できる、懐の深いヘッドホンアンプであることもポイントです。16-150Ω対応のノーマルゲインでは高能率IEMをホワイトノイズなしで鳴らせる一方、150-600Ω対応のハイゲインモードでは数百Ωクラスの高級開放型ヘッドホン(SRH1540を大音量で鳴らせたというレビューあり)も十分な音量で鳴らせるようです。
「Sound Blaster」には実は音質志向のDAC/ヘッドホンアンプ/プリメインアンプの「X7」というモデルもありました(現在は生産終了)。おにぎりのような独特な形状も特徴でしたが、3.5mmステレオミニのみ、DSD非対応ながらヘッドホンアンプの音質に定評はありました。「X7」のヘッドホンアンプと比べている人もいましたが、同じ条件なら「X7」のほうがよいかも、という見方になるようです。「X7」がAC電源、「X5」はバスパワーという電源条件の違いも関係しているようです。ただ、DACやヘッドホンアンプとしての機能・利便性は「X5」が大きく上回ります。
「Sound Blaster」シリーズの特徴でもある、ゲームのサウンドを楽しめる機能や、音質カスタマイズ性の高さは本機でも健在。
PCとの接続時には、専用のアプリを使ってバーチャルサラウンド再生やEQ調整ができるほか、FPSゲームに適した「スカウトモード」など各種のゲームに合わせたサウンドモードで音を加工して色々楽しめます。専用ソフトによるバーチャルサラウンド再生やEQ調整というのは、オーディオ用DACでは普通は対応していないので、この機能が目当てなら本機のコスパは高いですし、ゲームのサウンドエフェクトが重要なら本機の存在は大きいでしょう。foobar2000のWASAPIでイコライザーが使えるDACも他にはないようで、ここも注目ポイントです。
マイク入力を使ったチャット機能や、マイク入力などの各種入力の音声を個別に音量調整してミックスできるミキサー機能も、音質重視型のDAC/ヘッドホンアンプでは普通は搭載されていません。動画制作/配信などに有効な機能なだけに、動画制作/配信を行っているユーザーが作業用とゲーム・音楽鑑賞用のオーディオインターフェースを1台でまかないたいなら本機は有力な選択肢になるでしょう。
USBホストオーディオポートにLDAC対応のBluetoothトランスミッター(FiiO BTA30 Pro)を接続したら本機に入力している音声をLDACで飛ばせたという報告もあります。最初からハイレゾコーデックを含むBluetooth送信に対応して欲しかったという声もありますが、今後新たなBluetoothコーデック(aptX Lossless対応のドングルなど)が出てきても柔軟に対応できるのはむしろ便利でしょう。
音質重視型のDAC/ヘッドホンアンプは回路に熱を持って本体が熱くなりやすいものですが、熱処理のノウハウもクリエイティブは定評があるだけに、本機もそれほど熱くならないという評価もポイントでしょう。
せっかくの高音質・高機能DAC/ヘッドホンアンプですが、販路は直販のみ。ほかのクリエイティブ製品のようにアマゾンなども簡単に買えたらもっと話題になるのではないかという良品なのではないでしょうか。