ディーアンドエムホールディングスは、長期欠品となっていたデノンブランドのSX11シリーズのSACDプレーヤー「DCD-SX11」とプリメインアンプ「PMA-SX11」、2500NEシリーズのプリメインアンプ「PMA-2500NE」について、生産再開が可能となったため、2023年9月末より出荷を再開すると発表しました。
あわせて、生産完了としていたSACDプレーヤー「DCD-2500NE」についても、これら3製品とともに生産・販売を再開すると発表しました。価格は次のとおりです(当初の販売価格からは値上がっています)。
DCD-SX11 440,000円
PMA-SX11 462,000円
PMA-2500NE 278,300円
DCD-2500NE 225,500円
長期欠品扱いで、部品供給などの条件が整い次第、生産再開を予告していた「DCD-SX11」「DCD-SX11」とプリメインアンプ「PMA-SX11」「PMA-SX11」「PMA-2500NE」については、生産再開のアナウンスはわかりますが、一度生産終了になったSACDプレーヤー「DCD-2500NE」(2016年に税抜き18万円で発売)が生産再開し、販売再開するのは驚きです。近年の大手オーディオメーカー品で一部の部品供給が困難になったために、その部品を替えたうえでモデル名を変更した後継機としてほとんど内容の変わらないモデルを発売することはあったと思いますが。
それだけ、デノンにとって、「DCD-2500NE」が重要なモデルということなのでしょう。
「DCD-2500NE」は2012年10月発売のSACDプレーヤー「DCD-1650RE」の後継機であり、1990年から続いた中級CDプレーヤーの代名詞的存在である「DCD-1650シリーズ」を直接受け継ぐモデルです。
SACDプレーヤーとしてはUSBや外部DAC入力などのない純粋なディスクプレーヤーで、現在のSACDプレーヤーとしては思い切って機能を絞っています。ただ、再生ディスクはCD/SACDに加えて、5.6MHz DSDや192kHz/24bit PCMのファイルを保存したデータディスク(DVD)の再生も可能。データディスクについては、DVD-R/-RWまたはDVD+R/+Rに記録した2.8/5.6MHz DSD、192kHz/24bitまでのWAV・AIFF・FLAC、96kHz/24bitまでのALAC、320kbpsまでのAAC・MP3・WMAが再生可能。ディスク再生のみとはいっても結構最新のハイレゾ再生もこなせます。
新開発ドライブメカや超低位相雑音クリスタル、音質部品など、DCD-1650RE発売後に発表された上位機「DCD-SX11」で新たに開発された要素を多数継承。
ドライブメカは、デノンが自社開発した「Advanced S.V.H. Mechanism」を搭載。伝統のS.V.H.(Suppress Vibration Hybrid)ローダーを改良したものです。
デノン独自のアナログ波形再現技術“Alphaプロセッシング”の最新バージョン(発売時)となる「Advanced AL32 Prossesing Plus」も搭載。これも伝統の回路です。
マスタークロックをDACの近傍に配置することで、ジッターの発生を抑制する「DACマスタークロックデザイン」、デジタル・アナログ独立電源トランス、剛性と振動対策を徹底するデノンの独自思想「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」など、デノンの高級CDプレーヤーで用いられてきた伝統の技術・物量も継承しています。外形寸法は434W×138H×335Dmm、質量は13.7kg。
DACチップは、バーブラウンの「PCM1795」を採用。他社ではあまり高額なCDプレーヤーやDACでは使用しない傾向があるそれほど高価ではないチップですが、デノンではAlphaプロセッシングとの相性や音質的利点があるなどから積極的に採用してきました。
たしか、このチップの供給が困難になったからとのことで最新のネットワークオーディオプレーヤー・「DNP-2000NE」(2023年6月に発売。価格は275,000円)ではESSの32bit対応DAC「ES9018K2M」を採用していました。
「DCD-2500NE」の生産終了も「PCM1795」の入手困難も理由と思っていましたが、意外にもこのチップを継続採用しての生産再開。古いチップではありますが、まとめて安定的に入手できる状況になったのでしょうか?
「DCD-2500NE」は販売当初よりも定価は上がりましたが、現在同様の設計を施すともっと高額になりそうな物量が投入されています(2020年以降、オーディオメーカー各社新製品の物量投入の度合いが落ち、価格は上がる傾向が続いています)。もともとデノンは物量の多さに定評があり、また、物量からくると思われる音質上のメリット(低音の豊かさや全体的な力感、音像の実体感など)の面で高く評価されてきました。
「DCD-2500NE」は発売当初からずっと20万円クラスのSACDプレーヤーとして、単品コンポのSACDプレーヤーのスタンダードとして高く評価されてきました。
2023年1月には「DCD-2500NE」の下位に当たる「DCD-1700NE」が税込み定価198,000円で発売されていますが、物量面では価格差以上に「DCD-2500NE」が立派な印象です。機能面も同等です。
ネットワークオーディオプレーヤー「DNP-2000NE」が275,000円で発売されたばかりで、機能性重視ならこちらも気になるところですが、物量は「DCD-2500NE」が上です。そもそもディスクプレーヤーではなく単体DACの範疇です。
いまデノンのSACDプレーヤーを20万円程度までの予算で選ぶなら、「DCD-2500NE」は注目でしょう。またいつ生産終了になるかわかりませんし、同程度の物量の後継機が(価格を上げてでも)開発されるかすらわからない状況です。迷っている方は急がれたほうがいいのではないでしょうか?