DCD-SA11はDENON(デノン)のSACDプレーヤー。35万円(税別)で2005年に発売。
生産完了したオーディオ機器をあえて紹介。現在の機器では聴けない音や使えない機能などに注目。中古購入してでも価値のある機器があるのがオーディオ業界です。
ステレオSACDの再生に対応したSACD/CDプレーヤー。2004年8月に発売された「DCD-SA1」(50万円)の下位モデル。また、2002年のCD専用機・DCD-S10ⅢLimited(25万円)の後継機。DENONのS10シリーズのあとを受けたSA11シリーズの初代モデル。
DCD-SA11は、デノンのオリジナルドライブメカ「S.V.H.ローダー」を採用。CD時代から続くS.V.H.ローダーのSACDバージョンです。このドライブメカは、SACDの高速読み取りを安定して行うために、デノンが独自に開発したものです。また、SACDの音質を最大限に引き出すために、ピックアップのレーザー出力を調整するなど、さまざまな工夫が施されています。
DCD-SA11は、高精度マスタークロックを採用しています。このクロックは、とくにSACDのDSD信号をジッターを抑えて正確に再生するために、デノンが独自に開発したものです。マスタークロックは、SACD再生において最も重要なパーツのひとつであり、DCD-SA11の高音質再生に大きく貢献しています。
DCD-SA11は、DAC(DACチップのメーカー・型番は非公表)からのバランス出力に対応しています。バランス出力は、左右の音声信号を逆位相で伝送することで、ノイズを低減する技術です。DCD-SA11は、DACからバランス出力を取り出すことが可能であり、より高音質な再生を楽しむことができます。
CD品位の音源をハイビット・ハイサンプリング化して疑似的にハイレゾPCMにアップコンバートする「Advanced AL24 Processing」を搭載しています。単に信号を変換するのではなく、高度な演算により、補完するのが特徴であり、音質的メリットも大きい回路です。
DCD-SA11は、デジタル系電源とアナログ系電源を完全分離しています。これは、デジタル回路のノイズがアナログ回路に影響するのを防ぐための対策です。DCD-SA11は、デジタル回路とアナログ回路を完全に分離することで、よりクリアで高音質な再生を実現しています。
DCD-SA11は、徹底した振動抑制構造を採用しています。これは、駆動系や電源部などから発生する振動が音質に影響するのを防ぐための対策です。DCD-SA11は、振動抑制にこだわった設計により、よりクリアで高音質な再生を実現しています。
DCD-SA11は、実績ある高音質パーツを多数採用しています。これは、音質を向上させるための重要な要素です。DCD-SA11は、高音質パーツを採用することで、より豊かで高音質な再生を実現しています。
DCD-SA11は、Pure Direct モードを搭載しています。Pure Direct モードは、音質を最優先するために、ディスプレイとデジタル出力をoffにするモードです。よりクリアで高音質な再生を楽しむことができます。
出力端子は、バランス、アンバランス、光デジタル、同軸デジタルを各1系統装備。外形寸法は434×415×138mm(幅×奥行き×高さ)。重量は19kg。
DCD-SA11の音質評価としては、音像の実体感が明瞭で、各楽器の音もしっかりと分離されている、低音域の量感や伸びも十分であり、迫力のあるサウンドを楽しめる、空間表現にも優れており、臨場感あふれる音場を再現できる、といった、当時のデノンのSACD/CDプレーヤーに共通するような傾向で高い評価を得ています。反面、最新機と比べると音の分解能や繊細さで劣るという評価も。アナログ的で柔らかい方向で、自然でリアルという見方もできます。
2023年現在のデノンは音質担当のサウンドマスターが変わるなど、技術・スペック面の向上もあり、また違う音になっているでしょうが、オーディオ機器の場合、アナログ的物量が大きく音質を左右するうえ、その部分での進化はそれほどでもないという一般論もあり、現行機の10万円台クラス機・DCD-1700NEとの比較では物量はDCD-SA11が大きく上回っており、音質も基本的(低域の力感や押し出し、楽器の質感全般など)に上回っている可能性もあります。
中古相場は、2023年11月現在、以下のとおりです。
中古美品:150,000円~200,000円
中古良品:100,000円~150,000円
中古可:50,000円~100,000円
新品価格は350,000円(税別)なので、中古で購入すれば170,000円~300,000円程度安く購入できます。
ただし、中古品を購入する際には、以下の点に注意が必要です。
傷や汚れ、故障などの状態を確認する
動作確認を必ず行う
保証がきくかどうかを確認する
状態が悪い中古品を購入すると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。また、動作確認を怠ると、故障品を購入してしまう恐れがあります。保証がきくかどうかも確認しておくと安心です。
DCD-SA11の残念な点は、後のデノンの多くのSACDプレーヤーに比べてデジタル入力が備わっていないことです。以前のモデルであるDCD-S10ⅢLimitedにはデジタル入力があったため、それが今でも使える高性能な仕様(24bit/96kHz対応)だったことから、この点は特に遺憾に思います。もしDCD-SA11にもデジタル入力があれば、中古市場でもっと人気があることでしょう。
新しいモデルは機能と音質の向上が見受けられますが、以前のS-10シリーズで注目されたコストパフォーマンスが大幅な価格上昇によって損なわれたこともあり、そのイメージは薄くなってしまったようです。実際、S-10シリーズに比べて注目度も低く、販売もあまり伸びなかったようです。
とは言っても、SACDを高品質で楽しめることは大きな魅力です。さらに、現在のSACDプレーヤーの多くはUSBなどのデジタル入力にリソースを割かれているため、SACD中心に音楽を楽しむユーザーにとって、DCD-SA11のようなプレーヤーは非常に魅力的な選択肢であるかもしれません。
2016年にリリースされたデノンのSACDプレーヤーで現行機のDCD-2500NE(2023年時点で価格が22.5万円に上昇)は、DCD-SA11と同様のSACDプレーヤー単機能のモデルです。製品クラスにおいて、DCD-2500NEは元の1650クラスより少し上という位置づけで、DCD-SA11との間に位置しています。発売から少し時間が経ちましたが、DCD-2500NEは基本的な機能やスペックにおいて、DCD-SA11に優っている部分があります(DSDディスク再生など)。一方、DCD-SA11の中古価格は10万円台前半が一般的です。したがって、これらのプレーヤー同士の音質比較は楽しみなところではあります。
さて、DCD-SA11の直接の後継機は何かというと、2015年にリリースされ、2023年でも現行のDCD-SX11(価格は36万円から44万円に上昇)が存在します。DCD-SX11はUSBを含む多くのデジタル入力を備え、機能的にはDCD-SA11を大きく上回ります。音質の面でも新しいモデルは有利な印象を受けます。特に情報量の面では大きな差があるでしょう。ただし、DCD-SX11もコロナパンデミックや世界情勢の影響で価格が大幅に上昇しており、新品の購入は難しいかもしれません。このため、使い方によっては(SACDやCDの再生を中心に行うなど)、DCD-SA11の中古品は以前よりも魅力的に映るかもしれません。
ただし、DCD-SA11のメカニズムやピックアップの劣化には注意が必要です。デノンの修理サポートはまだ十分なサポートを提供しているかもしれませんが、長い目で見ると、アキュフェーズのような長寿命を持たないかもしれませんし。