デノンのサウンドバー「DHT-S216」とヤマハのサウンドバー「YAS-109」はどちらもコンパクトな一体型モデルで、実売価格も2.2万円程度と近く、ライバル関係にあります。
この2モデルを比較しての違いを解説し、どのようなニーズにどちらがより合致するかを探ります。
それぞれのモデルについてはこちらの記事でも紹介しています。
どちらのモデルもHDMI入出力を1系統搭載し、バーチャル3Dサラウンド技術「DTS Virtual:X」に対応した一体型のコンパクトなサウンドバーです。
両機のおおまかな違いが浮かび上がる、それぞれの基本的な傾向としては、「DHT-S216」のほうが基本的な音質(とくに音楽再生時)を追求した設計であること、音質重視のためか機能性は控えめなことが特徴。
「YAS-109」はサラウンド再生に注力した設計と、音声アシスタント対応などの機能性も追求していることが特徴です。
「DHT-S216」が890(幅)×66(高さ)×120(奥行)mm、重量は3.5kg。
「YAS-109」は890(幅)×53(高さ)×131(奥行)mm、重量は3.4kg。
幅は同じで、「DHT-S216」のほうが高さがあり奥行がなく、「YAS-109」は高さがなく奥行が少しあるというところ。わずかな違いですが、設置場所や見た目の邪魔な感じなど、シビアな条件になりやすいテレビの周り(下)に置かれることが多いサウンドバーなだけに、どちらのサイズが自分の環境に合っているかはよく調べたほうがいいかもしれません。
「DHT-S216」はカスタムメイドの25mm径ツイーターと45mm×90mm径のミッドレンジドライバーに加え、エンクロージャーの底面に向けて2基の75mmサブウーハーを搭載した2.1ch構成。
「YAS-109」は25mm径ツイーターと50mm径のウーファーに加え、2基の75mmサブウーハーを搭載した2.1ch構成。
どちらも2ウェイ+サブウーファーという構成で、細身のサウンドバーながらワイドレンジ性を頑張っている点では共通しています。
スピーカーからの出音については、アンプやデジタル回路などの総合的な結果であり、なかなか簡単に比較できませんが、「DHT-S216」はデノンの単品コンポのサウンドマネージャー・山内慎一氏が、開発の初期から関与し、基本的な回路や音質を練り上げ、「ピュアでストレート」なサウンドを追求したとしています。デノンの単品コンポの評価は高く、そこでの技術を投入した「DHT-S216」は音楽再生用のスピーカーとしての能力が高いと言われています。
また、各種の音源処理回路を通さないでソースの音をそのまま再生させる「Pureモード」を「DHT-S216」は搭載しています。サウンドバーとしては異例の機能であり、「YAS-109」には搭載されていません。
サラウンド機能としては、対応しているサラウンドフォーマットはどちらもドルビーデジタル、DTS、AAC、リニアPCMで互角。ただ、「DHT-S216」はリニアPCM入力は2chまでしか対応していません。
どちらも、バーチャル3Dサラウンド技術「DTS Virtual:X」に対応。天井にスピーカー設置をせずに、高さ方向を含めたサラウンドを仮想的に再現。前方・左右・後方だけでなく、高さ方向の音までバーチャルで再現。
マルチチャンネルソースだけでなく、ステレオ音声入力時でもアップミックス機能により、バーチャル3Dサラウンドが楽しめます。
「DHT-S216」は「Movieモード」「Musicモード」「Nightモード」人の声を明瞭にする「ダイアログエンハンサー」の4つのモードを搭載。
「YAS-109」は映画、音楽、ゲーム、スポーツ、TV番組の5種類のサウンドプログラムを搭載。
どちらも似たようなものですが、ヤマハはサラウンド黎明期の1980年代からの長いノウハウの蓄積があり、一般的にサラウンド再生やモード設計のうまさはヤマハに一日の長があると言えそうです。
機能面では「YAS-109」が多機能。ネットワークオーディオプレーヤー機能と、Amazon Alexaに対応。
「YAS-109」は2.4GHz帯のWi-Fiを内蔵し、SpotifyとAmazon Musicなどの音楽配信サービスが利用可能。Spotify Connectに対応し、プレミアムとフリーの両アカウントが利用可能。ネットワーク再生の対応ファイルは、MP3/WMA/AAC/Apple Lossless/WAV/FLACで、WAV/FLACは192kHz、Apple Losslessは96kHzまで対応。つまり、音楽ストリーミングへの本体での対応とハイレゾ対応のネットワークオーディオ再生機能があります。
「YAS-109」はAmazonのAlexaにも対応。音声で音楽再生などを指示したり、天気予報などを聞く事も可能。ボリューム操作、入力切替なども音声でコントロールできます。
「YAS-109」は専用スマホアプリ「Sound Bar Remote」から、モード切り替えや音量調整などの各操作も行えます。
どちらのモデルもBluetooth受信も可能で、Bluetoothスピーカーとして使う事も可能。「DHT-S216」は対応コーデックがSBCのみですが、「YAS-109」はさらにAACにも対応しています。
「DHT-S216」はネットワークオーディオプレーヤー機能、Alexa対応、専用スマホアプリの用意のいずれもありません。
機能面では大差で「YAS-109」が優れていると言わざるを得ません。
HDMI関連ではどちらも4K/60Hzのパススルーに対応。どちらもARCに対応しますが、「DHT-S216」のみCECにも対応します。CEC対応テレビの電源オン/オフにDHT-S216を連動させたり、テレビのリモコンでDHT-S216の音量を操作したりすることができます。
HDMI関連の利便性では「DHT-S216」が優勢です。
HDMI以外の入力端子は「DHT-S216」は光デジタル1系統とアナログ1系統。「YAS-109」は光デジタル2系統でアナログはありません。
光デジタルで2系統同時につなぎたい人には「YAS-109」が有利。一方、アナログ入力は汎用性の高いアクティブスピーカーとしての用途を広げます。この点では「DHT-S216」が有利です。
機能面では「YAS-109」が有利で、サラウンド再生のうまさもヤマハが優勢のようですが、「DHT-S216」は音楽再生時の音質がこの価格帯のサウンドバーとして抜き出ているという評価が確立されており、サウンドバーに何を求めるかでどちらを選ぶかが変わってくるでしょう。
「DHT-S216」は最近(2021年夏)のサウンドバー売り上げでは価格コムで1位になるなど、昨今のユーザーがサウンドバーに求める内容が、音楽も高音質で楽しめるホームオーディオの役割も大きくなっていることをうかがわせます。以前はヤマハの「YAS-109」やその前のモデルに人気があったことからも、流れの変化を感じます。
なお、「YAS-109」はすでに生産終了であり、今後の入手性の難しさにも留意してください。