Hiby MusicはAndroid DAP 「R6 Pro II」を2023年6月30日に発売。オープン価格で、税込みの実売価格は120,000円前後。
旭化成エレクトロニクス(AKM)の新フラッグシップDAC「AK4191EQ + Dual AK4499EX」を搭載しているのが特徴。このDAC構成でこの価格帯を実現しているコストパフォーマンスの高さもポイント。
SoCは、Qualcomm Snapdragon 665。5.9型のディスプレイを搭載し、解像度2,160×1,080ドット。OSはAndroid 12をベースにしたHiByOS。Androidから音質劣化につながる要素を排除。ビットパーフェクトオーディオ、その他あらゆるオーディオ関連のシステムに最適化。HiBy独自の音質調整機能であるMSEB (MageSound 8-ball)も搭載。(一般的なイコライザーでは難しい、音の暖かさ、厚み、ボーカルの力強さ、インパルス応答の制御もできるとしています)。
外形寸法は147.45×75.2×15mm(縦×横×厚さ)で、重量は285g。
AK4499EXの8つのDAC出力レールにそれぞれ独自のI/V変換機能をもたせ、ポテンシャルを最大限に引き出したとしています。2台のAK4499EXはそれぞれデュアルモノラル出力に設定。
超低位相ノイズとジッターのために、45.1584MHzと49.152MHzのフェムト秒精密水晶発振器を搭載。
PCM 1,536kHz/32bit、DSD 1024のネイティブデコーディングが可能。MQA 16倍展開も可能。
イヤフォン出力は3.5mmアンバランスと、4.4mmバランスを装備。ラインアウト、同軸デジタル出力、USBオーディオ出力も装備。USB DAC機能も搭載。Bluetooth送受信機能も搭載。
アンプ部は、クラスAアンプ「OPQ1652」×2、NXPバイポーラトランジスタ×8で駆動。クロスオーバー歪みゼロ、高速過渡応答性を実現。さらに、クラスABアンプモードも用意。
ヘッドホンアンプ出力は
シングルエンド: 125mW
バランス:383mW
再生時間は
クラスABアンプモード
シングルエンド:約8時間
バランス:約7時間
クラスAアンプモード
シングルエンド:約6時間
バランス:約5時間
となっています。
「AK4191EQ + Dual AK4499EX」を搭載しているもっとも安いDAPということで、おもにコスパ面から注目されているモデルですが、期待に違わず、音質的なコスパの高い優秀機のようです。
HiBy R6 Pro IIの基本的な音質傾向としては、ワイドレンジでフラットな、そして情報量豊富という最新のハイレゾDAPらしい、オーソドックスな傾向のようです。メーカー独自のサウンドカラーのようなものも希薄で、いい意味で演出の少ない色付けのないサウンドのようです。
クールかウォームに関しては、ややクールという意見とややウォームという意見がありました。いずれにしろクールに過ぎず、ウォームに過ぎないニュートラルに近い傾向なのかもしれません。音の滑らかさは十分という感想があり、これはDACチップのメリットかもしれません。
各音域の出方も適切で、癖は少ないようです。低域の力感と制動の両立については高く評価している向きがあります。10万円台前半では低域の項目は上位に比べて差が出やすいだけに、本機が高い絶対能力を低域再現に有しているならば注目に値します。
定位や音場の広さ、立体感についても優れているとフジヤエービックのレビューで評価されているのも興味深いところです。これらの項目を重視するユーザーはここも注目でしょう。
基本的な音質に優れた素性のよいDAPであることは確かなようですが、演出や化粧が少ないためか、音源の録音の良し悪しには敏感という声もありました。演奏は好きでも録音のよくない音源だと録音の悪さが気になり、録音が良くても演奏が悪いと演奏の欠点をさらけ出すような厳しさにつながるかもしれません。いわゆるBGM的な聴き方は向かないかもしれません。
ヘッドホンアンプのA級とAB級の差が、あまり感じられなかったという感想がいくつか見られました。それでも、AB級のほうが音が鋭くなるという意見があります。また、イヤホンよりもヘッドホンのほうが差がわかりやすかったという意見も。聴いていて差が感じられないなら、より省電力なAB級がおすすめでしょう。A級でも本体はそれほどは熱くならないようです。
ヘッドホンアンプの性能も高く、高級開放型でも十分に鳴らす力はあるようです。ただ、イヤホンやヘッドホンによっては音が鋭くきつく感じるという感想もあり、常用するイヤホン・ヘッドホンとの相性は検討したほうがよさそうです。
例によってHiBy独自の音質調整機能MSEB (MageSound 8-ball)も有用で、一般的なDAPよりも自分好みの音質に寄せられる度合は高いようです。ただし、自身にも音に関する確固たるイメージやそこに持っていける調整力も要求されるでしょう。イコライザー類に否定的な人はMSEB機能を重視するHiByには合わないかもしれません。
使い勝手面ではAndroid DAPとしては標準的、バッテリー持ちは音質重視タイプですからそれほどでもないものの、実用範囲、各機能の安定性は不安定な場合もある、サイズ・重量は物量を考慮すると納得でき、むしろ小型・軽量なくらい、という感想が見られます。
デザインについては、珍奇で独創的なものは難しいのがDAPですが(斜めのデザインを大胆に導入しているAKは賛否両論)、本機は上下を反転しても違和感なく使えるデザインと画面の上下転回機能を導入しており、使い勝手と両立したデザイン性として高く評価している人が少なくありません。HiByのユーザーへの配慮や見識の高さをここに見る人もいるくらいのようです。
総じて、この価格帯のDAPとして、まずは音質面の満足度が高い製品であり、そのほかの機能性なども含めて総合的なコスパの高いモデルといえそうです。音だけならもっと高額でもっと高音質なモデルもありますが、本機はAKMの現行フラッグシップDACを搭載してこの価格というのも大きなポイントになっているので、DACのメーカーやグレードにこだわるユーザーにはとりわけコスパの高いモデルとなりそうです。