愛知県名古屋市にある森鉄工所(KaMS)は、スピーカーケーブルに取り付けるだけで音質が改善するというオーディオアクセサリー「Sound element」を販売しているという記事がおなじみのAVウォッチなどに取り上げられ、ネット上で話題になっています。
というのも、技術の詳細がよくわからないうえ、上位モデル(2モデル展開)の価格が30万円という高額なことも相まって、オーディオに興味のない人(や興味があるけれど、行き過ぎたオーディオアクセサリーには懐疑的な人たち?)からいろいろな意見が出ているからです。
「Sound element」は下位の「SE-H1042D」と上位の「SE-H4419R」の2ラインナップ。価格はSE-H1042Dが11万円、SE-H4419Rが30万円。
アンプとスピーカーをつなぐケーブル間に設置するだけで、スピーカーから再生されて聴こえる音がよくなる?かのような触れ込みがなされています。
メーカーの説明によると「音に広がりと奥行が生まれ、これまで意識していなかった埋もれていた音ひとつひとつが聞こえるようになり、ボーカルの息づかいや、演奏のテクニックなどを楽しむ事が可能」になるとしています。
たしかに、ダイレクトに音がよくなるとは書いてはいませんが、一般的なオーディオ再生の感覚として、より音の情報量が増えるという方向での変化をうかがわせる表現です。オーディオにおいては音の情報量が増える変化は音がよくなるイメージでとらえられます。
材料は無垢ステンレス。下請町工場として火力発電所向けの精密加工で培った技術で削り出し加工されていると謳っています。この「火力発電所」というワードが、ネット上では、いわゆる「電力会社コピペ」(発電方法でオーディオの音質が違うという内容の有名なコピペ)の内容をこのメーカーがわかっていて、少しふざけて入れているのでは、という指摘もありましたが、実際のところはどうなのでしょう。
形状はやかんのような形で、いわゆるインシュレーターとも違います。サイズは直径88×高さ54mm、1個あたり1,300gの重量。製品はすべて自社で設計・製造ということで、純日本製をアピールしています。
なんでも見た目にもこだわっているそうで、「前において人に見せたいアクセサリー」とメーカーはアピールしています。この分も付加価値になっているのでしょうか?
詳しい仕組みはよくわかりませんが、アンプとスピーカーをつなぐケーブル間にこの製品を接続すると、特許出願中の技術によってパワーアンプから送られてくる波形のノイズが除去され、上記のような「音質変化」が起こるような感じです。
気になる上位と下位の違いについては、「SE-H1042D」はスピーカーケーブルの+極性、-極性をひとつのボディで中継するのに対し、「SE-H4419R」は+極性、-極性ごとに異なるボディを使用するという仕組みの違いはあるのだそうです。上位の「SE-H4419R」では極性を分けることで干渉が減り、解像度が向上するとしています。
ネットでの閲覧者がもともと多いAVウォッチでの記事であることに加え、Yahoo!のニュースにも取り上げられているため、非常に多くの人の目についたようです。ツイッターにはこの記事に対する感想がかなりたくさん上がっており、多くはいわゆるオーディオオカルト的な冷めた見方が大勢です。こういうオーディオアクセサリーの世界を知らなかったために驚く人もいます。少数?ですが、効果があるなら興味はあるという人もいます。
新製品ニュースでもレビュー記事でもないので、突如としてAVウォッチに掲載され、私もこれまで知らなかったので、どういう経緯なのか気になります。メーカーのHPを見ると、2018年には発売されていて、2018年にはかの「オーディオアクセサリー銘機賞2019」で受賞するという実績もあります。
取り扱い点も有名なオーディオ店が並び、なんと?アマゾンでも販売ページがあります。
実際、このような(とひとくくりにできるものでもないでしょうが)オーディオアクセサリーは幅広いジャンルで、幅広い価格で販売されており、なかには価格や内容の面からいぶかしく思われる製品もあります。
本製品についてはどうも、オーディオアクセサリーがメインの会社ではないようなので、あるいは売れなくても構わないという姿勢なのかもしれませんが、オーディオアクセサリーメインでずっと会社を維持しているメーカーはたいしたものだと思います。
この会社は、無垢ステンレスの高度な加工技術があるのはたしかなようなので、より一般的で、効果を物理的に説明しやすい、コンポやスピーカー用のインシュレーターに挑戦すれば、よいものができそうな気がするのですが。個人的な印象ですが、HPを読んだ限りでは、メーカーの開発者の方は至って真剣なように感じます。