ハイレゾ伝送が可能なBluetoothコーデックのひとつ「LDAC」。LDACコーデックに対応した完全ワイヤレスイヤホンはまだまだ少ないですが、対応モデルを個別に紹介し、それぞれのおすすめポイントなども解説します。
ハイレゾ伝送が可能なBluetoothコーデックのひとつ「LDAC」。これまではLDAC受信に対応したイヤホンは、左右間にコードのあるタイプばかりでした。完全ワイヤレスイヤホンにおいては、さまざまな技術的問題からその対応は遅れ、国内ではじめて発売されたLDAC対応完全ワイヤレスイヤホンはソニーの「WF-1000XM4」(2021年6月25日)となりました。
その後、アンカーのアクティブノイズキャンセリング対応完全ワイヤレスイヤホン「Soundcore Liberty Air 2 Pro」がなんとアップデートによりLDACに対応(2011年9月10日ごろ)。これが国内でのLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン第2号機になるようです。
LDACはSONYが開発した高音質なBluetoothオーディオコーデック。従来のSBC、AAC、aptXといった一般的なコーデックが16bit/44.1kHz・48kHzというCD相当の品位であるのに対して、LDACは最大24bit/96kHzという、いわゆるハイレゾ相当の品位を実現しているのが最大の特徴です。一般的なコーデックの3倍程度という最大990kbpsの伝送量によって実現しています。
可聴帯域(20kHz)を超える超高音(40kHz程度まで)と、これも可聴範囲を超えるダイナミックレンジ(音量の大小差)144dB(理論値)を表現可能であり、CD相当の20kHzまで、ダイナミックレンジ96dBというこれまでのオーディオスペックを大きく超えています。
超高音については人間の耳では聴き取れないという批判や反論もありますが、音量の大小差については人間は120dB程度(20bit相当)以上の能力はあるとされているので、CDを超えるダイナミックレンジによる表現力の違い(主に細かな音の微妙な表現力)の意味はあると思います。個人的には録音のよいクラシック音源ではCD相当と24bit/96kHzハイレゾではやはり細やかな描写力に差があると感じています。
なお、LDACは24bit/96kHzのPCM信号をそのまま伝送しているのではなく、伝送量の関係から数分の一(3-4分の一程度)に圧縮しています。これはもとのPCM信号を完全には再現できないロッシー圧縮となります。ただ、聴感上はリニアPCM信号を5分の一程度までロッシー圧縮しても、人間の耳に元音源との違いは感知できないとされています。これについても異論もありますが、ここではLDACがロスレスハイレゾ音源と聴感上の違いがあるのかについて論じることは致しません。
以下では、LDAC対応完全ワイヤレスイヤホンについて、上から発売順に並べ、それぞれの簡単な内容紹介と、それぞれの特徴やおすすめポイントを解説します。
言わずと知れたLDACのオリジネーターによるLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン第1号機。2021年6月25日発売。発売当初の税込み実売価格は33,000円程度。
アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能搭載の完全ワイヤレスイヤホン定番機「WF-1000XM3」の後継機であり、高性能なANC性能も売り。
また、AI技術を活用した高音質技術「DSEE Extreme」により、非ハイレゾ音源もハイレゾ相当にアップコンバートして再生できるのも特徴。専用アプリにより、さまざまなイコライザーやエフェクトをかけて楽しめるのも特徴です。
対応コーデックはSBC、AAC、LDAC。イヤホン部の使用ユニットはダイナミック型で6mm口径。IPX4防水に対応。
電池持続時間は、イヤホン単体で最大8時間(NCオン)/12時間(NCオフ)、ケース併用時で最大24時間(NCオン)/36時間(NCオフ)。
ハイレゾ音源がなくとも、LDACコーデックを使わなくても高音質で音楽が聴ける完全ワイヤレスイヤホンとしても高い評価を得ています。ANC機能の優秀さも含めて、幅広い用途に対応した万能型のモデルと言えるでしょう。価格が高いのがネックでしょうか。
なんと、発売後のアップデートによりLDAC対応化を果たした完全ワイヤレスイヤホン。2021年9月10日ごろにLDACに対応。これにより、本機が日本国内で一般発売されているLDAC対応完全ワイヤレスイヤホンの第2号機となりました。
価格は12,980円とWF-1000XM4の半額以下。これでいて、独自のウルトラノイズキャンセリングを採用した強力なANC機能など、コスパ面でもハイパフォーマンスな一台。もともとアンカーはコスパ面で優秀なことを武器に売り上げと認知度を急激に伸ばしてきただけに、面目躍如といったところでしょう。
10層のナノレイヤーで構築されたPureNoteドライバーを搭載するなど、イヤホン部分の高音質化にも注力。
アプリ上で音の聴き取りやすさを測定して、自分だけのプロファイルを自動作成でき、イコライザーのカスタマイズも可能な「HearID 2.0」も特筆できる特徴。
Bluetooth 5.0準拠で、LDAC以外のコーデックはSBCとAACをサポート。音楽再生時間は通常時で最大7時間。ノイズキャンセリングを有効にすると最大6時間、外音取り込みモード時は最大6.5時間。充電ケースとの併用時は、それぞれ最大26時間、21時間、23時間。別途充電器を用意すれば、充電器をワイヤレスで充電できます。
本国(中国)ではすでに発売されているLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン。カーボンナノチューブ振動版のダイナミックドライバーか、デュアルBAドライバーの2ラインナップが用意。実質、同じモデル名を名乗る別々の2モデルが同時発売。
HiByはほかにもアップデートでのLDAC対応を謳う「WH3」というモデルを日本発売しましたが、いろいろと事情があるようで、LDAC対応が未定になってしまいました。
「WH2」も日本で発売されるのかもわからない状況です。
11月14日追記:国内発売が決定しました。11月26日に発売。税込みの実売価格は19,800円程度とのこと。予定どおりドライバー違いの2モデル発売。
コーデックはLDACのほか、UAT、AAC、SBCをサポート。片耳だけの利用もでき、タッチ操作にも対応。イヤホンはIPX4の防滴仕様。バッテリー持続時間は単体で6時間。充電ケースと組み合わせると最大30時間。
本機は国内ではMakuakeにてクラウドファインディングされたため、一般的な販路には乗っていませんが、内容・価格ともに大いに注目したい一台。
13,999円と、こちらもWF-1000XM4よりもリーズナブルながら、ユニットは複合振動板を採用した10mmのダイナミックドライバーと、Knowles製バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを組み合わせたハイブリッド構成、さらに、DSPクロスオーバー&バイアンプ方式を採用するなど非常に音質面で凝った作り。
対応コーデックは、SBC/AAC/LHDCで、後日ファームアップデートによりLDACに対応予定。LDAC同等の24bit/96kHz伝送に対応するLHDC対応機なのも注目点。
最大-42dBのノイズ低減性能を実現という高性能なANC機能も搭載。最大で80ミリ秒(0.08秒)の低遅延伝送も可能なゲームモードも搭載するなど多機能です。
専用アプリ「Edifier Connect」も用意。ANCの動作モードやゲームモードON/OFF、左右イヤホンのタッチ操作、タッチ感度のカスタマイズなどが可能。イコライザー機能も搭載。
イヤホン単体で最大6時間、充電ケース併用で最大24時間の再生が可能。それぞれ、ANCオン時は最大5時間、充電ケース併用で最大20時間となります。イヤホン本体の重量は片側5.5g、充電ケースは46g。イヤホン本体はIP54準拠の防水防塵性能。
13,999円で一般販売されるのであれば、価格と音質面(音質調節の自由度も含めて)で、最もおすすめできそうな印象です。
国内大手メーカーからソニーに続いて出たLDAC対応完全ワイヤレスイヤホンはテクニクス(パナソニック)でした。10月15日に税込みの実売価格29,000円前後で発売。
8mmのバイオセルロース振動板を採用し、ワイドレンジで深みと力強さを兼ね備えたリアルな音を志向しています。
業界最高クラスのANC性能を実現していると謳っていることに加え、完全ワイヤレスイヤホンではかなり珍しいマルチポイント接続に対応しているのが大きな特徴。現状ではLDACとマルチポイントを1台で両方備えている完全ワイヤレスイヤホンは本機だけです(LDACとマルチポイントは同時使用はできないことに留意してください)。ここにこだわるなら本機がおすすめと言えるでしょう。
ANC ON時のバッテリーの持続時間は、イヤホン単体で約7時間、充電ケースを含めると24時間。IPX4相当の防滴仕様。
CD規格のオリジネーターであり、低価格イヤホン・SHE9700シリーズで一時代を築いたフィリップス(オランダ)からもLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン・T1が海外発表。
海外での価格、発売日もまだ未定です。
Bluetooth 5.2で、コーデックはLDACのほか、AAC/SBCに対応。ANC機能も搭載。BA+10mm径ダイナミック型のハイブリッド構成と、音質重視のフィリップスらしい意欲的なイヤホン部。
ANCレベルやEQ調整など各設定が行える「Philips Headphones」アプリも用意。
Noise Canceling Pro+、外音取り込み、トリプルマイクと専用アルゴリズムによる高品位な通話など、ヘッドセットとしての機能も充実。本機もマルチポイントに対応しているのも特筆点。Googleアシスタントにも対応。
イヤホン単体での再生時間はANCオン時の最大で9時間。最大27時間再生が可能でワイヤレス充電対応のバッテリーケースが付属。
フィリップスはゼンハイザーと並んで、クラシック音楽をはじめとするアコースティック音楽の再現性の高さに定評があります。本機でも同様に期待されます。
本機については価格に関係なく大いに注目。日本で発売されるのかも不明ですが、期待したいところです。
追記:2022年3月25日に国内発売されました。オープン価格で税込みの実売価格は3万円程度です。
2021年10月7日に突如発売されたLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン。価格は13,980円。基本的に従来モデルの「Soundcore Liberty 2 Pro」(第1世代モデルに相当)にLDAC対応機能を追加しただけのように見えますが、aptXには非対応になっています。SoCをクアルコム製からLDAC対応可能な別メーカー製に変えたことが推測されます。
そのほかの機能や仕様は「Soundcore Liberty 2 Pro」と同様。
Bluetoothのバージョンは5.0。コーデックはSBC、AACにも対応。
バランスドアーマチュアドライバーとダイナミックドライバーを同軸上に配置した、独自の同軸音響構造(A.C.A.A)を採用したハイブリッド型。外音取り込み機能、15分間の充電で約3時間使用できる短時間充電機能も搭載。イヤホン本体は、IPX4相当の防水性能を装備。
再生可能時間はイヤホン本体で最大7時間、充電ケース併用時で最大26時間。重量は約70g(充電ケース含む)。
Ankerブランド史上最高音質を謳う完全ワイヤレスイヤホンとして2021年11月4日に発売。価格は19,800円。
上記の「Soundcore Liberty 2 Pro (第2世代モデル)」の上位に当たり、「Liberty 2 Pro」でも搭載していた独自のウルトラノイズキャンセリング(アクティブノイズキャンセリング機能)を2.0にバージョンアップして搭載。新たにSoundcoreアプリ上での⼿動切り替えの必要がなく、外部環境を認識して⾃動で切り替わる仕様に進化。より⾼い利便性と⾳楽鑑賞に集中できる没⼊感を追求したとしています。
イヤホン部分についても「Liberty 2 Pro (第2世代モデル)」でD型とBA型を同様に同軸配置するハイブリッド構造「A.C.A.A」を採用していたものを2.0に進化させています。専用アプリ「Soundcoreアプリ」で使える機能も拡充。マルチポイントにも新たに対応。
再生可能時間はイヤホン本体で最大6時間、充電ケース併用時で最大24時間。イヤホンは従来同様にIPX4相当の防水対応。重量は充電ケース込みで約59g。
高音質ではあるようですが、Ankerにしては高いのでは?というイメージについては判断が分かれそうです。
ハイコスパなイヤホンで一時はかなりイヤホン愛好家の間では評価の高かった、1MOREからもついにLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン「1MORE EVO」が登場。2022年5月10日に税込み価格は19,990円で発売。
最大42dBの騒音低減性能を実現したアクティブノイズキャンセリング機能や、グラミー賞を4度獲得したサウンドエンジニアであるLuca Bignardi氏がチューニングを担当など、高音質イヤホンに定評のあるブランドらしい内容。
ドライバー構成は1BA+1DDハイブリッド構成により、高域再生は40kHzをクリア。Hi-Res Audio Wireless認定も取得しています。
EDFIER の 「NeoBuds Pro」に内容が似ており(ハイブリッド構成でBluetoothチップのメーカーが同じBestechnic)、音質的にも似ているようです。
ソニーからもLDAC対応モデルの新作「LinkBuds S WF-LS900N」が登場。2022年6月3日に税込み実売約2.6万円で発売。ドーナツ型のオープン型デザインで度肝を抜いたLinkBuds WF-L900の上位モデル。こんどは打って変わって見た目はWF-1000XM4に似た形状の密閉型。
LDACやANC機能を搭載したハイスペックモデルとなっています。本機の特徴は、ソニーの完全ワイヤレスイヤホンとしてははじめて、Bluetoothの新規格・LE Audioに対応していること。
LE Audioは現行のBluetoothよりも圧縮時の音質の向上、省電力化、低遅延など多くのメリットがあるとされており、今年これから発売されるBluetoothイヤホン・ヘッドホン機器での採用の拡大が期待される規格です。
2022年はLDACとLE Audioの両方に対応した完全ワイヤレスイヤホンがポイントになるのかもしれません。
ファーウェイからLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン「FreeBuds Pro 2」が2022年7月28日に税込み実売価格約2.7万円で発売。
平面振動板ドライバーを採用したハイブリッド構成のアクティブノイズキャンセリング対応モデルと、この価格とは思えない凝った内容。振動板素材は平面振動板が金属・アルミ系、ダイナミック型はポリマー系。
ピアノの鍵盤をイメージしたというデザインも特徴的。タッチコントロールに対応し、長押しやスワイプ、ピンチなどで操作します。
AnkerのLDAC対応完全ワイヤレスイヤホンの新作「Soundcore Space A40」。2022年9月21日に12,990円で発売。
Soundcoreブランドのアクティブノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホンとして、史上最小サイズが売り。小さいうえに片耳約4.9gの軽量設計。Anker独自技術の「ウルトラノイズキャンセリング 2.0」を搭載。
コンパクトながら、イヤホン本体は満充電で最大10時間、充電ケースを合わせると最大50時間の連続再生が可能。
Soundcoreアプリでのカスタマイズに対応。ユーザー個人の聞こえを測定して音を聞きやすく調整する「HearID」も利用可能。
AnkerのLDAC対応完全ワイヤレスイヤホン「Soundcore Liberty 4」。2022年10月27日に14,990円で発売。「シリーズ最高の音質」、「3Dオーディオ」、「Anker独自のウルトラノイズキャンセリング2.0」、「ヘルスモニタリング」、「快適なつけ心地」を備え、“Anker史上最高傑作”を謳った完全ワイヤレスイヤホン。
2つのダイナミックドライバーを1つのモジュールに統合して、同軸上に配置した独自の音響構造「A.C.A.A(同軸音響構造)」を最新のバージョン3.0で搭載。
アクティブノイズキャンセリングの強度を自動で調整可能な、独自技術「ウルトラノイズキャンセリング2.0」を搭載。
Ankerの完全ワイヤレスイヤホンで標準的に使える「Soundcoreアプリ」も機能拡充。心拍モニタリング、ストレスチェック、姿勢リマインダー、ワークアウト機能等を確認できるヘルスモニタリング機能を新搭載。
イヤホン単体での再生可能時間は、標準モードが最大9時間、NC動作時が最大7時間、LDAC使用時が最大5.5時間。なるほど、発売時点でAnker史上最高のLDAC対応完全ワイヤレスイヤホンと言えるだけの内容は備えていそうです。